魔導忍者は二つ名で呼ばれるようになる
ベテラン冒険者たちに歓迎され
『決戦兵器』に、有能な『人工精霊』まで手に入れた
順風満帆なはずだった冒険者生活に恐ろしい罠が待ち構えていた!(゜д゜)!
26代目への定時連絡を終え、眠りにつく
ホムンクルスの体は睡眠をとらなくても数日の活動が可能だが、
「常に万全な体調を維持するのが冒険者の心得です」
と、イブに諭されたためだ
誕生してから3日目とは思えない聡明さだ
★冒険者生活2日目(午前)★
「マスター 起床のお時間となりました」
さすが、敏腕人工精霊イブ、目覚ましいの役割もそつなくこなす
「まずは朝食をお取りください」
食生活の管理も抜かりは無い!
一回の食堂に向かい、銅貨20枚を払って、朝食を注文する
パンに、野菜を煮込んだスープにサラダ
シンプルなメニューだが、美味い
イェニーナさんグッジョブ!である
宿を出て、依頼をこなすために門へと向かう
依頼内容は、薬草の採取にゴブリン討伐だ
今回の採取予定は、ヴンデと呼ばれる回復ポーションの原料となる薬草で、魔境の森の外周部で見つかるため、経験の浅い冒険者でもこなせる依頼である
ゴブリンの生息地とも重なるためこの二つの依頼を同時に受けたわけである
門につくと、昨日と同じ兵士が門番を務めていた
兵士は、笑顔で話しかけてくる
「無事に冒険者になれたようだな」
「お陰様で、助かった」
冒険者カードを見せながら礼を言う
「早速、依頼を受けたのか?」
「薬草採取とゴブリン討伐だ」
「比較的安全な依頼だが、魔境の森では油断は禁物だぞ!気を付けてな!」
「ああ、行ってくる」
ナイスガイな兵士に見送られ、気分良く門を通って魔境の森外周部へと向かう
ここでも、万能人工精霊イブの威力が発揮される!
「この先1キロの地点にヴンデが群生しています」
「すごいな、なぜわかる?」
「精霊が教えてくれるのです」
「そんなに簡単に教えてくれるのものなのか?」
「どうもマスターの周りの精霊は、機嫌がいいので、すぐに教えてくれますね」
雷蔵、精霊にモテるらしい
本人には認識できていないので、自覚は全くないようだが
「そうなのか」
「はい!」
イブ・ナビゲーションに案内され、現地に到着すると、本当にヴンデが群生していた
「必要なのは6株だったな」
雷蔵は6株だけ採取して、採取用に購入した袋に入れる
全て採取しないのは、後日、同じ依頼をこなせるからだ
冒険者のランクアップの条件は、依頼の達成によるポイントを一定数稼ぐことだ
ある程度のランクになると昇格試験を受けなければならないが、低ランクの現在は、数をこなせば昇格できるのだ
雷蔵はCランクを目指している、理由は、ダンジョンに入るには、Cランク以上の冒険者でないといけない言う決まりがあるからだ
効率よく『存在進化』するには、自分の強さに対して適度な強さを持った魔物の存在力を吸収することだと判明している
定期的に魔物が生まれるダンジョンは理想的な狩場なのだ
「次はゴブリンの討伐だな、5体討伐か」
「現在10体補足して居ります」
「・・・」
イブさん優秀すぎぃ! (゜Д゜;)
と言う訳で、ゴブリン5体の討伐も一瞬で完了した、討伐部位の右耳を別に用意した袋に詰める
存在力の吸収も行ってみたが、やはりゴブリン5匹程度では『存在進化』はしなかった
死体は、26代目がなにやら再利用できるから送ってくれと言っていたので、『収納』しておいた
一般的な『収納』とは、空間魔法の一種で、亜空間にモノを出し入れ出来る魔法で、使い手が少なく、そのため使えれば、手荷物が大幅に減らせるため、パーティーメンバーとして非常に重宝される
雷蔵が使う『収納』は一般的なものとは異なり『魔導骨格』の機能の一つである
収納先の亜空間は、賢者の塔と共有されており、雷蔵が収納したものを、賢者の塔側で受け取ることも、逆に賢者側で収納したものを、雷蔵が受け取ることも出来ると言う、超便利機能なのである!
