23話 童話:スリーピング・ビューティー 誕生編
『茨姫-眠れる森の美女-』(いばらひめ - スリーピング・ビューティー -)
むかしむかし、あるところに子どもを欲しがっている王様とお妃様がいました。
ですが夫婦がいくら子供を欲しがっていても、子供は天からの授かり物なかなか子供はできません。
しかし毎晩の苦心の末、ようやく女の子を授かることができたのでした。
そう娘ができるまでは国王夫婦は共に気苦労の連続でした。
王族ともなると周囲の期待が特に大きいのです。
待望の姫が誕生したので国を挙げての祝宴を開くことになり、そこにその国を守護する8人の仙女が招待されるのでした。
そして待望の姫は、その誕生を祝福するように天に現れた女神アウロ-ラの幻影にちなんで仙女の長によってオーロラと名付けられました。
その祝宴では8人の仙女の為に8枚の金の箱に入った食器が用意されていましたが、ドジッ子メイドのガーベラがお皿を1枚箱ごと割ってしまい残りは7枚の食器だけとなってしまいました。
これでは8人の仙女に対して食器が1枚足りません。
そこで思わず嘆いてしまいます。
「1枚足りない〜」
この祝いの席で起きたなんとも大変な事件です。
ですが、この惨事に対しその場に颯爽と現れた仙女の長は彼女に付き添い、慌てず騒がず
「大丈夫です。この私に全て御任せあれ」
っと、落ち着いて対処していきます。 - さすがは年の功!
そこでなにやら怪しげな呪文と儀式を行い、祝宴だというのにかわいそうにも家に留守番として残されていたホームアローンな弟子と使い魔の3妖精を魔法で長の自宅からいきなり召喚します。
しかし彼女達、いきなり呼ばれてビックリ仰天かと思いきやその割には存外冷静です。
きっといつも苦労しているのでしょう。
ただ、召喚されたときなのですが、弟子は硝子の靴を無理矢理履こうとしていたり使い魔の妖精達はカボチャとネズミをつかって何やら怪しげな儀式をしていたのですがいったいアレはなんだったのでしょうか?
さらに、長は他のメイドに命じます。
「さて、これで人数はそろいました。実はこの城には宴のため賓客に供する12枚の金の皿があるので、王様に許可を貰ってそれをここに持ってきなさい」
勝手知ったる他人の我が家、伊達に長年城に通ってはいません。
さらには何気に城の侍女を使っていますが誰もそれを気にしません。
それはここに要る居住者のだれよりも長くこの城に関わってきている影の支配者であるからでありまたその結果城の内情など丸っとお見通しなのです。
そして長は、いまだ落ち着かぬメイド:ガーベラに優しく語りかけます。
「実は金の箱はもともとこの12枚の金の皿を入れるための容器だったのです。
が、貴女のご先祖達が代々壊していき残ったのはあの8セットだけになってしました」
無論そんな話を聞いては更に恐縮してしまいます。
「ですが金の皿はまだ頑丈なので未だ壊れてはいません。ただ、皿だけ残ってしまったので今まで別々に保管されて、代わりに空いた金の箱には別の皿が入っていたのです」
そして耳元でことさら優しく囁き
「だから大丈夫。金の皿なら壊れないわ、今まで何度やっても壊れなかったのだから。さあ、落ち着いて、だってこれで問題は解決したのですからね」
っと、言って落ち着かせました。
(……まあ彼女達にその事を隠していたのは金の皿まで壊されてはたまらないからなんだけど)
そこでようやく落ち着いたのか彼女は疑問を呈してきます。
「……ですがそれでも宴に招かれたお客様は追加の人数を入れても11人しかいません。ならば12枚のお皿に対し今度は1枚余ってしまいます。宴には1そろいの食器を使うのが習い事、1枚足りなくても余ってもいけません」
そして、
「大丈夫、残った1枚は主役である王女様に使ってもらいます。まあ、王女様はまだ赤ん坊ですから飾り物になりますけれど。……ええ、なにか文句がある者はこの私が黙らせますとも」
突然の事件を機転を利かせて力づく、いや鮮やかに解決する様子を見た他の仙女達はこぞって長を褒めたたえます。
「「「「「「「さすがわ お姉さま!」」」」」」」 - 以降 お姉さま
さて、一部小さな騒ぎがありましたがお姉さまの機転(お婆ちゃんの知恵袋的小技)で無事に解決され宴は無事に催されていきます。
お城の宴に招かれて、これまで留守番させられていたお姉さまの非保護者達も皆大喜び!
そして宴もたけなわ。大いに盛り上がる中、招かれた仙女達は一人ずつ王女様に魔法を用いた贈り物をしていきます。
節制 救恤 勤勉 慈悲 忍耐 謙譲 信仰 希望 勇気 正義 分別 っと、
皆並んで順に祝福を掛けていきました。
なんと使い魔の妖精まで祝福を掛けていきましたがただお姉さまの弟子だけはまだ未熟で祝福を掛ける事ができませんでした。
さすがに落ち込む弟子ですが使い魔達がそれを必死に慰めていました。
そのような微笑ましい様子が一部では繰り広げられますが、そんなところにも空気も読まない招かれざる客は突然上空からホウキに乗った魔女の集団が乱入してくるのでした。
そう、世に言う大魔女と12人のゆかいな魔女達です。
別名を人呼んで『ウィッチ-,ズ 13(サーティーン)』と言う!
