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スライムなめんなっ  作者: 月乃 綾
本編Ⅰ:森の蟷螂
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23話

エピローグその2。

「……以上が今回の件の報告になります」


 男の話に場が静まり返った。

 険しい顔で話し合っていた三人は、難しい表情で考え込む。


 この場にいるのは、大陸主要国と呼ばれる三つの大国の王たちだ。ファーレンガッハ王国、ニドニス帝国、ロードウェル法国。大陸の三分の一を占める超大国を支配するものたちである。

 彼らが集まった理由はただ一つ、ファーレンガッハ王国に現れた支配級への対処である。

 支配級の出現とは、それほどの事態だったのだ。


 そして、その支配級はすでに討伐されたという。そうなれば、彼らの考えはどこへと向かうのか。

 それを為した者。

 三大国の力を以てようやく倒せる相手。それを倒した者とは、すなわちそれと同等の脅威となり得るのだ。その素性を知りたいと思うのは当然だろう。


「……ファーレンガッハの宮廷魔導師団による儀式魔術で討伐された、ねぇ。確かなのか?」

「支配級とは人の手で討伐できるような存在ではなかったはずじゃがのう。ましてや《煉獄》は古代から存在する魔術じゃし」


 ニドニス帝国の皇帝、ロードウェル法国の法皇が疑問の声を発する。

 ファーレンガッハ王国国王は唸り声でそれに答える。


「少なくとも、私のところに届いた報告ではそうなっております。俄かには信じ難いのですが、報告を持ってきたのは冒険者ギルド支部長のオスカー。彼は自身の力量もそうですが、実直な人柄で部下にも慕われている男です。何の理由もなく虚偽の報告とは思えません」

「つまり、それ相応の理由があれば虚偽の報告もあり得るということじゃの」


 法皇の言葉に国王は難しい顔で頷いた。


「その通りです。が、その理由というのが想像がつかない」


 支配級の討伐、それは途轍もなく大きな手柄だ。国からしてみれば、一生贅沢三昧をしてもなおお釣りのくるだけの金銭、名誉を与えても謝礼としては足りないほど。たとえ粗野な平民であろうと、その功績だけで永代貴族の爵位を与えられてもおかしくはない。

 虚偽の報告はその謝礼を受け取る権利を放棄するのと同義なのだ。


「逆に考えたらどうだ? 俺たちから与えられる謝礼ってのは金と地位だ。それが足枷になると判断すれば、あるいは」

「ふむ。それは謙虚と取るべきか、すでに持っていると取るべきか」

「最悪はアレだな、反逆の意があるから隠れた可能性だ」

「いえ、それはないでしょう。街を一つ救っているのですから」

「分からないぜ? 人ってのは、時に思いもよらぬことを思いつくものだ」


 紛糾する会議。

 この話し合いはしばらくの間続き、最終的には、オスカーを問い詰めるとともに、実際に討伐した協力者がいると仮定してその者の捜索をすることに決定する。




   ◇◆◇




 静香は苛立っていた。

 口元は引きつったようにピクピクと痙攣し、額には青筋が浮かんでいる。最上位魔術を隣でニタニタと笑っている同行人にぶっ放したいところだが、無駄だと分かっているので必死でその衝動を押し殺しているところだ。


「くくく……いや、きみは本当にアレだな、ツンデレというやつだな。結局はソラ君だっけ? あの子を助けている。しかも忠告までしてくるとは。死んでもいいとか助ける義理はないとか言いながらきっちり大切にしているじゃないか。くく……物語の中だけだと思っていたよ、きみのような人は」


「ウザ」


 あまりのウザさに本音が溢れた。

 が、隣の男は止まらない。


「照れなくてもいいさ、友人は大切にするべきだ。世界中の人がきみのように友達想いだとした戦争なんてものはなくなるんだろうね。ああ、素晴らしいことだ。友情とはなんと美しいのだろうか!?」


 静香の額に青筋がビキビキっと量産される。

 この男の言葉は全て、静香をからかうためだけのものだ。心の中では針の先ほどもそんなことは考えてはいない。世界と自分を天秤に掛けて自分を取るのがこの男。それを知っているからこそ、静香の苛立ちはさらに増す。


「いい加減にーーーー」

「ああ、これからは帝国に向かうよ」


 まさに静香がキレようよした瞬間、男は声のトーンを真面目なものへと変化させた。そのため、怒るに怒れず、溜め込んだ苛立ちは溜息となって零れ落ちる。

 この男はいつもそうなのだ。ギリギリのところで躱してしまうから、感情をぶつけられない。


「はぁ……なんで帝国?」

「せっかく【統率者シタガエルモノ】を奪い返してくれたんだ、スキルオーブの研究を進めようと思ってね。今分かっていることと言えば体内に埋め込むことでスキルを譲渡できるということだけだろう?」

「まあそうなんだけど……コレ、本来はあたしのスキル・・・・・・・なんだけど?」

「もう少し借りるよ。スキルの正体、これが分かれば魔王アリエルの・・・・・・・手掛かりになる・・・・・・・可能性が高いんだ」


 男の言葉にため息を吐くと、静香は諦めたように頷いた。


「対価はもらうよ」

「いいだろう」


 スキルオーブ貸出延長の対価を交渉しつつ、二人は隠密結界を纏って帝国へと侵入する。


21話のあとがきにも書きましたが、受験のためこれから三ヶ月ほど更新を停止します。今までありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

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