02話 天蓋:ドーム 前編
注意:ハレンチ描写アリ。
前回のあらすじ
聖なる儀式のため珍しく外出したヒキニート。
だが儀式の最中、工事現場で空から降ってきたH形鋼に潰されて瀕死になる。
そこに怪しい人影が
「異世界に転生してみないか?チートしてみたくないか?なら転生させる方法はただ一言 「無念」 と口にすれば……」
「- 無念!」
その意識は、音もなく、光もなく、全くの暗闇
……深遠の深淵へと落ちていった.
やがてその意識は原初の海へと誘われていく。
そして闇の中 -
にやり っと、何かが笑った気配がした。
* * *
ふと、目覚めるとそこは光射す庭。
地面は緑で溢れかえり太陽輝く空には青空
……という訳には行かず、
木漏れ日的な光が溢れる遥かなる天井はなぜか青っぽい色に染められた天蓋だった。
「知らない天蓋だ……」
美しい風景だが、天国
……という訳でもなさそうだな
……多分。
いろいろ言いたい事はあるのだがまとめて、
そうたった一言で言い表すと
『訳が分らない』
だった。
なにがあったのか。
なんでこんな所にいるのか。
そもそもここはどこなのか?
見通せば広がる大空間。
ここはどこかの巨大なドーム施設であろうか?
いや、この様な山一つ覆いそうな巨大なドームなど
心当たりはないのだが?
さらに『ズーム』して見ると遠くに見えるその端は
山並みが取り囲み緑が茂っているようだが……
その上から先に青空が描かれている?
目算でも軽く半径数キロはあるぞ、この天蓋!
火星のドーム都市や大陸の閉鎖都市じゃあるまいし、この様なものが……。
いや京都のような盆地をドームで塞げばあるいは……
いやそれにしたってどうやって支えている?
まるでインドの伝説の地下世界シャンバラだな。
ー 後から思えば、
此の時いかにも神秘的で摩訶不思議な光景に
すっかり目を奪われなければ……
そう、普段は注意深く慎重なこの俺が
迂闊にもその接近にまったく気付かないなどという失態を犯さなければ、
後にあの様な恥ずかしめを受けなくても済んだであろうに……
今なら反省し、猛省し危険に備えていただろうに……
- 無念!
しかし、無情にもこの後狂乱が繰り広げられるのであった。
「よし、とりあえずこれを【風の断絶せし天蓋『風絶』】と呼ぼう!」
っと、ん……なんだあの影は?
鳥かな? 違うな、ヘリかな?
いやヘリならもっとパーっと風が流れるものな、じゃあ一体?
とりあえず更に望遠で拡大して見てみようか……
などと、思っているといきなり後ろから声がした。
「あっ、姉様、お客様が気付かれましたよ」
ヒャイ、誰かいた!
独り言を聞かれたか?
というより誰だ?
他に人がいたのか?
などと考えつつココロとカラダを落ち着けていく。
そして背後からの”愛らしい美少女のもの”
っと、思しき声に向かうことにする。
別に体が硬直して直ぐさま動かなかった訳ではない。
そう余裕を持って優雅に構えていただけのだ。
なに、幼い割に随分理知的で上品そうな
……そうなかなかの美声だ、などと評価していたのだ。
そんな驚愕と好奇心を持って振り向けば、そこに美少女が二人!
座っている処を見るにずっとそこにいたのね。
そしてなにより驚愕すべきは彼女達の青空?
広がる背後には……
なんと巨大な紅いピラミッド …… 赤っ!
っと、まずは彼女達を観察だ。
こちらをその可愛小さな指で指し示す、
先程の声を発していたと思しき少女。
その美しい銀髪や素肌よりもさらに真っ白なサマードレスを着た
(そう愛らくるしい天使の様な)小さな少女
(よし彼女のことは『天使ちゃん』と呼ぼう……ああっ妹にしたい)
- と、その小柄な体に見合わぬやけに大きな本を手に
優雅に読書していたその姉らしい少女。
その色白な素肌とはまた対照的な黒髪と黒いゴスロリ風のドレスが
ミステリアスな風貌(と言うかどこか少し魔女っぽい)
に映える小柄でほっそりとした体つきの少女だ。
彼女が本から目を離してこちらに向き直る。
なるほど、二人共色合が派手に違うが実の姉妹らしく
面差しが似ているような気もする。
まあ、それは兎も角。
随分と、派手な恰好と容姿だがもしかしてコスプレイヤーか?
するとやはりここはどこかのイベント会場か何かか?
確かに背後の施設はお台場の某施設に似ているが。
などという俺の思惑など関係なくパタンっと彼女は本をしまいながら、
「あら、ようやく気がついたようね」
と、こちらを見つめて鷹揚にもおもむろに語りだした。
「一応検査をして問題なさそうだったけど身体の方は大丈夫なのかしら貴方」
んんっ、検査?