突然の事に思わず取り乱した仙女の1人がお姉さまに取り縋ります。
「大変です最長老様! 大魔女メガハッ……」
うっかり口を滑らせた彼女にすかさずお姉さまがゴツンと殴りつけます。
「あら、いけない事を言うのはこの口かしら? この口かしら? 私の事はお姉さまと呼ぶように常日頃からあれほど言っているでしょ?」
さらに失言をした部下の口を引っ張りながら微笑む最長老様。 -以降 最長老様
「ふいまへn、おねーさま」
そんなコントを眺めつつそれぞれ魔法の箒に乗った魔女軍団を率いた大魔女は最長老様に語りかけてきます。
「ヒョ〜ヒョヒョッ、久しぶりだねお姉さま。相変わらず年下のワシより若々しくてうらやましいかぎりじゃぞい」
「あら? なんのこと? わたしわかんないわ?」
年増かんが……いや年も考えず、ぶりっこでかわしていく最長老。
流石に年寄りは面の皮がぶ厚い。
やはり亀の甲より年の甲か?
「とか言いながら、魔女軍団! バトルフォーム、アターック!!」
と、不意打ちで魔女達は王女目がけて突撃を仕掛けます。
敵を目前にして警戒していたにも関わらず一瞬の隙を付かれて突撃を許してしまう仙女達ですが最長老様は
「大丈夫、私にいい考えがあります」
っと、無闇矢鱈と自信気なご様子。
なにやら策が練られているようです。
そう、実は既に仙女達の祝福により王女は守られているので並の魔術では即座には効果がありません。
そこでそれを利用し王女を囮に相手の攻撃を防いだ隙に反撃を掛けようと算段をつけていたのでした。
しかし実は、魔女達は既にその事を承知していたのでした。
いえ、むしろそういう風になるよう仕向けてきたのです。
そう魔女達の攻撃はただの攻撃魔術ではなく仙女の祝福に対抗するもの、なんといきなり魔女の秘技:呪いを掛けてきたのです。
祝福と呪いは等価交換。等しい価値と力を持ち相反し合い違えるもの。
それで魔女達はホウキにしがみつき突撃した勢いのまま、すれ違い様に王女に掛けられた仙女達の祝福を呪いで次々と相殺:はぎ取っていきました。
相殺により全ての祝福を打ち砕くという暴挙にでた魔女達に対し想定外の事に即座に対処できないふがいない仙女達。
これには最長老様も困り顔。
「ん!? 対処をまちがったかな...」
まったく、いくら既に祝福で守られているとは言え王女を囮として攻撃を許すとは迂闊過ぎな作戦です。
ですが祝福は11しか無かったため12人からいる魔女達のうち1人はあぶれてしまいました。
そしてその1人ですが、最早無防備だからといってそのまま王女に止めの呪いをぶつけてしまっては、最後のとりとして控えている大魔女の面子と手柄を潰してしまいます。
故にそんな恐ろしい事はさらさらできない彼女は攻撃に加わりませんでした。
まあ、本来なら8人しか仙女はいないはずだったので 元々何人かあぶれるのは計算のうちです。
よって慌てず騒がず残った魔女はクールにその場からは去りました。
さて、敵に先手を打たれてしまった最長老ですが、魔女が1人呪いを残している事には目敏く気付いていました。
なぜなら祝福も呪いも大技なので再び使えるようになるまでにはかなりの時間が必要です。
そこで『これは何かに使える!』
っと、感じたのです。
流石姑、やはり攻撃対象に対しては微に入り細に入りケチを……
いえ、気遣いが行き届いているのです。
後手に回った最長老ですが、その時には既に配下の仙女達に対し散開していった魔女達に対し一人一殺の追撃命令を出しており、自らも早速1人仕留めに掛かりました。
そしてそれぞれのボスの指示を受けた魔女と仙女達ですがそれはもう互いに必死です。
なぜならここで無様をさらせば互いのボスに殺されてしまうからです。
そう、真の敵は目の前にいる対戦相手ではなく身内にこそあったのです。
なお、最長老様は早速魔女の1人を仕留めていました。
それは『一瞬で相対した魔女の背後に回り込むといきおい『その無防備な背中』から途中握リ締めた心臓ごと抜き手がそのまま身体を突き破り、哀れな犠牲者にその胸から飛び出した自らの心臓を突き出し見せつけるとその目前で彼女の心臓を握り潰す』という魔法使いにあるまじき力技です。
まさに凄惨にして悲惨、悲惨にして無惨なスプラッタ! です。
ですがこれには訳があるのでした。
実は高位の魔法使い達は通常その身体の周囲に多重の防御結界を張っており、
その結界で並の剣も魔法も弾いてしまうのです。
故に通常の戦闘では結界を互いに1枚1枚破りつつまた修復しつつ
