25話 改竄忍者:チートホルダー
- 地下世界 シャンバラ内部:上級区画内 幹部専用通路 -
静寂が辺りを支配するなか、足音もさせずに二人の黒ずくめの男達が通路を歩いていた。
もっともせっかくの忍者特有の忍び足も、とある理由で無駄に終わっているのであるが。
通路を連れ添って歩くこの二人は戦士の部隊長である赤影と青影だが、
二人は各それぞれの己が失態から、彼らの首領であるゴーダマに叱責を受けていたのだが
それを互いに醜く、みっともなく未だに罵り合いあっているのである。
そう、誰も見ていないと思ってこの赤い仮面と青い仮面、
年甲斐もなく子供のような喧嘩をしているのだ。
「……ったから、お前のせいで余計な叱責を受けたじゃないか!」
「何を言う。お前が勝手に俺の事を笑い者にしたからじゃないか!」
「なにおう!」
「なにさ!」
「「……ふんっ」」
互いにそっぽを剥くがそのままではラチがあかないのでどちらともなく会話を再開する。
赤い仮面の赤影が、
「俺は再び出撃の用意があるんだ。何時までもお前の相手をしているほど暇じゃない」
などと言うと、
「俺だってこれから部隊の再編があるんだ。無策のお前の救援になぞ行けないぞ」
っと、青い仮面の青影が応える。
「何だと! オレさまが、またやられるとでも言うのか? 魔狼皇の恐ろしさもわからぬくせに」
「勝てるアテもなく、またやられに向かうんだから無策と言って当然だろ!
お前こそ獅子王の強さも理解できていないじゃないか」
「貴様ー! 俺の鳴る粒子砲を喰らいたいのか」
「やるのかー! 何かとリーダー面したがるが俺たちは同格だぞ!」
っと、争っている二人の間に白薔薇が投げつけられた。
が、厳しい鍛錬で鍛え上げた忍者であり、仮にも部下を引き連れる部隊長格である。
二人はさっとそれを避けた。
そこに何者かが叫ぶ。
「はっはっは、醜い争いなぞやめたまへ!」
「「何者か!」」
「ふっふっふ! 私はモーニング仮面!! 君達、待ちたまへ。争いなぞ止めるんだ」
っと、そこへ謎の白仮面が現れた。
黒ずくめの仮面という恰好は皆と同じだが、なぜかモーニングなぞを着込んでいる。
その姿を見て何か悟ったのか二人とも途端に白けた雰囲気になった。
「なんだ礼服なんか着てるからジョーの奴かと思いきや、宙太じゃ無いか!」
「ホントだ。気障な台詞で彼奴かと錯覚したが、どうした宙太? 礼服なんか着ておめかしして、何かイベントか?」
するとモーニング男は取り乱して喚き始める。
「おれは宙太なんかじゃない! 俺の名は宙だ!」
・・・・・・。
「そうか、ひろし元気か?」
「どうしたひろし? 俺達ももう子供じゃないから昔みたいに一々構ってやれないんだが」
「っく! せっかくの礼装が」
「ところでお前なんでモーニング着ているんだ? ……まあどうでもいいけど」
「地下で解りにくいがもう夜中だぞ、まったく人騒がせな。 ……さあいこうか」
と、二人とも取り憑く島もない。
「大体ニンジャが昼着のモーニングって?」
「伊達者の猿真似して気取るのはいいがTPOを考えろって言うんだよな!」
などと語り合いその場を去っていこうとする。
それを受けて怒りに震えながら絞り出すように叫びだす。
「クッ、……ハッハッハッ、ではさらばだ!」
と言うやいなや、バラ吹雪が視界を塞ぎ何事かと振り替えるとすでにその姿は掻き消えていた。
……どうやら反論を受けて去られる前に逆に離脱したようだ。
しかして、薔薇吹雪の残滓溢れる惨状を見て二人は思わず叫んだ。
「だれがここ掃除すると思っているんだ!
温厚なオレさまもしまいにゃ獣身するぞ! おら〜!!」
「今週はバツ当番でこの辺り一帯は俺達がしなきゃいけないんだぞ!
獣身に変したろか〜!」
などと喚こうと既に彼奴の姿は無いのだ。
そこで肩を落としながらも思わず呟いた。
「……しかし、奴はナニしにでてきたんだ?」
「さあ?」
一方宙の方はというと。
「 僕こそが新影の一族の正当後継者なんだ。そう……僕が一番新影流をうまく使えるんだ。一番、一番うまく使えるんだ……」
などと、こやつは逃走しながらしかも半泣きになっていた。
--豆腐メンタルである。
「……だいたい、一族きっての伊達ものを自称するジョーの奴だって
年がら年中燕尾服着てるじゃないかあれこそ夜着だろ。そうさ、俺だってモーニングの意味ぐらい知っているさ。だがな、神代の時代極東の役人だって1日中モーニング着ていたんだよ! ……愚痴愚痴」
やがて一頻りつぶやき終わったのか首領の間に着く頃には落ち着いてきたようだ。
「くっ、ここはタキシードの方がよかったのか? だがタキシードは燕尾服より格下……やはり無いな、うん。……そうだ! 俺は間違っていないぞ!! 間違ってないんだ!!!」
っと、自己を正当化し終え、勢いづくのであった。
まあ、そんなこんなで首領の間へと裏口から乗り込んだのである。
「誰だ! 無礼者!! ここを何処だと心得るか!!!」
通常であれば許されない暴挙に中から首領が怒りを顕にする。
しかしノックもせず裏口の戸をいきなり開け放って中から怒声を浴びせられるも関わらず
それを意に介さずに自分の主張を一声する宙。
「父ちゃん、俺はやるぜ!」
「馬鹿者! 宙。ここではゴーダマ様と呼べと何度も言っているだろうが」
コヤツら親子であった。
「……で、何だ? いきなり?」
「はっ、折り入って相談したい事が。実は出撃の許可を貰いたいのです」
などといきなり畏まる。
「出撃だと?」
「魔狼皇の討伐に参加したいんだ! いいだろ赤影の援護に出たいんだ」
も、すぐさま砕けた態度をとる息子。
そんな様にもたいして気にせずこちらも自然体で受け答えする父親。
親族経営の弊害である。
「あれは正確には、王女の捕獲……いや、デウスの鐘の奪取、ゴホン! いやいや奪還という崇高な目的があるのだぞ」
それでも一応体面を気にしてか息子の前で
「なにしろあれの正当な所有権は我らにこそあるのだからな」
などと取り繕いながらも威厳を出そうとする。
「大体奴と戦えるほどの力を身につけたとでもいいたいのか?
