31話
……ギフト、って何?
リディアの言葉を聞いて真っ先に思ったことである。
いや、そりゃ英語としての意味は分かるよ。giveの名詞形で贈り物。日本人的ではないけれど、神様から与えられたものとして天賦の才能なんて意味もある。けれど、この世界にきてからギフトなんて聞いたことがない。それに、神殿でないと確認できないもの。なんのこっちゃ。
しかし、わたしにとっては初耳の単語だけれど、この世界の住人であるユリとか《鷹の爪》の四人には意味が分かっているようだ。「いいんですか!?」と目を見開いている。
なんだか少し、面白くない。
(ユリ、ギフトって何?)
念話の声がちょっとだけ尖ってしまった。
それを自覚しているため、ちょっとだけ悪いかな、とは感じる。感じるけれど、仕方がない。
「そっか、ノエルは知らないよね……。祝福っていうのは、神様から与えられたとされている才能のことだよ。でも普通は確認できないから、教会にある神託の碑石で確認するんだけど……ね」
ユリはそこまで口にすると、リディアの方に一瞬だけ視線を向ける。視線に気づいたリディアは困ったように笑うとユリと言葉を引き継いだ。
「神託の碑石は、使用のために多量の魔力を必要とします。そのため、司祭によっては多額の寄付を頂いた場合のみ使用する、としている場合の多いようですね」
なるほど。
地獄の沙汰もなんとやら、というのはどこの世界でも変わらないね。
もっとも地球と違い、命がある限り、という但し書きが付くのだけれど。
「でも、魔力を消費するって……大丈夫なんですか?」
そう言ったのは《鷹の爪》の魔術師、ミアだ。心配そうな表情。
リディアは微笑みを浮かべたまま楽し気に言う。
「ええ、問題ありません。このように小さな村では、碑石を使うことなどめったにありませんから。たまにのことであれば、日ごろ貯めた魔力で補うことは十分に可能なのです」
彼らが会話しているのを横で聞きながら、考える。
『祝福』……神から与えられた才能、か。
神様云々は横に置いておくとしても、才能。つまり、特定の方面に強い補正を受けられるという意味では、わたしも恩恵を受けているある存在に酷似しているように感じる。
そう、スキルだ。
物理法則を無視し、外見からは想像もつかぬほどの力を発揮させるスキル。もし、祝福とスキルが同じものであれば、この世界の人たちは自身の祝福を確認できないってこと?
それは……いや。
地球でも、その人がどんな才能を持っているかなんて、やってみなければ分からなかった。だとしたら、これが普通なのか。
少し思考が脇にそれたが、ここでいう祝福とは、わたしの持つスキルと同一のものと考えればよいのだろう。そう納得する。
「祝福は、神によって認められた存在である、という意味でもあります。故に人間とされる種族は全員が祝福を一つは与えられているのです。ここから、異端審問の際にもこの神託の碑石は用いられるのです。……このような堅苦しい説明は必要ありませんね。では早速、祝福の確認を始めましょうか」
悪戯っぽい笑みで説明を打ち切り、腰よりも多少高い位置にある碑石に手を触れた。
「【祝福の確認を】」
リディアの歌うような詠唱とともに、目の前にウィンドウがポップアップする。日ごろ見慣れた、ステータス画面と同じ表記。ただ一つ違うのは、【所持スキル】の欄が【祝福】となっている点である。
(そういえば、最近確認してなかったなあ)
とはいっても、戦った魔物の種類は大した数ではない。レイダードッグ、マンティス、ゴブリンとザカリーその他とこの程度だ。持っているスキル……ギフト? も把握しているものと変わりない。
……はずなのだが。
(あれ?)
一つだけ、見たことのないものが付け加えられていた。
それは【捕食者】というものだ。今までは、こんなスキルは持っていなかったはず。
なんだ、これは?
頭が混乱する。
(ステータス)
無意識のうちにそう唱え、スキルを確認する。
===================
名前:ノエル《従属:ユリ》
種族:スライム(空色)
所持スhふぁえgf替えwfお和えや絵j会えhフォアjかfべmンbmdbンmbぁhfンbkじゃwf化hぁ絵非lfハエウェbgdbンbまbfjbdjfがhdふぁdbンfv壁f歩言えh;アマgなg鍋kf苗hフォエjf;ぁへふぁえjlfン話絵jlが得wf前wぃhfぇんfじゃwbfkねwlfべ;
====
(へっ)
瞬間、目の前に移ったのは、文字化けしたウィンドウだった。
ザザ……とノイズが走り、同時に、鋭い痛みが脳天を貫いた。
(ぁっ?)
「ノエル!?」
遠い距離を隔てたように聞こえるユリの声。薄れゆく意識の中で、わたしの目には、書き換えられるウィンドウが見えていた。
===================
名前:ノエル《従属:ユリ》
種族:スライム(空色)
祝福
【捕食者】【魔力変換:生命】【変換効率上昇Ⅱ】……
===================