相手の隙を伺うと言う地道なものになってしまいます。
そう、故に相手を倒すのにはどうしても
『一撃必殺の決め技』か『長時間の削り合い』になってしまうのです。
ならばこそ、最長老様のような相手の死角からの抜き手による直接的な
真核の破壊も有効なのでした。
しかしそんな事をしているうちにも大魔女が王女様の目の前に迫ってしまうのでした。
遂に哀れな魔女達を酷使しお膳立てを整えて、
とうとう無防備な王女の目前という晴れ舞台の場に現れた大魔女が
「エターナルブリザード:王女は16歳の誕生日、日没までに糸車で指を刺して死ぬ!」
という呪いをかけてしまいました。
すると、そこへ……
「ふっ、使ったな呪いを!!」
っと、大魔術を使ったせいで儀後硬直状態に落ちいった無防備な魔女の隙を突き最長老様がこれまた大魔女の胸に背後から大穴を穿ちます。
ですが、
「掛かったな! 阿呆が!!」ニヤリ
そう、最長老様の手は空でした。なんと大魔女の胸には心臓がありません。
実は大魔女は己の心臓を別の場所に移し隠す事ができたのでした。
「ちっ、ならば」
と、最長老さまは邪魔な大魔女を蹴飛ばし腕を抜くやいなや、次善の策を行使します。
事前に目を付けていた魔女、そう呪いをまだ掛けていない魔女の背後に瞬間的に飛び移りまたもや背後から、それも今度は延髄にその指を潜り込ませます。
つくづく背後からの不意打ちが好きな最長老様です。
その様はまるで出来の悪い悪夢の腕人形。
そして魔女を延髄操作で操り、大魔女の呪いの部分相殺に利用します。
そう、まだ魔法をかけていなかった12人目の魔女に、呪いを発動させ大魔女の呪いに上書きをさせ修正していきます。
「王女は錘が刺さり死ぬのではなく眠るだけ、100年眠るだけで目覚める。そう100年間眠りに着くだけだ」
という呪いに変えるのでした。
呪いを取り消さなかったのは最早修正以外不可能だったためでした。
そして用済みとなった道具はそのまま延髄ごと破壊し処理されるのでした。
一仕事終えた最長老はふと蹴飛ばして倒れ込んだはずの大魔女の方を向きますが
魔女の姿はすでにそこにはありません。
そうその後、姿を消した大魔女を見た者は誰もいませんでした。
事件後、最長老さまは呪いを解けきれなかった責任を感じ、(襲撃を受けたのは城の警備の不備のせい、私のせいじゃないもん)いつの日にか呪いをかならずや打ち破るために今後は人と同じように暮らしながら
王女オーロラを匿い育てることを決め、城からオーロラを連れて森の奥の家(城)に移り住むことにしました。
そう、最長老様は呪いの解消のため王女を新たな弟子にするのでした。
これが後の世に言う姫騎士の誕生である。
なお最長老様がリーダー引退のため、その未熟な弟子がニューリーダーに任命されるも年端も行かない小娘に仕切られる事になった仙女達が不満を示すか! とも思われたのですが、予想に反し皆この年下のリーダーに対して不満を抱く事無くむしろ大歓迎するのでした。
まあ、実は皆最長老様の引退に狂喜乱舞していただけなのですが。
ただ、その様子を見た際の最長老様の引退のお言葉なのですが
《お仕置きが、必要ですね……》
だったと言うことです。
その後仙女達がどうなったかはまた別の話である。
そして、15年後。
最長老様改めお師匠さまは永きに渡る修行の成果を見るため、卒業試験を兼ねた最後の試練を与える為にオーロラに糸車の宝具を授与しました。
その試練とは呪いに対抗する為あえて呪いの条件を揃え、むしろそれを打ち破るというものでした。
そう、引きつけて打つ! スイングバイにも似た方法で運命を打ち破るのです。
そこでその糸車の宝具ですが実はただの宝具ではありません。
この日の為に用意された超宝具なのです。
その超宝具の効能は眠っている潜在能力の全てを引き出すと言う素晴らしいものなのですが、それと同時に劇薬の様な過激な物でもあり命懸けの試練となります。
が、その効能を利用すれば死の眠りの代わりの100年の眠りを、更に100日に短縮する事ができるのでした。
その間無防備になるので姫は糸車の呪いで眠る前に、最後の力を振り絞って宝具の本来の機能を使用しての彼女のスキルにより鋼線の結界を張るのでした。
しかしそんな時、なんと彷徨う阿呆王子が森から迷い込んできてしまうのでした。
* * *
いや、茨姫はいろいろなバリエーションがあるとは聞いたことがあるが、
混ぜるな危険ではなかろうか?
……あっ、当然ながらもうちょっとだけ話が続くみたいだ。
- 後編へ続く




