3.エディを追え!
?「クシュン! 誰かが私の噂をしてますね」
?「風邪じゃない?」
?「そうですかね。闇人さんは風邪ひかなそうですよね」
?「そうだね、この動物占いにも今月は犬の人、風邪に注意って書いてある」
?「これ動物占いですよね。なんでペガサスとか混じっているんですか?」
繁華街
「ここはどこだ?」
色とりどりの提灯煌めく繁華街に姿を現したのは、チェックのシャツにジーパンの大学生。度の強い眼鏡をかけており、漫画で書いたらグルグル眼鏡にされること重点だろう。繁華街には似つかわしくない、真面目な格好であった。
「ったく、早く帰ってゼミの課題やりたいんだが……」
繁華街で客引をする女達は皆、大学生の世界でいう着物に違い格好をしていた。ここはパラペラ城から遥か東、極東の島国だ。そんなこと、この大学生にはわかるまい。
「あまり温度も湿度も変わってないな。気候的には日本に近いか。いや、文化的にも?」
大学生は状況をすぐに把握した。少し準備運動してから、空を見る。
「また無意識にどっかの世界へ飛んだのか? 早く帰るか」
発言からして、彼は自身に起きていることを把握しているようだ。そこが夙夜と決定的に異なる。大学生がボンヤリと考えていると、繁華街の向こうから悲鳴が聞こえてくる。そちらを見ると、巨大な蜘蛛が暴れていた。
それを見た大学生は、昔のことを思い出した様だ。
「クロノ、イヴ、アラクネ、元気かな?」
大学生は別れた友人に思いを馳せながら、蜘蛛の場所に向かう。蜘蛛は家屋を軽く凌ぐほど巨大で、警備員らしき法被の男達を軽く蹴り倒していた。
「おい、逃げろ!」
「あんたらこそな。ここはこの魔王に任せておけ」
前に出た大学生に法被の男が言うが、大学生は気に留めない。蜘蛛は1人の遊女を捕まえ、人質にしていた。魔王を自称する大学生はそれでも狼狽はしない。
「ややこしい真似をする。行くぜ。召喚!」
大学生はスマホを取り出すと、それを操作して天に掲げる。しかし、何も起こらない。
「しまった! もう召喚は使えないんだった!」
蜘蛛が隙ありとばかりに大学生へ足を伸ばした。だが、大学生の影から黒い龍が現れ、足を防いだ。
「なんちゃって。来い、ドラゴン!」
その龍は大学生の腰に巻きつくと、ベルトの様なものに変化する。バックルが異様に巨大で、上着の上から巻きつくという衣服に脈絡の無い装着状態になっている。法被の警備員は顔を見合わせて首をかしげる。ベルトとしての機能をはたしていないアイテムに、何の意味があるのか。
「いやカードもこいよ!」
そして大学生が呼ぶと、さらに足元から先ほどより小さな龍らしきものが出現する。その龍は大学生の手元で、カードと姿を変える。
バックルの上部にはカードを装填する穴がある。知る人が見れば、ホテルのカードキーみたいなデザインだが、この世界の人々はそんなもの見たことがない。終始、頭上にハテナが浮かぶ。さらに、ベルトの表面にはカードリーダーまで付いている。
『シールオフ、ドラゴン』
「よし、これだな」
カードをリーダーに通して中身を確認すると、大学生はベルトにそれを入れた。カードは燃え上がっている。
「変身!」
『ドラゴン、リベレート!』
大学生はベルトにカードを装填する。それと同時に音声が流れる。警備員たちもベルトの意味に気付き始めた。
大学生の足元に赤い魔法陣が現れ、巨大なドラゴンのシルエットが浮かぶ。そのドラゴンが大学生に覆い被さると、シルエットが縮小して彼と重なる。光が晴れた時、大学生の姿が変化した。
龍を象った鎧を纏い、マントを翻している。全体的に黒く、禍々しい印象があった。あのベルトは魔術アイテムだったのだ。カードを入れると、魔法を代わりに使ってくれるのだ。
「あんた、何者だ?」
「通りすがりの大学生だよ」
