表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムなめんなっ  作者: 月乃 綾
本編Ⅰ:森の蟷螂
9/36

6話

 調査の日程は二週間後に決まった。

 それまでに、この街の最高戦力を結集させるらしい。

 だが、その戦力をもってしても、討伐ランクAを超える相手は確実に倒せるとは言えないという。

 まあ、今回は調査だけだ。

 状況の確認が出来次第さっさと引き上げる予定なので、生き残るだけならなんとかなると思う。


 それで、わたしはと言えば、ユリに魔術を教えてもらっていた。

 オスカーに依頼を受けるのを止められているし、当面の生活資金は受け取っているのでぶっちゃけ暇だったのだ。魔術の練習は、ある程度時間を潰せて、かつ戦力アップを図れる妙案だった。


 が。


(できない……)

「も、もう一回! もう一回頑張ろっ」


 どうやら、わたしには魔術の才能はないようだ。

 エクストラスキルで魔力関係が強化されているのにもかかわらず、初歩の初歩、《火球》すら使えない有様だった。

 わたしの体の色は空色なので属性違いかと思いきや、火どころか水、土、風、光、闇……全ての属性を試しても何一つ使える魔術はなかった。


 ただ、体の内部で流動する力の流れは感じ取れたので、魔力を感じるという魔術を使うための第一歩は踏み出せているはずなのだ。


(ユリ、もう一回教えて〜)

「うん、頑張ろうねっ。えっとね、まずは……」


 もう何度目か、数えるのも嫌になる程聞いた《火球》の説明。


 まずは、体の中にある魔力を球状にして手のひら、あくまで目安なのでない場合は分かりやすければ何処でもいい、に移動させる。


 そうしたら、それを体外に放出する。


 わたしが出来ないのはここである。


 どれだけ強く押し出そうとしても、魔力が体の外に出ていかないのだ。


(むぅう〜)

「ノエル頑張れっ」


 ユリの声援を受けながら必死で力を込める。が、できないものはできないのだった。


(うにゃあ。できないよぉ……)


 ベシャリと潰れ水たまり状になるわたし。むう、残念だ。憧れてたのに、魔術。


「うーん、何がいけないんだろうね? 魔力が外に出ていかないなんて聞いたことないよ」

(やっぱり、スライムは魔術を使えないのかなぁ……)

「そんなことないよ、スライムが火魔術を使ったって話を聞いたことあるから」


 うーん、だとしたら使い方が人間と魔物では違うのかなぁ。魔物には魔物のやり方が……って、魔物は知能がないのがほとんどだから、本能的に使い方を知ってるはず。

 じゃあわたしは使えない?

 でも魔力はあるのになぁ〜。


 ベッドに腰掛けたユリの膝でぽよぽよしながら考える。


 ……あ、そうだ。


(ユリ、魔力を放出せずに使える魔術ってないの?)

「え? あ、少しだけどあったはずだよ。わたしが教えられるのは……そうだなぁ、魔力活性と身体強化くらい?」

(それ教えて〜)


 身体強化か。スキルであったね。確か全然使えなかったヤツだよ。

 まあ、あんまり期待しないでおこっかな。使えるとも限らないし。


「分かったよ! まずは魔力活性からね。これが出来ないと身体強化は使えないから」

(はーい!)


 ユリ先生の講義が始まる。


「魔力活性っていうのは、名前の通り、体内の魔力を活性化させて身体能力を強化する魔術のことだよ」

(へー)

「…………」

(……………………あれ?)

「うん?」

(それだけ?)

「うん」


 ホワッツ?

 いやいや、その方法が知りたいんだけど。


(どうやるの?)

「へ!? あー、うーん……」


 唸りだすユリ。

 これも何となくとか言わないよね……?

