皆が残酷な吸血鬼と恐れた貴婦人
ここは、中世のとある国。
その小さな国の小さな村に、小さな少女が住んでいた。
名は、アーレ・リザバレル。
歳は16になったばかりだ。
「あら?」
その小さな村に馬車が走ってきた。
それも、初めて見るような豪華な馬車だ。
馬も白馬で、馬とは思えないくらい、美しい顔をしている。
「アレス!止めろ!!」
その馬車がアーレの目の前で止まった。
「美しい…。小さながら、凛とした顔をしている…。」
と、馬車から降りて、アーレに近づいてきた。
どうやら、「止めろ」と叫んだ人のようだ。
その男は、見たことのない、豪華な服装をしていて、顔はイケメンだった。
まるで、白馬の王子のような外見。
それは、乙女にとって、どこか羨ましい。
夢のような、人物。
アーレは自分の頬を引っ張った。
「い、痛い…。」
当然である。
なぜなら、夢ではないのだから。
「ハハハ。変な子だ。夢ではないよ。
「突然で悪いが、私と結婚してくれないか?」
と、王子のような男が話しかける。
いくら、見た目が良くても、アーレはもう大人。
この国では、15の歳で大人とされる。
だから、身の危険を感じた。
「あ、そっか。名を名乗らないとな。
「名は、エルサ・リン・ハンサムだ。」
「ハンサム!?って。王族の?」
「ああ。父は国王だ。つまり、私は王子になるのかな?」
アーレはとても驚いた。
本物の白馬の王子様と思ってなかったからだ。
「信じてないのか?なら、紋章を見せよう。
「王族の紋章だ。ほら。」
と、エルサが見せたのは、正しく王族の紋章だった。
この小さな村にも、紋章のレプリカがある。
だから、形は知っていたが、アーレはその形に驚いた。
なぜなら、その紋章は、美しかった。
レプリカの何倍も。
動かすだけで太陽の明かりが反射し輝いた。
「本物…。だよね?」
本物を見たことがなかったアーレは、まだ信じられないようだ。
「本物だよ。アーレ。改めて、言う。結婚しよう…。」
「え?なんで?私の名を?」
アーレはまだ、エルサに自分の名を名乗ってなかった。
「アーレの親にはもう、話はついている。
「喜んでいたよ…。」
「私、聞いてないよ。そんな話。」
「サプライズしたかったからね。黙っとくようにお願いした。」
そして、この2人は結婚した。
と、結婚したのはいいものの。
エルサはあまり、帰ってこなかった。
遊びや不倫とかそういうのではなく、戦争だ。
エルサは王子だが、長男ではない。
三男だ。
つまり、王になることは、滅多なことがない限り、有り得なかった。
そして、王族である、エルサが戦場で戦うことで士気が上がる。
策士でもある、エルサは王に認められ、戦争に参加していた。
数々の功績を上げ、アーレも嬉しかった。
だが、心から寂しかった。
そんな日が続き、数年たった。
ある日のこと。
アーレは自分の若いメイドに髪を切ってもらっていた。
しかし、事件が起きた。
アーレの首をメイドがハサミで傷つけたのだ。
事故なのだが、アーレは激怒した。
優しく、上品で。
元下民とは思えないほど、美しい貴婦人で有名だったのだが。
珍しく、激怒した。
怒り狂うアーレはハサミでメイドに突き刺した。
何度も何度も。
何百回も刺した時、アーレは自我を取り戻した。
だが、遅かった。メイドは死んでいた。
アーレの体は返り血を浴び、赤くなっていた。
「わ、私…。とんでもないことを…。」
アーレは自分の過ちに気づいた。
とりあえず、アーレは落ち着くためにも。
風呂で体を洗うことにした。
洗っている時に、アーレはあることに気づいた。
それは、全くの根拠の無い、勘違いなのだが。
「血で汚れたところが若返っている?」
ということに、気づいたのだ。
そう、アーレこそが残酷な吸血鬼なのだ。
これは、悲劇が起こした惨劇の物語。
まだ、物語は始まったばかりだ。
その話は、また、別の機会に…。
余談ですが、なぜ、連載小説にしなかったのは。
続きを書くか、分からなかったからw
中途半端だったら、迷惑だし。
続きを書くとしたら、タイトルは、
『残酷な吸血鬼の最後』ですかねw