うんちくはこの辺にして、イブのお陰で依頼を昼前には達成してしまい、町へと戻ることが出来た
あまりに帰還が早いので、門番が驚いた表情で、訪ねてきたほどだ
「おいおい、まさかもう依頼を完了した来たのか?」
「それとも、何か問題か?」
「いや、たまたまついてたみたいで、薬草の群生地にすぐにたどり着いて、そこで必要数が手に入った」
「その道中でゴブリンに出会って、これまたすぐに必要数討伐できたってわけだ」
「ビギナーズラックってやつか・・・」
「ゴブリンにそんなに頻繁に出くわすのはちょっと気になるな」
「報告を上げておくか」
『くっ、言い訳が安易すぎたか・・・』
凄腕忍者は嘘が下手だった(涙)
「まぁ、何はともあれ無事で何より」
「ああ、じゃあギルドに報告してくる」
「今日はいい酒が飲めそうだな」
いい笑顔でサムズアップしてくる
雷蔵もいい笑顔でサムズアップで返す
冒険者ギルドに足を踏み入れると、酒場の方から声がかかる
「おう!首トン!昨日はお前のお陰で酒がたらふく飲めたぜありがとうな!」
「あら、首トンじゃない、わたしにも首トンしてくれない?」
「首トンってなんだ?」
雷蔵が尋ねると
「ほら、昨日『ヴィルクスとゆかいな仲間たち』にやってたじゃない」
どうやら昨日の3人組のパーティー名は、『ヴィルクスとゆかいな仲間たち』らしい・・・
首トンとは、忍術:絶気の事を言っているらしく、3人が揃って
「「「首トンされてから、体の調子がいいんだよ!」」」と騒いだらしい
ちなみに、ヴィルクスは肩こりが、ヨルクとヨルンは腰痛が治ったらしい
兄弟そろって腰痛持ち・・・まぁ冒険者にとっては深刻な問題かもしれない
それから、雷蔵は、首トンのライゾーと呼ばれるようになる
前世では、『迅雷の雷蔵』と呼ばれた凄腕忍者が、首トンのライゾーって・・・・
なんとか二つ名を返上することは出来ないものかと、調子が良くなった原因は、別の技効果だと説明したところ
結構な人数が名乗りを上げてきたので、これは面倒だとばかりに
「1回につき銀貨1枚だ!」と言ってみたところ、殆どがあきらめて席に戻っていった
本当か怪しい情報にかけるには銀貨1枚は高すぎたようだ
銀貨1枚でもいいと、藁にもすがる思いだったのか
ひどい腰痛持ちだと言う冒険者の男が頼んできたので、銀貨を受け取り、命精活性の術をかける
あくまで自然回復力を高める術だが、有効だったようだ
「俺、これ以上腰痛が悪化したら冒険者を引退しようと思ってたんだよ」
「これで、またがんばれるよ!ありがとうな首トン!」
男は、スキップしながら去っていった
それを見て、噂は本当だった!と、他の冒険者が5人集まってきた、全員が腰痛持ちだった
冒険者稼業、腰痛がかなり深刻な問題のようだ!
銀貨を受け取り、一人ずつ術をかけていく
「「「「「ありがとうな首トン!」」」」」
嬉しそうに、スキップしながら去っていく冒険者たち
それを呆然と見送る雷蔵
一度ついた二つ名は、生半可なことでは、払しょく出来ないようだ
二つ名と言うか、もはや本名のように呼ばれているのは、気のせいだろうか・・・
しかし、一人数分でわずか30分足らずで銀貨6枚の利益そして原価はタダ!
凄腕忍者は、この世界で凄腕整体師としても、生きていけそうだ
複雑な、気持ちのまま、カウンターへと向かう、もちろんイェニーナの窓口だ
「おはようございます ライゾーさん 本日はどのようなご用件でしょうか?」
朝の陽ざしのような、素敵な笑顔に落ち込んだ気持ちが癒されていく
「依頼が完了したので清算を頼む」
「薬草採取とゴブリン討伐でしたね」
採取した薬草と、ゴブリンの討伐部位を確認してもらい
「依頼の達成を確認いたしました」
「薬草採取が、銀貨1枚、ゴブリン討伐が銀貨2枚合計で銀貨3枚となります」
この二つの依頼はほぼ常時出ているらしいので、再度受注してギルドを出る
こうして、冒険者『首トンのライゾー』の一日、いや半日が終わったのだった