魔導忍者はゴブリンの集落を壊滅させる 3
かけがえのない家族の力を借りて、魔導忍法:秘薬練成の術を成功させ、超回復の秘薬を手に入れることが出来た雷蔵
その秘薬を使って、四肢を失った少女を救うことに成功する!
肉壁にするために磔にされていた者たち10名の命も救った
だが救えなかった命もあったのだ・・・
★冒険者生活3日目(午後)★
繁殖小屋と呼ばれた部屋に再び戻ってきた雷蔵
「今の俺に、お前は救えない」
「俺にできることはこのくらいだ」
「おくりびとの術」
魔導忍法:おくりびとの術
おくりびと:死んだ者の体を特殊な技術をもって、生前と変わらぬ美しい姿のまま、あの世へと送り出す者をそう呼ぶのだそうだ
実体分身の術を応用して、死者の体を補完する
彼女の為だけに生み出された術
ゴブリンに食い荒らされ、醜い姿に堕とされた彼女を生前の姿に戻す
その姿は本当に美しかった
その体を、毛布でくるみ、助けた者たちの元へと戻る
「彼女は救えなかった・・・すなまい」
「いや、あんたはトニエッタを救ってくれた」
「彼女はこんなに安らかに眠っているじゃないか」
仲間の死に涙を流しながら男はそう言ってくれた
気が付けば、あたりは暗くなっていた
「暗くなってから森を移動するのは危険だな」
「今日はここで野宿になるがいいか?」
血の一滴も残っていないゴブリンの集落
その中央にある開けた場所に新たに結界を張る
「俺は街に戻って救助隊を送ってもらうように要請してくる」
「それまで食事をして待っていてくれ」
せめて温かい料理をと、賢者の塔から携帯の調理器具と食材を送ってもらう
「この中に調理が出来る者はいるか?」
「僕は料理には、少し自信があります」
1人の青年が名乗りを上げた
「では、この食材で料理を作ってみんなで食べてくれ」
「この結界の中に、このあたりにいる魔物では入ってこれないだろうが」
「念のために彼女を残していく」
そう言って、雷蔵は魔導外骨格を解除する
「イブ こいつらを守ってやってくれないか?」
「了解いたしました」
「マスターが戻られるまで、何人たりともここに近づけさせません!」
「え!黒い戦士の正体って首トンだったのか!」
「脱いだ鎧がしゃべっただとぉ!?」
中身の正体やら、外見がしゃべったやらで騒然となる
まぁ、それは仕方のないことですな(納得)
「まぁ、いろいろ言いたいことがあるだろうが、出来れば秘密にしておいてくれると助かる」
「ああ!もちろんだ」
「命の恩人に、恩を仇で返す様な奴は、レスラトガの冒険者にはいねぇよ!」
「そうだな」
四肢の欠損から回復した女:ジスレアは、まだ目が覚めていない
秘薬を使ったとは言え、瀕死の重傷からの回復に、よほど体力を消耗したのだろう
雷蔵は彼女に命精活性の術をかける
目は覚まさないが、また少し顔に赤みが増したようだ
それを見て安心したのか、雷蔵は目にもとまらぬ速さで街へと駆け出した
見守るのは、口をあんぐりと開けた10人の姿だった
「と言う訳で、ゴブリンの集落は壊滅しといた、要救護者が11名と1名の死者がいる」
「救助隊を編成して送ってくれないか、集落跡までは一定間隔で印を残してある」
「いや、軽く壊滅しときましたとか言われても困るんだがなぁ」
顔なじみの門番は、困惑した様子でそう言ったが、99個のゴブリンの右耳を並べられては、否定しようがなかった
「大至急、救助隊を編成するが、さすがに夜の魔境の森を進むのは危険だ」
「救助隊は明日出発することになる」
「食料や、毛布と言った野宿の準備もしてあるから問題ない」
「おいおい、そりゃ至れり尽くせりだなぁ」
「後、申し訳ないが、鉄壁と白い魔獣に、状況を説明しておいてもらえないか?」
「全員かなりの重症だったから、俺はすぐに集落跡に戻らないといけないからな」
「今からか?大丈夫って今更か?」
と言って門番は笑いながら
「分かった、二人には俺から状況を説明しておく」
そうして、二人は何時ものサムズアップを交わして別れる
「あ!そういえばあいつらの勝負ってどうなったんだ?」
「引き分けだったらしい」
「ふうん」
聞いておいて、その生返事はなんだ!と突っ込みたくなりますな・・・
「と言う訳で戻ってきたが、イブ 何か問題はあったか?」
「ジャイアントボアが接近してきましたので倒しておきました」
「皆さんの食事の足しになって何よりです」
みんな嬉しそうに、モグモグしている
お肉の追加で、大変満足されたようでなによりです(笑)
「余った分は、賢者の塔に送っております」
ここにもできる女(?)いましたっ!(゜д゜)!