大学生は戸惑う人々に返しながら、剣を抜いた。だが蜘蛛は遊女を人質にしており、迂闊に攻撃できない。そこで、大学生はカードを取り出してベルトに入れた。
「まずは人質だな」
『スペルベート、ハンドオン』
遊女が大学生に向かって飛んでいき、そのまま解放された。蜘蛛は言葉を発さないが、明らかに動揺している。
「よっ、大丈夫か?」
遊女はボォっとしていた。顔を赤らめ、まるで恋する乙女だ。彼女を見た大学生は、何かに気づく。遊女の額に小さな魔法陣が付いているのだ。
「チャームの魔法? 顔に魔法付いてるぞ?」
大学生はその魔法陣を、まるでシールでも剥がすかの様にベリベリ剥がした。すると、遊女の顔色がスッと元に戻る。
「俺チャームなんてかけたかな? なんか対象が俺になってたけど」
「チャーム? 私達には対チャームの魔法がかけられて……」
大学生はチャームが自分へ向けたものであったため、剥がしたのだ。チャームによって遊女は大学生に惚れる仕掛けとなっていた。その事実に困惑したのは、当の遊女だ。彼女の働く店では従業員である遊女達がチャームの魔法で持ってかれたりしないよう、対チャームの魔法を定期的にかけている。一般人には貫通出来ないほど強力なので、彼女も信頼していたのだ。
「強力な魔導士によるものか?」
「とにかくどうもありがとう。店に来たらサービスするね。あなた、名前は?」
「朝凪一機だ」
「そう。またね。私は『蜜浴荘』ってお店にいるから、遊びにきてね」
そのまま遊女は営業トークをして現場から避難する。シレっとはだけた着物から覗く胸元や脚をアピールしていたが、一機もプロの誘惑に惑わされることなく挨拶を返す。
「おう、元気でな」
周りに人がいないことを確認すると、空高く飛び上がった。ベルトにカードを入れ、そしてそのまま飛び蹴りを仕掛ける。朝凪と名乗った大学生は炎を纏ったキックで蜘蛛へ突撃する。隕石の様だ。
『必殺、ドラゴン!』
「行け!」
その蹴りが直撃した蜘蛛は爆発に消えた。一機は変身を解いて、その場を去っていった。
その戦闘を物陰で見ていた人物がいた。黒いマントで姿ははっきりと確認できない。
「面倒なことになったな」
その人物は震え声でそう言ったという。
数時間後 パラペラ城
エディが消えたことを夙夜が知ったのは、街にトロールが現れた翌日だった。騎士団長に呼び出されて、捜索任務に就くこととなったのだ。
城の医務室を基点に、エディの手掛かりを探す。しかし、イヴも含めて誰もエディが部屋を出て行くところなど見ていないというのだ。
「うーん、少し席を外したらいなくなっていたし、一体どうしたんだろ?」
医務室にいたイヴはその時、いなくてエディが消えたところを見ていない。当然夙夜の国と違って監視カメラなんて無いし、何処に行ったのかわからない。
「ジョンまでいない、ということは奴が連れ去った可能性が高い」
城内を探索していたシェードが報告する。夙夜はエディの寝ていたベッドの下から、何かを見つける。
「これって!」
夙夜が見つけたのは、白の教団のビラだ。それも、四隅の糊からかん一度剥がされたものだ。白の教団のビラを剥がしていたのは、シェードら兵士を除けばハクアだけだ。ここにハクアが来たということか。
「白の教団か。城に資料があったはずだ」
シェードは城の資料に白の教団について書かれたものがあるのだろうと考えた。
城の資料室へシェードと夙夜は向かう。資料室は図書室の隣にあり、国で起きた事件の報告書が集められている。年代別に並んでいるが、資料室の入り口に索引があるので年代以外の条件で探すことも出来る。
「で、白の教団は……」
シェードが索引から白の教団の資料を探した。資料の表紙には『白の教団同盟関係資料』と書かれている。
「同盟関係? この国が教団と同盟結んでたのか?」
「俺も初耳だ」
夙夜はともかく、シェードは国と教団の同盟を知らなかった。兵士すら知らないということは、これは極秘の関係なのか。