 魔術が使えなかったおかげで、今のわたしはちょっとネガティブになっている。

 しばらくすると、パッと表情を明るくして口を開いた。


「えっとね、魔力をぐるぐるーって回してボワン! みたいな感じっ!」

(…………ユリは感覚派なんだねー)

「あれ!? ノエル!?」


 わたしは再びべちゃーっと潰れる。

 ああ、うん、もういいや……。

 わたしはどうやら、徹底的に魔術に向いていないようです……。


「そ、そうだ! ギルドの資料室に行こう? あそこなら、いろんな資料が置いてあるから何か分かるかもしれないよ」

(うにゅー…………………………行く)


 やっぱり魔術って憧れなのだよ、うん。




   ◇◆◇




 冒険者ギルドの二階にある資料室に足をふみ入れる。

 長年放置されて埃まみれになった部屋の絨毯みたいな臭いがする。

 照明は薄暗く、ずっと篭っていたら目が悪くなりそうだ。


 資料室に来ている冒険者は誰もいなかった。唯一、カウンターでやる気のなさそうな女性がうたた寝しているのみである。

 ……こんなんで大丈夫か、冒険者ギルド。


「まずは、そうだね。……スライムについて詳しく調べてみよっか」

(はーい)


 魔物辞典という分厚い本を取り、席に座る。すると、手元にあった小さな宝石が白い光を発した。


(おぉ?)

「発光石だよ。見たことない?」

(初めて見るよ〜。凄いねぇ)


 魔物辞典をパラパラとめくり、スライムの項目を探す。

 そこにはこう書かれていた。




==========


スライム


ゼリー状の魔物。

至る所に生息し、火山、雪原など環境の厳しい地域にはその環境に適応した独自の種が見られる。この事から、単純ゆえに多様な進化の可能性を残した種であると考えられている。

生命力はいずれの種も総じて低く、討伐ランクはEと最低。しかし、稀に現れる鮮やかな体色を持つカラースライムのように魔術を使う種、


==========



(魔術! スライムでも使えるんだ!)

「良かったねっ!」



==========


捕食した相手の姿を模倣する種、


==========



 あ、これわたしだ。



==========


強力な酸を持つ種、


==========



 これもそうだよね。



==========


物理攻撃を吸収する種、


==========



 あれ、これも?



==========


体の形状を変え触手などで攻撃してくる種、

通常では考えられないほど巨大な種、

その反対に小さな種、

地面に染み込む液体のような種、

石のように硬い種など、

実に多種多様な種が確認されている。

通常の無色透明なスライムとは異なり、これらは有色で、上位スライムと呼ばれる。


==========



 ……カラースライム以外の特徴が全て当てはまってるんですけど。

 しかもわたし、有色。空色。


「ノエルは上位スライムなんだね!」

(ボク強い? ユリの役に立てる?)

「もういっぱい助けてもらってるよ!」


 ……さて、続き続き。



==========


現在確認されている上位スライムの色の種類について、

カラースライムは、

火属性の赤、水属性の青、風属性の緑、地属性の茶。

またその他のスライムは個体ごとに色が変わるが、全て乳白色のような白に近い色である。

なお、これは伝承のみではあるが、



原初の魔王アリエルは・・・・・・・・・・


空色の体色を持つ・・・・・・・・スライムだった・・・・・・・とされている。



魔王アリエルの正体については諸説あるため確定情報ではないが、スライムに関する情報としてここに記載しておく。

なお、カラースライムを含め、空色のスライムは一切確認されていないため、これが真実だとすれば特殊進化個体ユニークだったと推測される。


==========



 …………はぇ?

 え、ちょっと待って。


 えぇえ!?

ノエル「ポカーン」

ユリ「……………………(思考停止)」


【消化】

アクティブスキル。【吸収】で体内に取り込んだものを消化する。なお、消化したものにより能力が強化される。また、解析能力もあり、消化したものの情報を得られるため模倣する事が可能になる。スキルも手に入る。


ノエル「…………はっ」

ユリ「……………………(思考停止)」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