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 一体これはどういうことなのだろう。

 哲司は僕のせいで、西野川に対する制裁を思い出してしまったのだろうか。

 さらにそれがトリガーとなって、僕たちの三人のバランスも崩れ始めてしまった。

 折角、明るさを取り戻していた遥から笑顔が消え、哲司は僕に対してよそよそしくなる。

 そしてその僕は、哲司に対して憤りを感じて、口をきかないでいた。

 遥を苦しめても、西野川にはなんの因果応報にもなってない。

 これが哲司の企みだったのだろうか。

 仲良くして油断させ、そしてそこで思いっきり落として西野川の孫に報いを浴びせる。

 僕があの消しゴムを投げたばっかりに、寝た子を起こしてしまったのだろうか。

 西野川の池に石が再び投げられたことで、皆思い出してしまい、遥への風当たりは再び強くなりだした。

 時々女子達からの冷たい視線が遥に向かっている事にも、僕の目から見てもあからさまだった。

 遥に気を遣ってやらなければならないのに、僕と哲司は歯車がかみ合わず、とことん仲たがいしてしまう。

 最悪の状況だった。

 それから、連鎖反応したように、遥が学校を休んでしまった。

 石を池に投げられたことで、また自分の祖父がからかわれ、その嘲笑の矛先が遥に向いているのが耐えられなかったのだろう。

 いじめられたトラウマが蘇り、苦しんでいるのかもしれない。

 だったら僕は、遥のためにも石を池に投げた犯人を告発しなくてはならない。

 遥には関係ないこともその犯人に知らしめなければならない。

 普段消極的な僕にとっては一念発起だった。

 僕はその犯人と対決する決心をした。

 全ての授業が終わった放課後、僕は強張った顔で『哲司』と向き合った。

「なあ、哲司、ちょっと話したい事があるんだ、顔かせよ」

「なんだよ、俺は聞きたくねぇーよ。忙しいから今度にしてくれ」

 その話に触れたくないのか、哲司は僕との対峙たいじを拒む。

 さけようとした哲司の腕をつかみ、僕は人気のいない、校舎の裏へと引っ張って行った。

「一体なんなんだよ」

 哲司は僕と目を合せないようにして、落ち着きがなかった。

「とにかく聞いて欲しい。西野川の池に石を投げ込んだ事だよ」

 それを聞いたとたん、哲司ははっとして、俺を不安な目つきでみた。

「お前、まさか」

「ああ、そのまさかだよ。僕、哲司が親友だったから、この話ができなかったんだ。でもやっと決心がついた。僕は正直に遥に言うつもりだ」

「待て、早まるな。こんなに大事になってるんだ。これについてはまだ他になんとかする方法があるかもしれないだろ」

「何の方法があるっていうんだよ。このまま正直に言わないのは、ずるいことだ。それは哲司が一番わかってることじゃないか」

「もちろんだ。俺だって、いけない事とはわかっていたけど、賛太が俺の親友だから、正直に言えなかった」

「もう、いいじゃないか。お互い見て見ぬふりしたのが悪かったんだ。とにかく謝りに行こう。なぜこんなことをしたのか。僕たちは西野川と話をするべきなんだ」

 僕は困惑している哲司の手を引っ張り、自首を施した。

「ちょっと、待て、謝るのは、賛太であって、俺じゃないだろ」

「はぁ? なんで僕なんだよ。石を投げたのは哲司だろ」

「えっ? 俺? まさか、そんな事してないよ。賛太が石を投げたんだろ」

「僕が? そんなバカな」

 僕たちはお互いを指差して、一体何の話をしているのかわからなくなっていた。

 これって、哲司が犯人じゃないってこと?

 そして哲司は僕が犯人だと思ってたってこと?

 僕たちは、状況を把握するまで、一から話す必要があった。

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