「見ろ、この肖像画。ハクアちゃんにそっくりだ」
「本当だ」
シェードが資料をめくると、ハクアによく似た少女の肖像画が書かれていた。そこには『白の教団の巫女』と但し書きがされている。そして、名前は『ハクア』と。
『白の教団はアルビノの少女である。モンスターとのハーフばかりで構成された教団で数少ない人間でもある』
「あのビラにこの肖像画、ハクアがあそこにいて教団へ連れ去ったってことなのか?」
「かもな。とりあえず、手掛かりはこれしか無いし、教団本部へいくか」
夙夜とシェードは馬で白の教団本部へ向かった。シェードの馬の後ろに夙夜が乗る。さすがに龍の翼保有者とはいえ、乗馬はいきなり出来ない。
「住民の話では、ここから出て行くジョンを見たらしい。その傍らにはアルビノの少女もいた。つまり、ジョンがハクアちゃんに手を貸して連れ去った可能性がある」
シェードの馬は速く、あっという間にエディと夙夜が初めて出会った場所まで到着した。そのまま、城に行く道とは反対方向へ進んでいく。
「この先には村があるんだ。あの門から出たら村まで一直線だ」
シェードによると、村まで道を逸れることは出来ないらしい。村でまた情報収集する必要がある。踏み鳴らされていない道はモンスターと遭遇しやすく、人を攫って移動できる場所でもない。ハクアがいくらモンスターとのハーフの集団のリーダーとはいえ、純血のモンスターは話が違う。
最終目的地は白の教団本部だが、その途中に寄り道をしている可能性も否定出来ない。故に、村でジョンとハクアの動向を探ることになる。教団本部まで行って無駄足というのは避けたいし、敵の本拠地に踏み込む必要が無いなら、それは好都合だ。
「ほら、村だ!」
シェードの馬が村に到着する。田畑が広がる村であるのだが、村は何やら騒がしい。農耕で生計を立てる村人がこうも騒ぐということは、何か危機的状況に違いない。
「一体何事だ?」
シェードは普段から静かな村らしからぬと訝しむ。祭りの時期ではないはずだ。
「あれは!」
夙夜が見たのは、村の倉庫から穀物の袋を持ち出す山賊の姿だった。それも、犬が二足歩行した様な姿の山賊だった。
「あれは、コボルトより大型だからワーウルフか!」
「ワーウルフ?」
「知能の高い獣人だ。まさか山賊まがいのことをするとはな!」
シェードが馬から降りて、剣を抜いて駆け付ける。兵士であるシェードの姿を見たワーウルフ達は慌てて逃げ出す。逃走を選択できる知能はあるようだ。
「ゲェ、兵士!」
「アイエエエエエ! 兵士? 兵士ナンデ?」
「コワイ!」
それを見て、シェードが走る。敵の目的は村の襲撃であり、シェードは偶然訪れた。つまり、深追いしても罠は無いと判断できた。
「待て!」
「そうはいかんな」
ワーウルフを追おうとしたシェードの前に何者かが立ち塞がる。それは、ワーウルフ達と同じ耳と尻尾を持つ少女であった。半人半獣というところか。
「そこを退くんだ! 怪我したくなかったらな!」
「レイカさん! 帝国の兵士は実際強い! 逃げるんです!」
レイカと呼ばれた少女は仲間のワーウルフの忠告も聞かず、シェードに立ち向かった。
「少し眠っていてもらう!」
シェードも相手が女の子なので、流石に本気は出せない。剣を鞘に収め、そのままで剣を振る。
「愚かな」
レイカはその剣を受け止めると、何かを呟いた。瞬間、閃光の様なものが白昼の村を照らす。
「グワーッ!」
「シェードさん!」
シェードは感電して気絶した。電気の呪文を使ったのか。剣の鞘は絶縁体で作られておらず、剣に至っては電気をよく通す金属製だ。
「モーターヤッター! 魔法の勝利だ!」
ワーウルフ達は立ち去るレイカを迎え、悠々と退却した。夙夜はまた面倒なことになったと頭を抱えた。
「最近、村をワーウルフの山賊が襲うのです」
そう話したのは、村長だった。感電して気絶したシェードを介抱してもらっている間に、夙夜は情報収集をしていた。