そういえば……いや本当は薄々わかってはいたのだ。
寝起きにいきなりな驚愕的光景に思わず我を忘れしまい……
いや、あれほどの大怪我だったというのに
まったく痛みが無かった為にすぐには気付かなかっただけだが。
(さらに言えば、今もあのときの事故はよくは思い出せないのだが)
あの大怪我がこの身体にはまったくない。
今にして思えば、あの出来事はまるで覚めない夢を見ていたようだ
……いや今こそが夢の中なのか?
っと言うか
……気がつけば全裸
いやレディの目の前だというのに何故だか裸の上にマントを纏っているだけの状態だ。
……まずい、紳士の有り様としては致命的だ。
………………パンツ履いてないよ!
いや~、やけにスースーするとは思ったのだがな。
検査と聞いて検査服を着ているかと誤解したのだが、
よく見れば裸マントという有様だよ、まったく。
しかし、裸マントとは……なんだ、この淫猥な響き。
いやいや、これではまるでこの私が変質者のようではないか!
古典の昔から『裸マントが許されるのは賢者と吸血鬼だけ』!
そう、そうだと決まっているというのに。
……ああ、あと眼鏡と靴は別口ね。
なんだろう一体全体おれはなぜこんな恰好をしているのか?
このマントとメガネ、俺の愛用のモノに良く似てはいるが別物なんだが?
さりとて、まあいろいろと思うところはあるが。
それよりなにより、どうやら助けてくれたのは彼女達の用だ。
まずは慌てず騒がずゆっくりと、ちゃんと彼女達に礼を述べておかなくては。
全てはそれからだ。
「ああ、問題ないようだ。それで君達はここの人?
君達が助けてくれたのかな? 礼を言わなくちゃな、
それに君達は一体どういう……?」
……ああ、いきなり出だしで躓いた。
何と言う不躾な物言いだ。
そもそも”君達、君達”ってなにさ!
もっとうまい言いようが他にもあるだろ。
コミュ力が低いにも程があるだろ。 ガクッ
思わずうずくまって泣いていそうになった。
だが、そんな俺の内心など彼女は気にした風でもなく
彼女は素直に答えてくれた。
だが……
「私の名はテリアス、そしてこの子は私の小さい方の妹のリティール」
と、名乗ってくれた。
そしてふと首を傾げ、
「……それで貴方は?」
しまった。こちらから名乗るのも忘れていた。
しかし、そんな風におたおたとしていると
「なんなら”ヒョロメガネ”でいいのかしら?」
なっどと、のたまわってくれたのだ。
うっ、ヒョロメガネとはあまりな言いよう。皮肉か?
だが名を尋ねる前に名乗らなかったのはこちらの落ち度。
その行為甘んじてうけよう。
「うぉっほん。いや、こちらから名乗らずにこれは失礼!
申し遅れました。……我が名は松竹梅夜、
【梅咲く夜の 『梅夜』 】と申す。以後お見知り置きをば」
バサッとマントを翻しそうになる。
ってヤバいこの下裸だったんだ。
気を付けなくては。
「そう、では松竹さん?」
「梅夜と呼んでくれてけっこう」
「ではバイヤ。こちらから2.3質問してもいいかしら?」
「ああ、無論いいですとも。何なりとお答えしましょう!」
ふっ、レディファーストと言ったところか。俺は紳士だからな。
「ええ、そうなら少し待って貰えるかしら? 合わせたい子達がいるのよ」
そう言うと、徐に彼女は虚空に向かって呼びかけた。
合わせたい”娘” ……またもや美少女が出てくるのかな?
ワクテカだなぁ ……なんて、別に思っていないからな! (ソワソワ
「おいで!」
すると突然目の前に謎の……そう、人間大の円盤が複数現れ迫って来た!
なんだ? 真っ赤な丸鋸のお化けか?
「君達が合わせたい娘~!?」
可愛い女の子かと思いきや謎の金属塊!
あまりの出来事に思わず身構えてしまったのも無理は無かった。
無かったンんだぞ!
だから思わず、
「どっひゃー」
とか、言ってしまったとしても仕方ないよね!
誰だってびっくりだよね!
そしてそれはそのまま横倒しになったかと思うと、
なんか凄い勢いで”グウィングゥイン”と回転しながら
”ワシャワシャ”と小さな無数の極薄板がスライドして行きその形を変えていく。
そして同時に”キンキン”、”キュインキュイン”と、
甲高い金属音を起てながら何かが組み上がっていく。
……こいつ、段々と人形っぽくなっていくぞ。
しかし、やはりと言うかいきなりそんな様をみせられれば
今度も誰だって、
「うっひゃー」
とか言ってしまうのも無理ないだろうから。
そうだ! 私は悪く無い!