お前はまだ獣化も身につけておらず、故に初陣もまだであろう」
「モロチンだとも!」
「は?」
「……いやさ、勿論だとも!
成人の儀を執り行い、無事に力に目覚めたて一人前の戦士になったんだ!
なあ、やらせてくれよ」
それを聞いて、
「ふん、ようやく卵の殻が尻から取れたか、ヒヨッ子めが!」
息子の成長を内心喜びつつもあくまでも鷹揚な態度を取ろうとする父親心である。
「なんにせよ、俺の初陣にふさわしい獲物だからな」
などと久方ぶりの親子の会話を済ませると、
いや話が落ち着いたところでいろいろ疑問が湧いてくるゴーダマである。
「ところでなんで特注の白い仮面などをしている?
その仮面は部隊長以上の幹部の印だぞ?」
っと、今更ながらに質問してくる。
「だいたい、いつも付けてるトレードマークの頭にかけた大きなサングラスはどうした?
それにそもそもその格好はなんだ?」
と、さらにいままで放ったらかしにしていた息子を心配してか、急に父親ヅラをして何やら保護者ぶって矢継ぎ早に質問をする。
それに息子は答えて曰く、
「これは初陣のためにジョーに対抗して用意した礼服さ、格好いいだろう」
などと戯けた事を言ってきて、呆れているうちにさらに訳のわからない事を息子は言ってくる。
「それに柳生十兵衛は仮面を付けているんだろ?
サングラスだってその為にいつも身に付けていたんだ!」
っと、父に仮面を見せびらかす。
「こいつはこの俺の柳生十兵衛の字にちなんだ特注さ!
だからさ、この仮面の装着を正式に許可してくれよ、とーちゃん」
(はてそれは眼帯では? しかし右目だったか? 左目だったか?
……まあどちらでもいい、ならば仮面でよいか! なに、初陣の祝いだ)
などと内心の困惑の後、判断を半ば放棄して息子の主張をそのまま認める。
「よかろう。そこまでいうなら全て許可しよう、よし行ってこい。負けるんじゃないぞ!」
「了解! ……後、この仮面の代金の支払いもよろしく!」
などと言い捨てその場から駆け出し出陣する、ドラ息子である。
「……ばっかもーん!!!」
かくしてまた一人魔狼皇の襲撃者が増えた。
* * *
俺は今、地下通路から地上出口を経て、久方ぶりに外へとでている。
事実上、この世界に来て初の外出だ。
実は今日、どうしても新しく手に入れた道具の性能テストをしたくて
警備、警戒に出かける連中をお供に地下からの直通のコミューターで
この旧箱根山?の山中にある、かの足柄山山頂にある出口に来ている。
まあ、この世界でも足柄山と呼ぶのかは知らないが。
なにしろこの世界の箱根の山は山体崩落していないので
足柄山の山頂と言いつつも山中のちょっとした出っ張りにしか見えんからだ。
更に言うと元の世界でも正確には足柄山という単独の峰は存在しないのだがな。
……実は箱根の寄生火山であたる金時山、これを足柄山と便宜上呼んでいるのだ。
そう《鉞担いだ金太郎》で有名な足柄山とは、
金時山から足柄山地の足柄峠にかけての山々の呼称なのである。
故に足柄山とは山域の呼称であり足柄山という単独の峰は存在しない、ということになるだ。
この金時山山頂にあった大岩の上に危険を冒して登ると、
そこから北、南東、南西の3方向に尾根が伸びているのが一望できる。
まったくここから見渡す風景は格別だな。
そうして下界を見渡していると、アマゾネスの少女が下から話しかけてきた。
「えっと……そんなところは危ないよ。だからさ何時までもそんなとこにいないで早く降りて来なよ」
「大丈夫だ、問題ない」
「いや、そんな事もないと思うのだけど……」
と、言っているが実は彼女が気にしているのは彼の身の危険とかそんな事ではなかった。
実はこの男、マントの下は全裸なのでマントが風で棚引くと
後ろ姿しか見えないとは言え下から見るとえらいことになるのだ。
『あの〜マントがヒラヒラとしてお尻が色っぽいことになっているんですけど……目のやり場に困るんですけど』
訃報:マントはひらひらしていますが
別のモノはぶらぶらしています。




