20話 怪傑:ライオン=ハート
「ご注文の品はいかがですか?」
新月の夜……その暗闇の中、僅かな焚き火と篝火でかろうじて互いの姿が見える取引現場に
黒ずくめの荒々しい男達の集団がいた。
その中に、一人白髪に見えるほど真っ白な銀髪に周囲とは対照的な白ずくめの恰好をした白いけど腹の底は真っ黒な武器商人『サラス』はいた。
武器商人とは思えない可憐な容姿をした少女である。
彼女は夜中だというのに、いや夜中だからこそ秘密裏に武器取引を行っていたのだ。
正当な取引であるならちゃんと昼間に砦や城などに武器を納品するところであるがこの連中、脛に傷持つ連中らしく人気の無い山中、しかも夜中に取引を持ちかけてきたのだ。
まったく美容の敵である。
本来ならこのような面倒な取引相手はあまり相手にしないのであるが、これまでの取引で金払いが確かという実績もある。
また最近高級品を大量に買い上げてくれる『お得意様』でもあるので怪しげな連中であるがわざわざこのようなへんぴな場所までわざわざ出向き商品を流している。
やれやれ、武器商人の商売は大変なのである。
周囲が暗闇に包まれる中、その手元を照らす明かりがまぶしい。
「今回の目玉商品であるこのアダマンタイト製のかぎ爪はなかなかのものでしょ? まあもっともこれを装備する方にとっては、もうひとつの目玉となるこのミスリム製のショートソードもナイフ扱いなのでしょうけど」
などと引き渡し商品を説明し確認を取っていく。
「他の武器はあちらにまとめいます。ご確認いただけたら代金の方をご用意いただきたいのですが?」
そう確認を求める白い少女。
「ふん。安心しろ、ちゃんと代金なら用意している」
っと、懐からエネルゴンを取り出し見せつける、青い仮面の忍者のリーダー。
「こちらも商品を確認次第代金を支払ってやる、代金の確認のために一人見に来い」
「禄! 代金の確認よろしく」
呼ばれて彼女の部下であろう少女があたふたとやって来る。
どうやら懐から取り出したのは見せ金であるらしい。
こちらも黒ずくめの部下が代金の入っているらしいカバンを持って近寄ってくる。
* * *
そんなやり取りを近くの丘の上から眺めているもの達がいる。
「よし、いくぞ!」
「うん!」
「了解!」
そして青年は次々と印を結ぶようなポーズをとって
「獣身変」
と唱えることで、白いたてがみをなびかせた獣頭の獣人の姿なった。
獅子皇の勇者・ライオン=ハートに変身したのだ!
その横で小さな少年が人には聞こえぬ笛を吹く。
するとどこからか笛により呼び出されると、
これまた巨大な白いライオンの使役獣に乗る。
そしてその側で両拳を唸らせる少女。
そう、彼らは武器商人と謎の忍者の武器取引現場を襲撃するのであった。
* * *
引き渡しの最中いきなり謎の攻撃を受けた。
突然の閃光と爆音により、炎と衝撃が周囲に巻き起こされる。
そのどこらとも無く放たれた攻撃を身を低くして躱す武器商人。
しばらく這って物陰を探し身を屈めこそこそと逃げ回っていると彼女の護衛がサポートにくる。
「遅ーい!」
「大丈夫か? お嬢!」
これがまた全身パンパンに張った黒ずくめの格好をした色黒の筋肉達磨の真っ黒な大男が武器を片手に寄ってきた。
しかもこの男、夜中なのにサングラスをかけている。あと顎がでかい。
「止めてよシバ、もうじき三十路もせまってきたんだからお嬢って呼ばれる歳でもないし」
このお嬢、外見はどう見ても十代後半か二十歳そこそこの小娘であるが。
「俺から見ればまだまだ子供さ。だいたい前に酔っぱらって看板壊してきた事からみても まだまだ子供だろう?」
「それこそ止めてよ、大体あれは私の私物なんだし誰にも迷惑かけてないでょ?」
などと不貞腐れる。
それを聞いて真っ黒な入道雲のような大男は呆れて問い返す。
「壊した実行犯には迷惑がかかっているぞ。周囲がお前さんに気を使って勝手に雇用拒否していたそうじゃないか?」
「……別に私が頼んだわけじゃないし」
しかし、不貞腐れるとますます小娘にしか見えない。
「だから子供だと言うんだ! 自分の影響力を考えるんだな」
「……彼女達、怨んでるかな?」
「向こうが大人なら怨んでないだろうさ、それもまたビジネスの機微さ。とは言え、だいたい東西の無双を敵にまわしてどうする? 今度あったらちゃんと謝っておくんだな、お嬢!」
「ブー」
* * *
そして戦場の端に集結した武器商人一行だが、全員そろったのでこの騒ぎから脱出をはかる。
なにせ商売は終了したのだ。たとえ売り払った商品がその直後どうなろうともはや後はご勝手に、っといったところだ。
そう、代金の確認にいっていた部下が襲撃を受けた後、鑑定中だった代金をそのまま鞄を抱え込み持ち去って帰還しているのでちゃっかり代金の方は回収済みなのだ。
「それじゃあ取引は無事終了という事で! さよーならー、またの取引をー!」
などと言いながら護衛達が商品でもある高性能兵器で牽制しながらこの戦場を脱出していく。
ある意味商品に手を出しているとも言えるが売るほどあるので宣伝を兼ねている。
「見よ! この威力!! この性能!!!
ご用命の方は具足商店をご指名ください」
などと大男に抱き抱えられて逃げ出しながらもアピールしていく。
いい根性である。
もっとも、最早そんな事にかまっていられない青い仮面の改竄忍者のリーダー。
「くっ、果心居士の残党め!」
* * *
労働で汗をかいたため、今日は早めに風呂に入る。
ニートだって労働するのさ!
俺は風呂上がり、冷たい牛乳を腰に手を当てて飲み干した後、巨大な扇風機が生み出す快適な風でクールダウンしながらふと見つけた備え付けの姿見でポージングをとっていく。
なんだか興が乗ってきて様々なポーズを決めていく。
んっ〜、最近少し筋肉が付いたかな?
などとその姿を夢中になって眺めていく。
しかしそうやって遊んでいると、突然背後から扉の開く音が……。
「「「あっ」」」
* * *
私は雑用で服が少しホコリっぽくなったのでシャワーを浴びにいくと途中、廊下で双子にであった。
なんでも外の巡回警備中、突然の雨に打たれたので巡回後お風呂に入りに来たそうだ。
居候なので家主を待たせるのは忍びない、リアさんがお先に……。
っと、双子は言ってきたが寒そうだったので押し問答のすえ先に風呂に入らせた。
待っている間に風呂場の出口にあるマッサージチェアに座って備え付けの本でも読もうと腰掛ける。
するとお風呂に双子が入っていった直後、突然バイヤが風呂場から飛び出してきた。
あらやだ、先に入っていたのね。知っていれば……
そんな事を思っているとそのまま彼は脇目も振らず私の前を走り去っていったが、
その際、過ぎ去り様に、
「見られた!」
っと、つぶやき涙目で去っていった。
はて? いつも全裸の彼が、いまさら一体何を見られたというのであろうか?
彼は今日も元気です。




