【冒頭】空が勇者召喚されていたら
思いつきで書いたifのお話です。
主人公の性格以外は何も共通点ありません。
どうでもいい人は読まなくても構いません。というか、世界観壊したくない人は読まないでください。
視界を埋め尽くした白の光が収まると、わたしは知らない場所にいた。
視覚を奪われ多少ふらついたが、立っているのには問題ない。閉じていた目をゆっくりと開き、周囲の状況を確認する。
ほら、未知の事が起こった時の状況確認って基本でしょ?
なのに、そんなわたしの態度はちょっと違った意味で受け取られたらしい。
「なんと……召喚時の衝撃は相当なものだと聞いているが、こうも平然としているとは。見事なものだな」
「はぁ?」
なんかよく分からないこと言ってる人がいるね。
大理石でできた広い部屋の一段高い場所にある大きな椅子に座っている、大きな態度の髭を生やしたジジイだ。
何者だコイツ?
「ふむ。何者と言われれば、この国の王だな」
「声に出てたか」
「出とったよ」
へえ、王ね。
一体どこの国だ?
「ファーレンガッハ王国……と言っても分からないだろうな」
「分からないね。わたしの世界にはそんな国はなかったからね」
「ほう?」
面白そうな声を上げるジジイ。
いや、まあ……
白い光に飲み込まれ、気が付いたら見知らぬ場所。そこにいた人は知らない国の王様で、床には魔法陣らしきもの。
ここまでくれば誰でも理解できるだろう。
異世界召喚だよね、これ。
どうせこの後、勇者として魔王を倒してくれとか言われるんだろう。
「よく分かっているな」
「わたしの国にはそういう娯楽小説が溢れかえってるからね。一応、詳しい話を聞こうか?」
「ふむ、そうだな。聞いてもらえるか」
そう言って話し出したことには、まあとにかくテンプレの一言。
魔王率いる魔族に押し込まれた人類は伝承として残っている勇者召喚の儀に手を出した。そして、わたしが呼ばれたと。
「ということで、其方には魔王を倒して欲しい。無論、できる限りのサポートはさせてもらう」
はぁ、と溜め息を吐く。
「まず一つ目。これ、誘拐して脅迫してるのと同じなんだけどそこのとこ分かってる?」
「貴様っ! 先ほどから見ていたが……王に対し、無礼にすぎるぞ!」
わたしの言葉に激昂したのは、甲冑を見にまとった男。騎士団長か何かかな?
観察するように眺めると、男は更に言葉を続ける。
「勇者だとは言え、少しは礼儀というものを弁えたらどうだ!?」
「はぁ。
一つ、わたしはこの世界の人間ではない、故にこの世界の身分秩序に従う義理はない。
二つ、わたしにとってあんたらは誘拐犯と同じ、いわば犯罪者。そんな相手に払う敬意は持ち合わせていない。
三つ、仮に上の二つを除いたとして、あんたらは人にものを頼んでる立場だ。そこを忘れんな。
……それとも何? 王は、王ってだけで、見ず知らずの他人に命を懸けさせる権利があると? だとしたら終わってるなこの国」
「ぐっ……だが!」
「よい」
王が一言制すると、男は悔しそうな顔をして引き下がった。
残念だ、どっちが上なのかを徹底的に教えてやるチャンスだったのに。
「すまないな。まあこちらにも対面というものがある、分かってくれ」
「へぇ。自分らでなんとか出来ないからって他人に丸投げしようとしてるくせに、対面を気にする余裕はあるんだ」
「貴様ぁっ!」
「……もう下がれ、レイモンド」
あからさまな挑発に激昂し、王にすら呆れた目で見られる騎士風の男改めレイモンド。顔面蒼白だ、哀れだ。
「よくそんなんで政治の場に出られるね? 王の迷惑じゃない?」
「……ぅ」
「表面的なことに囚われて本質が見えないからそうなるんだよ」
「こんなやっすい挑発にも反応するなんてねぇ……カルシウム足りてないでしょ」
「所詮は実力のない、ぷらいどばかりの小物か。ほらほら、敬愛すべき国王陛下様のごめーれーだよ? もうさがれ、れいんもんどー。……ぶふっ」
「き・さ・まぁ!」
レイモンドがついに剣を抜く。そして、わたしに向かって切りかかってくる……。
一歩左に避け、腕を掴んで引き寄せる。重心が片足に乗ったところで足払い。レイモンド床への熱烈なキスを披露すると気を失ってしまった。
「ダサ」
はぁ……と、これ見よがしに溜め息を吐いてやると、周りにいた騎士達が一斉に殺気立った。
気にせず王に向き直る。
「…………で?」
「…………す、すまない」
「まあいいけどね」
顔を引きつらせながら口を開く王。
「して、魔王の討伐の件だが」
さっさと話を進めてしまいたいのだろうね。わたしが許しを出すと即座に話題を変える。
「引き受けてくれるだろうか」
返事は決まっている。
「お断りします♪」
命は大事にしないとね♪
はい、盛大に引っかき回して放り出します。
本編でもそれは同じですが。
ただ、ユリが居ないので更に酷くなってますね(笑)