思えば、彼が能動的に動くのは珍しい。この国が退屈な自分の世界と違い、新鮮味に溢れているということもあろう。村人の話でわかったのは、ワーウルフの山賊が最近村を襲う様になったということだ。
「ワーウルフか、だとしたらあいつは一体?」
ワーウルフに混じっていた半獣の少女が夙夜は気になった。何故モンスターの群れに人間がいるのか、そもそも彼女は何者なのか。
「あのレイカって子、モンスターなのか?」
「あれはきっと、モンスターと人間の合いの子じゃろ。母親がモンスターに犯されて産み、どこかの村で捨てられたか、母親がモンスターだっかかのどちらかじゃ」
村長曰く、モンスターとのハーフというのも存在するらしい。レイカがそれだとしたら、ワーウルフ達の中にいても理解できる。
「とにかく、山賊をなんとかしてくれ!」
「わかった、俺も気になってたし」
村長から頼まれ、夙夜は山賊を退治する羽目となった。夙夜もレイカが気がかりだったので、頼まれてやることにした。
山賊のアジトは村付近の山にあるという。夙夜は村人の情報を元に、アジトへ向かった。
「ここが奴らのアジトか」
ワーウルフのアジトは、山の中にある集落だ。簡単な木の壁に囲まれた集落で、見張りもいる。白の教団のマークが染め抜かれた旗を掲げているなど、今回の事件に関係がないわけではないことを窺わせる。
山の中とはいえ足元の土は乾燥しており、木も少ない。痩せた土地なのだろうか、夙夜にはわからない。周りや緑生い茂る山に対し、ここだけ禿山なのだ。
禿山の貴重な木の影に隠れ、夙夜は様子を見ていた。
「見張りをどう掻い潜るか……」
問題は、この見張りだ。壁の周りを絶え間なくグルグル回っている見張りは、それなりに数が多い。
自分達は村を襲ったくせに、自分は襲われたくないという、何とも勝手な感情をかんじさせた。
「仕方ない、正面突破だ」
夙夜は龍の翼を手に、見張りの方へ歩いて行った。ワーウルフ程度なら、正面から叩きのめせる。
「て、敵だ!」
「村に入れるなよ!」
「おうよ!」
見張りのワーウルフは夙夜を見つけて、三人で攻撃を仕掛ける。左右と前方を三人掛かりで塞ぐ戦法だ。しかも、槍を持っている。槍は剣よりリーチが長い。防衛にはうってつけだ。ワーウルフも自信ありありで攻撃していた。
毎日修行している戦士が、こんなヒョロい子供に負けると考えるだろうか。だが、一人でここに来たということは、それが出来る実力はあるとみた。魔法使いの可能性を考慮し、最大限の警戒は怠らない。だからこその一斉攻撃。
「やれやれ」
だが、夙夜は龍の翼を一振りしただけでこれを吹っ飛ばした。龍の翼は振るうと、炎が迸るのだ。ワーウルフにも、これは避けようがない。どんなに警戒しても、こんな攻撃は予想できない。
「グェエッ!」
炎に包まれたワーウルフはもがき苦しみ、そのまま絶命した。苦しい筈の焼死ながら静かに息絶えたのは、戸惑いが全面に出ていたからだろうか。全て計算外。こんなことは当のワーウルフ達に対策しようがなかった。
残る見張り達は入り口前に固まり、夙夜を牽制する。
「何事だ!」
「レイカか、早く女子供を連れて逃げろ!」
その時、レイカが姿を現した。他のワーウルフは逃げる様に言ったが、レイカはそれを聞かない。
「馬鹿言え、私ではなく夫であるみんなが妻子を逃せばいい」
「俺はお前達を滅ぼしにきたわけじゃない」
戦う気満々のレイカに対し、夙夜は話し合いの姿勢を見せる。その様子を木の影から見ているものがいた。
「殺しといてそれは無いでしょ」
先日、夙夜がエディを助けた時に出会ったニンジャの少女だ。その姿は、夙夜にもレイカにも見えていない。彼女の言うことは正にごもっとも。しかし、レイカは何故か同様の反論をしない。
「ありゃー、なんか魔法掛けられてない? 一機かイヴがいたらなぁ」
