03話 天蓋:ドーム 後編
注意:恥描写アリ。
前回のあらすじ?
目覚めればそこは新世界! 閉鎖空間? 地下世界?
スペースコロニーだったりして!
振り向けばそこに美女二人!
そこの彼女達、俺が全裸だからってそこを裸に剥いちゃラメ〜。そこはデリケートゾーンなの。
この女達、男知らずとは!! 教育の必要がありそうだな(ゲス顔
そうか、こいつらも天涯孤独の身の上か……。
そうかこいつらも両親を失っていたのか……。
まあ、俺の時とは違って下衆な親族もいないようだが。
いやそれでもいた方が良かったのかな?
って、なに真に受けているんだ。
その話が真実かどうかもまだ解らないのに。
……とは言え、嘘だと言う確証もないので
とりあえずは真実だということを前提に話を進めようか。
興奮、いや……動揺していたが突然冷や水をブチかけられたような気分になったな。
段々と落ち着いてきて平静な気持ちになっていた。
股間をチェーック!!
……良し、大丈夫だ。
そこでスクッと立ち上がり再び問いただす事にした。
「ところでココは一体なんなのだ? あと一族って?」
「ここは『箱庭の根の国』山岳の中にある我ら『堕天死族』の生き残りの住まう隠れ里」
* * *
姉様のテリアスには俺が倒れていたと言う現場とやらで残りの話をする事を了承してもらった。
実況見分というやつだ。
天使ちゃんとしばし別れて、ジオフロントの外へと連れ出してもらうこととなったのだ。
……そうこの神秘的で摩訶不思議世界は地下世界であったのだ。
とは言え正確には山をくりぬいて造られた、……そう巨大な岩塊の中に築かれた要塞のような感じだと思う。
シャイアン・マウンテンか!
まあ、詳しい話はまた後で聞こう。
それより外がどうなっているのか大変気になる。
果たして本当に……。
……別にあれ以上精神的ショックを受けないよう逃げ出した訳ではない
とだけ言っておこう。
そう、天使ちゃんとのしばしの別れは辛かったがこれはあくまで一時的な措置。
あくまでもほとぼりが冷めるのを待つためではない。
そうあくまでも……。
* * *
「少女よ大丈夫だ、問題ない。生理現象は既に収まった」
そう言い切る俺に対しこの天使ちゃんは……、
「ですが、あんなに腫れていたのに、本当に大丈夫ですしょうか~?」
どうしても信じてくれない。
仕方ない。
……子供相手なら大丈夫かな?
いやこのご時勢、寧ろより危険な行為に思えるが……。
ええい、儘よ!
「ほ~ら、この通り何ともないだろ~?」 (チラ見せ!
そう言って俺は両手でマントの前を広げる……。
梅夜の摩訶不思議劇場の開始である。
(お巡りさんが来ませんように、誰にも見られませんように、どうか反応しませんように!)
そう念じながら広げたのだった。
「本当です。あんなに腫れていたのがこんなにも小さくなって……何だか可愛いくらいです~」
と、おっしゃる天使ちゃん。イヤさ、リティールちゃん。
「小さ……」 (ショボーン
小さい娘に小さいって言われた。
……可愛いって言われた。
……別にショックではないぞ。
……ホントだぞ!
ホントなんだからな!!
「あっ? なんだか段々と……益々小さくなっていきます~! 不思議です~!!」
もう止めて私のライフはもうゼロよー。
梅夜の摩訶不思議劇場終了。
そして幕は閉じられるのだった。
もう一人、どれどれと言うようにして覗き込んでくる。
姉の方も見ようとするな!
* * *
っと、言う訳で別に大したことはなかった。
問題ない。
大丈夫だ!
そして彼女はロボ達を連れピラミッドの方へ案内して行った。
なんでも直通のエレベーターがあるそうだ。
今になって気づいたのだが
直上の天井に天窓的な光が差し込む以外に
巨大な逆さになった城の様な施設が見える。
それを見上げながら思わず尋ねる。
「なあ、あの上にぶら下がっている逆さのお城みたいなのは何なんだ?」
「これから行く上層部の施設の最下部部分よ。
今は下降しているからああやって見えるだけよ」
さようか。
上にも施設があるんだ。
なんだか大規模なもののようだ。
って、下降?
* * *
真っ赤なピラミッドの中は意外と普通な感じだった。
ホテルとか研究所とかそんな感じ。
ただ人気が無くて少々薄気味が悪い。
「このエレベーター椅子が備え付けてあるぞ!? それになんで横に移動しているんだ?」
「これから直上へと上がるラインに向かっているだけよ。そんなの普通でしょ?」
そりゃ普段から利用している連中にとっちゃ普通だろうが、これエレベーターじゃなくて所謂タービンなリフトとかの類じゃ? って、ロボも乗り込むのな。
「こいつらもちゃんと乗れるんだ」
重そうだから重量制限に引っかかるかとも思ったが。
「乗れるもなにも私達以外に彼らが使用するのは当たり前よ。もっともあまり使用しないみたいだけれども」
などと彼女は言っているが、やはり、自前で飛べるからかな?
