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スライムなめんなっ  作者: 月乃 綾
本編Ⅰ:森の蟷螂
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17話

ユリ復活!

ここからは視点を戻します。

 目の前から脅威が去ったことをようやく理解したわたしは、思わずその場にへたり込んだ。

 なんとか生き残れたことを理解して、大きく息を吐く。


「うぁあ……マジ死ぬかと思った……」


 あれがA+級。

 まさしく、バケモノ。


 わたしは、スライムが思ったよりも強くて浮かれていたのかもしれない。ユリを守るためなら……なんて言って色々とやってきたけど、そのためには、危険を避けるよりもまずは強くならなきゃダメだ。

 それを心底実感した。


「ま、今のわたしは魔物だしね……バケモノなんて呼ばれるにはちょうどいい二度目の生じゃん? ……やってやる」


 この時、わたしは初めて『強くなる』ことを決意した。


「……はぁ、取り敢えず森を出ますか」


 転がる白骨の山を見る。

 ザカリーその他、合計五人の成れの果てだ。


 そしてその中に混ざる異物。

 初日に倒したサーベルドッグの骨である。


「あの時は騙されてくれたみたいだけど、こうして見ると一目瞭然だよね……」


 色からして違うその骨を弄びながら、我ながらよく成功したなと呆れる。


「場所は……あの初心者の森でいっか。川も流れてたし、野宿くらいできるでしょ」


 迂回して《魔の森》に近い門を避け、別の門から街へと入り初心者の森へ向かう。ゴブリンやウルフといった低級の魔物を虐殺しながら進み、手頃な洞窟を見つけると中に入る。


「臭っ。これは……ゴブリンの巣かな? こんなところにあったのか」


 初心者の森とはいえ、ある程度深くまでくれば魔物の数は多い。ここは既に、集団戦に慣れていない冒険者には厳しいところまで来ている。だが魔物の種類は変わらないために実入りが悪く、人があまり来ないため潜伏には格好の場所なのだ。


 まあ、今のわたしにはゴブリン程度は敵ではない。触手を伸ばして一瞬で全滅させ、吸収してステータス強化の糧にする。


「お掃除お掃除〜」


 スライムの本領発揮である。ゲル状になって体積を増やし、洞窟全体に【吸収】【消化】で綺麗にする。

 ものの数分で、ゴブリン特有の嫌な臭いと汚れは消え去っていた。


 満足して一つ頷き、体内から取り出したユリの体をそっと地面に横たえた。


「ぅ……?」

(おはよう、ユリ)

「ノ……エル?」


 ユリは何度か瞬きをすると、となりにいるわたしを眺める。


 あの時わたしは、ユリを体内に【吸収】して【貯蔵】で亜空間に放り込んだのだ。

 ゲームなどでよくある設定のように、生物は送り込めない。わたしの【貯蔵】もその例に漏れなかったが、従属によるパスが繋がっているユリは例外だと気付いたのはユリの体を【消化】で綺麗にしていた時だった。

 それに気付いた瞬間から、何かあった時はこれで逃がそうと思っていたのだ。ザカリーその他をそうしたように、直前に誰か殺しておけば疑われないだろうし、死んだと思ってくれれば追っ手も来ない。骨まで出せば偽装工作も完璧だ。

 パーティを組ませなかったのは、近くに人がいると関係ない人まで殺さないといけなくなるから。従魔の暴走ということにするのだから、絶対に反撃が来る。邪魔なだけだ。わたしとしては別にかまわないんだけど……ユリは嫌がるだろうからね、そういうの。


 とまあ、わたしの準備が見事に功を奏した結果になったわけだ。

 おかげさまでオスカーたちまともな冒険者たちは生き残ったし、ユリは助けられた。ザカリーその他という馬鹿どもの排除もできた。

 万々歳だね。


 あ、生存確認は街を通った時に【犬の嗅覚】でちゃんとしてきた。


 ユリはやがてしっかりと意識を取り戻し、周りを見回しながら口を開いた。


「ここは……?」

(初心者用の森の奥にある洞窟だよ)


 不思議そうな顔をするユリに、これまでの経緯を伝える。

 わたしがザカリーを殺すとこまでしっかりと見られているわけだから、そこもちゃんと説明した。

 ただ、人の姿になれることだけは黙っておいた。

 こんな守り方は、きっとユリは許してくれない。だから、今後はユリに悟られず動ける姿があった方が良い。

 これからもわたしは、手段なんて選ぶつもりはないから。


 わたしの話を聞いたユリは、


「そっか……」


 と一言だけ言って黙り込んだ。

 さすがに、今回は嫌われたかもしれない。

 ユリを守るためだとしても、目の前で人を惨殺して喰らったわけだから。

 そう思っていると、


「ノエルは、わたしを守ってくれただけだもんね。ありがと、ね」

(……へ?)


 その言葉が意外過ぎて、思わず変な声が出た。

 いや、声じゃないけど。念話だけど。

 ユリはクスリと笑う。


「ノエルが助けてくれなかったら、わたしは死んでた。あそこまでやった相手を殺したことに文句なんて言わないよ」

(そ、っかぁ……)


 なんか……うん。

 ほっとして、涙が出そうだ。


(良かった……嫌われたかと、思ってたから)

「ノエルを嫌うなんてあり得ないよ」


 わたしとユリは、しばらくの間その場で抱き合っていた。


 ほんと……良かった。

ノエル「スキル解説のネタが尽きたので適当しゃべっててください(by雪乃)……だって」

ユリ「ふぇ!? えっと、はい、分かりました」

ノエル「しばらく別視点だったのに解説なんてするから……」

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