21話
超短いです。
戦闘描写だけで1話書くというのは無理がありました。すみません。
あの暴風の一撃以降、グレーテストマンティスは鎌に風の刃を纏わせるようになった。
わたしが魔術に弱いことを悟ったのだろうが……これだから知能がある敵は厄介だ。
こうなってしまうと、わたしは迂闊には近寄れない。遠くから炎をぶつける程度しかできず、戦況は膠着状態に陥った。
更に悪いことに、わたしは自分の中で、戦いへと駆り立てていた衝動が一気に萎んでいくのを感じていた。
ユリを守る、そのための時間を稼ぐ……その目的は既に達成した。ならもう十分じゃない?
心の声は、わたしにそう囁きかける。
「キィイイッ!」
「がっ!?」
意識がそれた一瞬に風の弾丸を叩きつけられ、わたしの体は宙を舞う。息が詰まり、痛みで頭が真っ白になった。
それでもわたしは、無意識のうちで【魔力変換:生命】を行使し傷を癒すと立ち上がる。
なにをやっているんだろうね、わたしは……。
ユリを守るため、強くなるって決めた。
ユリはもう守ったよ?
また次、こんなことがあるかもしれない。
もう、こんなことはないかもしれない。
それでも、守るためには力がいる。
今でも、十分な力は持っている。
……何のために戦っているの?
幾度となく攻撃を身に受け、
心の声に精神を削られ、
わたしの体は、遂に力を失った。
「…………ぁ」
倒れ、横になった視界に、鈍色の鎌が迫る。
そして----
ザシュッ
鈍い擦過音が聞こえた。
鎌が切り落とされ、グレーテストマンティスの絶叫が響き渡る。
気付けばわたしとグレーテストマンティスの間に、一人の女性が立っている。亜麻色の髪を風に流し、健康的に焼けた肌、整った顔を半分だけこちらに向けている。
わたしは、その人のことを知っていた。
「……静香?」
「相変わらず弱いね、空」
そう、静香は言った。
軽く振った右腕、それだけでグレーテストマンティスは細切れになる。
断末魔すら許さぬ、圧倒的な一撃だった。
「んと……あった」
静香はグレーテストマンティスだったものの中から、拳大の宝石のようなものを取り出すと背を向ける。
「目的は果たしたから、あたしは行くよ。じゃね、空」
「あ、ま--」
次の瞬間、静香の姿は消えていた。
なにが起こったのか理解できなくて、途方にくれるしかない。
ただ一つ、
『相変わらず弱いね』
その言葉だけは、胸に突き刺さった。
わたしは弱い。
前世で妹を……優理を守れなかったように、今世でもユリを守れない。
それは……それだけは嫌だと、強く思った。
◇◆◇
移動型の隠密結界の中で、静香は小さくつぶやいた。
「相変わらず空は、自分のためには力を使えないんだね……。それじや、あのクソな学校はともかく、ここじゃ生きていけないよ」
その声は、誰にも届くことはない。
こんな形になりました。
本当はノエルに勝たせてあげたかったんですけど、今のノエルじゃ勝てませんでした……。
まあアレです。魔術使われるとどうしようもないです。それにノエルの場合精神的な問題もありますし。
さて、これにて第1章:森の蟷螂 編を終了します。
申し訳ありませんが、活動報告にも書いた通り、受験のため更新をしばらく停止します。遅くとも三月には再開するので、それまで待っていて頂けると嬉しいです!
追記
すみません嘘ですエピローグ投稿してから更新停止です。