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スライムなめんなっ  作者: 月乃 綾
本編Ⅱ:神殿の少女
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32話

説明回っぽくなってしまいました

 目を開けると、ユリの心配そうな顔があった。

 ……そうか、倒れたんだ、わたし。


「起きた! ……ノエル、大丈夫?」


(うん! 心配かけてごめんね、ユリ)


 体調確認を兼ねて、体をぽよぽよと跳ねさせる。

 ……うん、問題ないみたい。

 そんなわたしの様子に、ユリの口から安堵の息が漏れた。


「良かった……」


 ユリの体から、緊張が抜けるのがわかる。腕からずり落ちそうになり、慌てて体の弾力を強くした。


「あ、ごめん」

(大丈夫だよ~……ひゃぅ)


 わたしの体を抱えなおす。

 そこに、ちょっと冷たい感触。視線を向けると、ミアの手が体に触れていた。


「……大丈夫?」


 道中を思い出してちょっと戦々恐々……だったけれど、その小さな手は、意外にも体の表面をなでるように優しく動いていた。

 その眼の奥には心配そうな光。表情には相変わらず感情が見えないが、どうやら心配してくれているようだ。


「うん。どこか悪いということはなさそうだよ」

「そう、良かった」


 ミアの空気がふっと緩む。

 《鷹の爪》の他の三人も近寄ってきて、ミアとユリに話しかける。どうやら心配はないようだ、というような説明を始めたのを聞きながら、わたしは倒れた原因であろうものを思い浮かべる。


(ステータス)


 意思に従い、宙に現れる青い半透明の板ウィンドウ

 そこには案の定、


祝福ギフト


 の文字がある。

 これまで『スキル』と表示されていた部分に。

 まるで、上書きされたかのように。


(やっぱりか)


 ということは、これが原因か。

 気を失う瞬間に見えた、文字化けしたウィンドウ。

 書き換えられた項目。

 そして、


 増えたスキル……いや。

 祝福ギフト捕食者プレデター】。何なんだろうコレ。


 そう思うも、実は想像がついていたりする。

 一つあるのだ。

 わたし以外の何者にも確認されず、かつ最も強力なわたしの能力が。


 ラーニング能力。


 捕食・・した対象の能力スキルを奪う。

 まさに捕食者の名を冠するにふさわしいチカラ。

 その性能は、どう考えても『スキル』の枠を超えている。


 それこそ……転生の際に与えられた、何者かからの祝福のように。


 何者、というか。

 やっぱり神様なんだろうか、この場合。


 そうだとしたら、ろくな奴じゃないね、その神様は。

 優里いもうとのいない世界など、わたしにとっては何の意味も持たないと知っているはずなのに。


 まあ、ユリに会わせてくれたことだけは感謝するけどね。

 結果論だけれど、おかげでやり直してみよう、なんて思えたわけだし。


 安心するような笑顔を浮かべるご主人様をユリ腕の中から見上げる。いつの間にかリディアが近くにいて、ユリがお礼を言いながら頭を下げていた。相変わらず、心配だけではなさそうな何かを感じさせる視線だ。

 ポールの「そろそろ帰りましょうか」という声を聴きながら、そういえば、と思い出す。


 他の人にはできない、わたしだけの能力。もう一つあったね。

 スキルにも祝福ギフトにも表れない……ステータスウィンドウ。

 これは一体何なんだろうか?




 ◇◆◇




 宿に戻ってきた。

 さすがに、今日は少し疲れた。

 ポールの商売の後に神殿に行き、あの騒ぎだったからね。

 ……まあわたしは気を失っていてあまり覚えていないんだけど。

 リディアとかいう神殿の少女の視線が、何か妙なものを含んでいたことだけは印象に残っている。ああ、あと【祝福ギフト】。


(ユリ~)


「どうしたの?」


(ボクが気絶していた間って、何かあった?)


「あ、えっと……」


 何かを思い出すような表情。


「簡単に言うと、神殿が襲撃される、っていう事件が最近続いているんだって」


(神殿が襲撃?)


 どういうことだろう。

 ぽよんと体を跳ねさせてみる。


「わたしもそんなに詳しくは知らないんだけど……あ、そもそも神殿っていうのは神様の声を聴くために作られた建物なんだよ。そのために、最低一人は巫女か神官って呼ばれる人がいるの。あのリディアさんは巫女ってことになるのかな」


(へぇ~……)


 そういう目的なのか。

 地球とは少し違うね。宗教があるのは変わらないみたいだけど。


「それで、……うーん、どこから話せばいいんだろう。ノエルは神様のお話しとかは知らないよね?」


(うん、まったく)


 信じてもいないしね。


「それだと、そのあたりは私が話すよりもリディアさんに聞きに行った方がいいと思うな。巫女さんってことは絶対詳しいから。明日の護衛が終わってから行こうか」


(うん!)


「じゃあ、襲撃の話だけするね」


 ユリの話をまとめるとこうなる。


 最近、神殿が……正確には神殿に努める巫女あるいは神官が襲撃されるという事件が多発している。

 神殿騎士が警備に配置されているが、それでも防ぎ切れていない。

 最近になって、襲撃される巫女や神官とそうでない人たちとの間にある差がはっきりとしてきた。

 推測されるのは、過激派による穏健派への宣戦布告。

 教義の解釈の違いによる派閥の一方が武力を用いた勢力争いを始めた、というのが真実なのではないかと考えられているらしい。

 で、リディアも穏健派に属しているらしく、襲撃される危険がある……というわけ。


 まあ、非常によくある話ということで。

 単なる権力争いみたい。


(巻き込まないでほしいなあ)


「リディアさん、大丈夫かな……」


 ありゃ。

 まあ、ユリはそういう人だよね。

 だから、わたしも惹かれたわけだし。

 

 ……うん。

 ユリは、ユリらしい選択をすればいい。

 きっとそれが最善だから。

 あとは、


わたし・・・が全力で守る。それで全部解決だよ)


 聞こえない程度に小さく念話こえに出した言葉は、ユリの耳には届かない。

 ただ、わたしの中に、誓いのように刻み込まれた。

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