「当たり前って何でさ?」
「だって元々この地は彼らの住居だもの」
「えっ、ここってこいつらの巣だったのか」
「巣と言う言い方は少し表現が悪いけど、まあそんなところね。私達一族は操者として招かれたのだから」
「操者?」
「そう、この子達は本来なら人を載せて戦えるほど大きく育つの。もっとも、幾度の戦乱で大人達は皆死んで行って残ったのは子供ばかりだけれども」
それでもこの箱庭世界を維持管理する事くらいはちゃんとやっているのよ。
っと続ける。
「んっ上昇ポイントに到着したようね、これから上へ昇がるわよ」
どうやらやっとエレベーターらしくなるようだ。
* * *
ピラミッド部を抜け上昇する程にジオフロントの中が一望できる。
まさに特等席だ。
よく見れば各所で円盤ロボのお仲間がフワフワ浮いている。
「そういえば一族以外とあった事が無いと言っていたが、ひょっとして外部と連絡を断っていたんじゃないのか?」
そういうと彼女は少し寂しそうな、そして嬉しそうな顔をして答えた。
「まあそういえるわね、でも何だか貴方は他人の気がしなくて……そうね、妹に似ていたからかしら?」
「妹? 天s……リティールちゃんと俺が?」
確かに愛くるしいその容姿は少々似ているかもしれないが共通点が
あるとも思えんが?
「いえ、そうではなくてリティじゃなくて上の妹のリオシティの事よ。
後で会わせるわ」
妹は貴方の事きっと気に入るから、などと言っている。
「それは一体どういう……」
などと言っていると、エレベーターの動きが止まった。
「あら? 最下層部に着いたみたいね。少し待って。 ん、お願い」
なにか円盤ロボ……紅蓮とやらに操作させている。
って言うかどうやって会話しているんだ?
あの連中無口なんてもんじゃないんだが。
「折角だから展望を良くする為にこのタワー自体を上昇させるわ。エレベーターそのものは止めるけどしばらく上昇に時間が掛かるからその間に話を続けましょうか」
むむむむむ、落ち着かないなあ。
「そう、貴方も左右の瞳の色が違うのよね……妹も同じような目をしてるからかしら、貴方に親近感を抱くのは」
「リティと私と髪の色や瞳の色がちがうでしょ?」
そう言って自らのその艶やかな黒髪をなでつける。
「あの子は銀髪金目で私は黒髪赤目……リティはね聖天至族への先祖帰りなのよ」
少し淋しげな顔でそう呟くように言った。
「私達、堕天死族は元は聖天至族と言って紅蓮達とは違うもう一つの、あるいは対となる存在『紫暗』と言う一族と生活をともにしていたの。だけど、私達一族は彼らと袂を判ってここへとやって来て今の黒髪赤目の姿へと変わってったの」
目と目が合う。
ああ確かに美しい紅眼だ。
「ええ、なのだけれども時を経て力が弱まったせいか下の妹は先祖帰りをおこし、また上の妹は部分変異を……そう、右目が金目になるという一部だけの先祖帰りを起こしているの。それを気にしていつもは眼帯で隠しているのだけど……」
なにか誤解があるようだから訂正を入れる。
「いや実はこの左の目は色ガラスを入れてるんだ。正確には義眼のレンズに色の付いたカバーを重ねているのだが……」
っと、言って左目のカラコンを外そうと目に指をやる。
っ痛てーーーー涙が出ちゃう!
ってそんな馬鹿な! 我が魔眼が! 義眼のはずなのに?
「これは……もしかして生身になってる?
済まんが鏡かなにか持っていないか?」
「手鏡ならあるけれど? これでいい?」
流石女の子お洒落さんだ……ってソレどころではなくて。
「生身っぽい! だが義眼の機能はちゃんと使えるぞ?」
???? 俺の身体はどうなったんだ?
世界が不思議で溢れてしまった。
「それで何か問題が起きたのかしら?」
「問題は……とりあずないな。謎は残っているのだが」
ちゃんと使えている以上は問題はないのだが。
一体なにがどうなっているのだか?薄気味が悪い、今更だが。
「もういいの? では……それでリオに似ている貴方に親近感を抱いて救助してみたのよ。ここまで問題ない?」
「大丈夫だ。問題ない。無問題」
「そう、外部との大々的な交流を絶っていたのは聖天至族との対立があったからで、昔は大人達が一部で交易していたそうよ」
「だけど度々の戦乱もあり大人達も死に絶えてしまい外部との交流も途絶えてしまった、というそれだけの事よ」
そして淋しげな……切なげな顔でこう呟いた。
「それに最早私達3人しかいなくなってしまったのだもの、どうしようと私の自由よ」
一部の謎は溶け、また新たな謎が増えてしまった。この俺の明日はどっちだ?