少女はレイカに施された魔法に気づいていたが、解除する技術がなかった。知り合いにはその技術がある人物もいるのだが、今は何事も無い様に見張るしかない。
「何のつもりだ?」
「何故村を襲う! 村人が何をしたっていうんだ!」
夙夜の説得に少女は頭を抱える。この山を見てもわからないなら、永遠にわかるまい。村人によってこの禿山に押し込められ、ワーウルフ達は困窮していた。単独では身体能力で勝るワーウルフでも、数を頼みにされれば太刀打ち出来ない。
「お前にはわかるまい、私達のことなど」
当然、説得には失敗。レイカは聞く耳を持たなかった。夙夜は諦め、力尽くで止める手に出た。
「仕方ない。こうなったら無理にでも止める!」
「いや、正しく理解すればこんなことには……」
物陰で、少女は色々諦めていた。事情を理解すれば説得できるし、レイカに掛けられた魔法を解除する能力も夙夜にはあるはずだ。
「やっぱり、異世界からは操りやすい人呼んでるみたいだね」
情報を集め終わった少女は、その場から退散する。予想が正しいなら夙夜は女の子を殺さないだろうし、彼女を連れて自分の元に来るだろう。この場で出て来て夙夜を止めようにも、あの状態の異世界人にはこちらがどれほど強くても勝てないことくらいわかっている。
「わかりあえないっていうなら、まずは俺と分かりあってもらおうか!」
「小癪な!」
夙夜が剣を振るうと、レイカがそれを白刃取りする。そこから、電気を流して攻撃。レイカにとっては、上質な武装を持つ兵士への鉄板な戦い方だ。
「何?」
「効くかよ!」
しかし、レイカは電気を流しても痺れる様子を見せない夙夜に戸惑う。本来なら、金属の武器でなくとも多少は通電するはずなのだ。この世界において絶縁体は希少。故に電撃魔法はレイカの強みであった。
「何故だ!」
「電気は金属くらいじゃなきゃ、ろくに流れないのさ!」
龍の翼は金属ではない。だがその理屈はおかしい。金属でなければ通電しない、ならばレイカは村人の竹槍に同じ戦法を使えない。その理論では、金属の武具を持つ者が少ない環境で、この戦法が発達しないのだ。
「ふざけるな!」
レイカは全部魔力を電撃に変えて攻撃する。それでも、夙夜には通じない。そのうち、魔力を使い果たしてレイカは膝を付く。
「クソ、何故だ……」
魔力は即ち精神力。それが尽きるということは、意識を失うということ。レイカは地面に倒れた。呼吸を乱し、脂汗を全身にかいている。
数時間後、レイカが目を覚ますと、先ほど襲撃した村で村人に介抱されていた。村人とワーウルフが付き添って看病している。夙夜が村人とワーウルフ達が争わない様に説得すると、不思議とすんなり仲直りしたのである。
レイカが起き上がり、寝かせられていた家から出ると、外でワーウルフ達がフォードから剣術の手解きを受けていた。隣には夙夜がいる。
「しかし凄いな。あれほど争っていた奴らを仲直りさせるなんて」
フォードは感心を通り越して疑念を抱いていた。禿山に追いやられたワーウルフの困窮は解決していない。それなのに和解できるものなのか。
「そうだ、あんたら、白の教団の本部に行くんだってな」
「そうだが?」
ワーウルフの一人が夙夜に話しかけた。たしか、ワーウルフの村には白の教団の旗があったはずだ。
「俺たちはただでさえ貧しいのに、白の教団に穀物を上納しなければならない。それで困っていたんだ。白の教団を倒してくれるなら、本部まで案内するよ。よしんばあんたらだけで辿り付けても、中に入るのは大変だ。潜入を手伝おう」
「そうか、すまんな」
ワーウルフは夙夜達の白の教団調査を手伝ってくれるとのことだ。これは心強い。目指すは白の教団本部、そこにエディはいるのか、そして教団の目的とは。
モンスター図鑑
ワ―ウルフ
要するに人狼。コボルトよりも大柄で人間に構造が近いため、上手い具合に人間とのハーフが生まれやすい。