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ごめんなさい、話数間違えました。

「いったい何やってるのよ、このっ!!!」

「だから、迎えに来ただけだろう?お前は馬や馬車が苦手と聞いたから、わざわざ竜で来てやったのに・・・」

「いい迷惑です!というか前もって言いなさいよ!驚くじゃないっ!」

「それはよかった。知らせなかったかいがあった。」

「だからっつ、あーーーーもう!!!!」

呆然としているムーメイを置き去りに、ルインが玄関へ向かって見たものは、竜から軽やかに降りたウィシュスだった。近くにいたのは、遠巻きに竜の周りを取り囲む使用人達だけで、兄や母はいなかった。

あたりを見回していたウィシュスは、ルインが玄関から出てきたのを見ると、耳をピンと立てて歩み寄ってきた。そしてルインの前に立ち、いきなり竜で来たことも、混乱を招いたことにも一言も触れずにこういったのだ。

「迎えに来た。」

高圧的な物言いに、好戦的なルインが黙っていられるはずがない。

「なにが迎えに来た、よ。そのほかに言うことはないの!?」

「時間は問題ないはずだ。むしろ少し余裕がある。」

「そういうことじゃないのよ!!」

どうにか回復したムーメイが玄関に走りこんだとき、二人は喧嘩の真っ最中だった。だがウィシュスはきゃんきゃんと騒ぐルインをご機嫌な様子であしらっており、対するルインは今にもウィシュスに掴みかかりそうだ。

「ま、まぁまぁルイン。ちょっとは落ち着いて。室内用の車椅子で出てきたらだめですよ。」

怒り狂うルインをなだめつつ、ムーメイは持ってきた小回りの聞く外出用車椅子にルインを移すため抱き上げようとする。だが、それは意外な人物によって遮られた。

「そろそろ出発だ。いくぞ。」

「え・・・ってきゃあ!」

ひょい、とルインを大きめの人形かのように抱き上げたのはウィシュスだった。

「こ、公爵様!」

慌てるムーメイを置き去りに、さっさと竜に飛び乗ったウィシュスはそのまま竜を飛び立たせてしまう。

「え、ちょっとまちなさいまさかこのまっいやぁぁぁぁーーー!」

段々と遠ざかっていくルインの絶叫を聞きながら、ムーメイは呆然と豆粒ほどの大きさになった竜を見つめた。

「私も空飛んでみたいナァ・・・・」


「いきなり何するのよ!本当に信じられない!」

いきなり抱き上げられたかと思えば、お次は空の上。ルインはなるべく下を見ないようにしながら、自分をしっかりと支える腕の持ち主に一発入れた。

「アンタのせいでせっかく結った髪もぐちゃぐちゃじゃない!それに強引過ぎるわよ。ちょっと聞いてるの!!」

うんともすんとも言わない漆黒の獣人に文句をいうも無反応。いい加減ののしり言葉の語彙も尽きたころ、薄青色の目がこちらを向いた。

「アンタじゃない。俺はウィシュスだ。そう呼べ、ルイン。」

「・・・この暴挙への謝罪はないわけ?あと名前で呼ばないで。 」

本当に話を聞いていなかったのだろうか。こんな奴に怒っても体力の無駄、と分かっていても苛立ちは収まらない。

「アンタにはまだまだ文句を言い足りないんですからね。」

キッとだいぶ上の位置にある瞳を睨みつけると、反対に睨み返された。

「ウィシュスと呼べ。言わせて貰いたいが、俺にもルインに言いたいことがある。」

「なによ。」

売り言葉に買い言葉だ。様子から見て、どうせあと数十分はこのままだ。今のうちに言いたいことはいいきってしまいたいが、瞳に気圧されてルインはのどまで出掛かった言葉を押し込んだ。

「婚約者が目の前にいながら、ほかの男に身を任せるとは何事だ。」

「・・・は?何のこと?」

厳しい声で言われたのは、まったく身に覚えのない事だった。驚いたルインをごまかしていると捉えたのか、ウィシュスは眉間にしわを寄せた。

「知らないとは言わせない。あの従者だ。生活するのに手が必要なのはわかるが、男に抱き上げられるとは何事だ。獣人族は独占欲が強い。俺でなかったら、あの従者は八つ裂きにされていた。・・・次はないぞ。」

歯をむき出しにし、今にもうなり声を上げそうな凶相からそっと目をそらしたルインは出発前を思い返す。外用の車椅子に乗り換えるため、ムーメイに抱き上げてもらおうとしたのだ。・・・・まさか。

「女よ。」

「何がだ。」

「だから、ムーメイ・・・私の従者は、男の格好をしているし、長身だけれど。ムーメイは女よ。」

ルインは普段動きやすいから、といって男装で過ごしている。中性的な顔立ちに、生まれ持った長身、ルインを抱き上げたりなど、力仕事も多いため引き締まった体などでよく間違えられるが、ムーメイは女だ。

「私の入浴や着替えも手伝って貰うんだから、男なはずがないじゃない。」

ルインにとどめをさされ、ウィシュスはむっつりと押し黙った。どうやら良く考えたら女だと分かったらしい。

「・・・すまなかった。」

あまりの気まずさに、ウィシュスは素直に謝罪し、ルインは深く嘆息した。


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