っと、上昇感が止まって周囲のうなり声のような騒音も次々と止まって行く。
「あら、リフトアップが済んだようねこのまま上に昇がるわよ。ん、動かして」
* * *
そこはまるで山頂の大展望台のようだった。沈み行く夕日が煌めき辺り一面が一望出来る。
わざわざタワーとやらを上に伸ばしてくれただけのことはある。俺は思わず子供のようにエレベーターから飛び出しその大きな展望の窓に張り付いて周囲を見渡す。
山頂から眺めると東を見れば遠く海らしき風景。沈み行く太陽で方位をみるに北西方面を見ればあれは明らかに富士山だ! ……多分。
そしてその富士山との標高差をチョチョイと簡易的だが指先で観測測量、熟考の後その観測結果を鑑みるに恐らくこの高低差から言って、この山の山頂は大体2,500m以上3,000m以下位だと思う ……って左目の機能を使えば測定くらいできるんじゃ。
……まさかこの座標から察するに……あり得るとしたらここはひょっとして山体崩落・陥没する前にあったとされる古代箱根山では無いのか?
いや、そんな馬鹿な! 余りにも信じられない現実にそんな突拍子もない考えに陥った。
なんでそんなに箱根に詳しいかというと、そもそも俺は箱根には少々思い出が……因縁があり、常人よりもいささかその手の知識に詳しいのだ。……まあちょっとした雑学の域は超えないのではあるが。
っと、いうか家もビルも畑すら見当たらない! 映画のロケには最適だな、って最近ならCG修正は当たり前か。
しかし、これってどういう事? やっはりここ現実の日本ではないのか?
例えば、事故のショックで何とタイムスリップして古代の日本に……いやいやいや、なんであれ、あんなジオフロント存在する訳がないし。……とするとパラレルワールド!
異世界!! ……実は未来とかじゃあるまいな。
箱根に天蓋を着けてシェルターにした、とか? というかタイムスリップするのも異世界へ神隠しに遭うのも落雷がデフォだ。
まあ、なんにしろタイムトラベルでも未来行きはコールドスリープを使えば現実可能な時間旅行だからな。
……もっとも、どちらにしろSFだな。
……事故の治療で何百年もたったとかじゃないだろうな。家の財力を考えると有り得るのが怖い。
なにしろ俺が息しているだけで口を出さない方がありがたいとそう考えてる連中が山のようにいるしな。
……ドッキリじゃここまでできないし、ここは仮想空間でもなさそうだ。
このまま夜になって星がみえれば幾らかわかることもだろうが。
星に願いを掛ける趣味はないので一般的な正座しか知らないが。
さすがにオリオン座や北斗七星くらいはわかるのでもし同じ正座があるようならパラレル系の異世界かなにかだろう。
無ければ時代が数千数万年単位で違っているか、まったくの異世界、あるいは違う星かも? 位は見えて来るだろう。
最もこんなにも違ってしまった様子をみるに 既にもとの世界とは違うことははっきりしているのだがな。
まあ、考えたところで最早あまり意味がないか……陽も暮れてきたしニートらしく中に帰ろう。
何か忘れている気もするが? と言うか後ろで黙って待っている人達がいたような?
− ドクン ー
振り返ったて中に帰ろうとした瞬間、心臓が激しく脈打ちおもむろにあの時の記憶が蘇る。
『異世界に転生してみないか?チートしてみたくないか?』
くっくっくっくっく。そうか、そのなのか、そういうことなのか。
あの老人が異世界転生させたのか!
神か悪魔かしれないがこの俺にチートでこの世界を蹂躙せよというのか!!
これはまさに天命である!!!
「はーっはっはっはっはっはっはあ!
ならば認めねばなるまいな、この新世界を!!
そう俺は新世界の神魔王になる!!!」
次回 4話 居候:カプセルホテル 前編
「居候三杯めにはそっとだし。居候の定番と言えばやっぱり押し入れだ」
2・3話 天蓋:童夢 終
実況見分の為に外へ出たはずが実際に外へは一歩も出ずに帰ろうとする。
これだから引き蘢りは……。
後ろでジト目で見ている人がいるような?
「本当はここから紅蓮に頼んで一っ飛びする予定だったのだけれど……陽も暮れてきたし明日にしましょうか」