「今夜は、ジャイアントボアのフルコースですよぉ!」
と言う幻聴が聞こえてきそうです(笑)
「そうか、今日はイブに世話になりっぱなしだな」
「いえ、マスターのお役に立つのが私の喜びです」
「この借りは、必ず返すから、何かしてほしい事でも考えておいてくれ」
「・・・そのお言葉だけで感無量です」
イブさんの忠誠心がとんでもないことになってます (;'∀')
「ジスレアの具合はどうだ?」
「相変わらず眠ったままだ・・・」
「そうか」
念のため定期的に、命精活性の術をかけておくことにした
食事が終わり、後かたずけをみんなでして、寝床の準備をした
と言っても毛布でくるまる程度だが
「みんな病み上がりだ、見張りは俺とイブに任せて寝てくれ」
「いや、命を助けてもらって、見張りまで任せちまったら申し訳がたたねぇぜ」
「困ったときは、お互いさまってやつだ」
「もし、俺が困ったときは、遠慮なく頼らせてもらう」
「それでも、ダメだって言うなら、首トンで無理やり寝てもらうからな」
雷蔵がいたずらっ子のように笑う、無邪気な子供のように
「そう言われちゃあ、どうしようもねぇな」
そう言って、みんなして笑った
『私は、マスターにお仕えできて本当に幸せです』
雷蔵の滅多に見せない笑顔を見ながら、そう思うイブさんなのでした
★冒険者生活4日目(午前)★
翌朝は、見張りの時に近づいてきた魔物が朝食となった
「お肉ばかりでは栄養がかたよってしまいますよぉ?」
そう言って26代目が、賢者の塔農場の野菜各種を送ってくれた
グルメだった先代管理人が作ったと言うドレッシングも添えて
「この借りは必ず返す!」
って言ってますけど借りがどんどん増えてるような気がしますが・・・
各種野菜&特性ドレッシングを料理自慢の青年に渡すと
「こんなにみずみずしい野菜初めて見ました!」
「このドレッシングレシピを教えて下さい!」
と、グイグイ迫ってこられたので、ついつい
「ちょっと待っくれ聞いてみる」
と言ってしまった
すでに用紙してあったかのように速攻で、惜しげもなく様々なドレッシングのレシピが書かれた羊皮紙が送られてきたので渡してやった
26代目に、また借りが出来てしまった!(゜Д゜;)
「僕冒険者を引退したら食堂を開こうと思っていたんですが、本当に現実にできそうです!」
青年は目を輝かせながらサラダを作っていた
みんなそれをペロリと平らげた
つい今しがた、重傷を負って死にかけていたなど信じられない食べっぷりでした
元気になって何よりです (^-^)
この料理好きの青年が冒険者を引退後に開いた食堂が、レスラトガで一二を争う有名店になるのだが、それはまだまだ先のお話
朝食を済ませ、ジスレアに命精活性の術をかけていると、救助隊が到着したのでした