番外 行方不明者一名
一方、夙夜の世界では行方不明事件が起きていた。コワイ!
男子高校生がいなくなるなんて実際マッポーめいている。
お前のことだよ夙夜。
愛知県警岡崎署
「捜索願い?」
奇妙な事件が起きたというので来てみれば、行方不明者だという。刑事、直江愛花は後輩の頼みで事件を追うことになった。
パンツスーツを着た、髪をポニーテールにした凛々しいこの女刑事は若さに似合わぬ敏腕さから岡崎署のエースであった。今回の事件は、そんな彼女すら首を傾げる点が多い。
「行方不明者は高校生、県立北高校に通う穿池夙夜。一年生で16歳です。何とか防犯カメラに映っているところは見つけたんですが……」
後輩の優男はコンビニから借りてきた監視カメラの映像をパソコンで愛花に見せる。今回行方不明になったのは見た目からわかる様に、素行に問題の無い高校生だ。
「おい、トイレから出て来ないぞ」
高校生はコンビニのトイレに入ったっきり出て来ない。それより、愛花には気になることがあった。
「お前、よくこの映像見つけたな。ピンポイントで、このコンビニを」
コンビニならいくらでもあるし、防犯カメラなどない通学路にいる時間の方が長いはずだ。それなのに、このまさにいなくなる瞬間の映像を見つけることが出来たのは僥倖といえる。
「いや、何時までもトイレが占拠されてるって、いくらドア叩いても反応無いって通報があって、警察が駆け付けたみたいです。生活安全課からの受け売りですね、これは」
後輩が言うには、この映像はたまたま見つかったのだ。警察が扉をこじ開けたなら、中身くらい見ただろう。
「で、中にいたのか?」
「いえ、中には誰もいなかったらしいです。窓にも開けた痕跡がありませんでしたし、トイレの窓には鉄格子がハマっているので脱出は不可能です」
「奇怪だな。ん? この時間は?」
愛花は映像を見て唸る。突然消えた高校生。謎が謎を呼ぶ。だが、彼女は防犯カメラの映像が記録された時間を見て、何かに気が付いた。
「そうそう、ちょうどこの時間に居眠りしてたら夢見たんだよ。変な夢」
「夢、ですか」
その時間に夢を見たのだという。
「なんかな、私が弟と暮らしてる夢」
「直江先輩、一人っ子ですよね?」
「それからな、なんか妹もいるんだよ。そんで結婚しててな」
あまりに願望が入り過ぎの夢だった。あの白髪の弟、遊人といったか、彼は何もなのか。愛花はここまで奇妙な夢を見たことはなかった。
「何話してるの?」
「イヴか。いや、変な夢だよ」
そんな愛花に声をかけたのは、解剖医のイヴ。日系イギリス人だ。栗色の髪を適当に纏めて、飾りっ気の無い白衣を着ているが、スタイルのいい美女であることは隠せない。
「私も最近変な夢見るのよね。なんか召喚されるモンスターになって大学生の男の子と活躍したり、事件解決したら今度は変なファンタジー世界で医者したり」
イヴも変な夢を見るというのだ。果たして、今回の事件に夢は関係あるのか。謎は深まるばかりだ。
異世界名鑑
ハクア
アルビノの少女。この地域ではアルビノが魔術的意味を持つため、治安が悪いと人買いに狙われることもある。
白の教団のビラを剥がしていたが、関係はあるのだろうか。直江遊人、墨炎を呼ぶためにエディを必要としているらしいが……。