そうさ、これも誰だって驚くだろう?
なあ、おい!
そしてそんな俺のあり様を見て、彼女は呑気にこうのたまわった。
「まあ、この本に書いてある通りだわ!」
と、感心したように言う。
「人は驚くと本当に
『どっひゃー』とか
『うっひゃー』とか
言うのね」
本に書いてって……いやまあそのなんだ。
ここはとりあえず、
「まあな! ……それで質問とは一体?」
と、だけ言っておこう。
決して俺が情けないからでも気まずいからそれをごまかそうとか、
そんな事考えている訳じゃないからな。
「驚かせたようでごめんなさい」
などと一応しおらしい事を言う。
「それで本題にはいるのだけれどもいいかしら」
「ああ」
「この子達『紅蓮』が貴方を拾ってきた時の事なんだけれども……」
「紅蓮? このロボっぽい連中の名か?」
この連中、よく見なくてもとんでもなく
高度な技術の塊であることはわかる。
微細分子機械とか、
高分子積層複合型板状構造の変成分子結晶体とかそんなちゃちなものじゃない。
三友の重工業部門でも
ライバル社の高砂重工他どのメーカーでもこんな高度な物、
研究施設での検証実験ですら行われていないぞ?
こいつは一体何モノだ?
っと、熟考している場合じゃなかった。
「ええ紅蓮はその子達の一族の名よ」
「一族? 種族? ……ひょっとしてこの連中生きているのか?」
「ええ、そう私達のパートナーであり守護者である存在」
そしてやさしげに、
「だからこの子達は怖く無いわよ、安心して」
……別に怖がっている訳じゃない。
イヌですら突然現れて戯れ付いてきたらビックリするだろ、これはそれだけの話だ!
っというかこんなの摩訶不思議ファンタジーすぎるだろ?
だから、けっしてビビっていた訳ではないのである。
ウォッホン。
とりあえず仕切り直しといこうか。
「まず、その前に疑問が幾つも湧いてきたので、
こちらからも確認したい重要な質問があるのだがいいかな?」
っと、一応確認をとる。
「ええ、何なりとお答えしましょう」
「ではまず第一の質問だが……」
そうこれは重要な質問である。
「助けてくれたことには感謝する。だが、俺はなぜ服を着ていないんだ?」
不思議な現象より優先事項だ。
気がつくとなぜだか知らんが女の子の前で裸に剥かれていた。
そんな事なんだかカッコ悪いじゃないか!
例えば治療かなにかで脱がしたのかな? それならまあいいんだ。
治療ならしかたないとなっと納得できるし。
……というか俺の服はどこだ?
「いいえ、ここに運び込まれた時には貴方は既に裸で倒れていたわ」
そして小首を傾げながら、
「何? そう言う趣味じゃないの? ちゃんとマントは着けていたし?」
「そんな趣味ないわい!」
っと、思わず返してしまった。
いかんいかん。
「おっほん、一体どういった状況で助け出されたのか聞きたいのだが?」
「いいわよ、そもそもその事でこちらも確認したかったのだから」
「……なんでも巡回中の警備隊が巨大スライムを発見したのだけど」
スライムとな、いるんだ!
「その巨大スライムの中に不審な人影がいたのを発見してね」
もしかして……
「それで確認のため駆けつけるとそのスライムが蠢いて
彼らの目の前で人間を吐き出したのだそうよ」
「つまりそれが……俺なのか?」
「ええ、そして貴方を唐突に吐き出すとそのままいなくなったのだそうよ」
っと、そこでなにか気付いたように言う。
「……ひょっとしたら服はその時にスライムに溶かされたのかもね」
溶か……!
「あのセーターはカシミア製でお気に入りだったんだぞ!!」
っと、んん、ゴホン。
「失礼……まあビキューナの方でなくて助かったが」
と、いかん、いかん。落ち着くんだ。そうだ、クールになれ。
こんな時は素数を……は、要らないか。
というか巨大スライムってなんなんだ?
だが、やはり、ここは……
って、いや情報が少ないのに推測なぞ無意味。
まずは確認が先だ。
よし、落ち着いたところな。
さて、当面の最重要課題を解決しなくては。
「そう……だったのか。だがまあなんだ」
そう、重大な案件があるのです。
「助けてもらった上にこのような事を言うのはやはり図々しいとは思うのだが」
っと、もじもじしながら言ってみる。
「なにか着替えはないのかな? 流石にこのままの格好では問題があろう」
やはり、恥ずかしい。
すると、
「あいにく男物の服なんて既にここにはないけど」
と、無慈悲な回答が帰ってくる。
その答えに、おチンコ出て……(いや間違ってはいないな)落ち込んでいると
「……なんなら、私の着替えを貸しましょうか?」
っと、提案して来た。
ここには女物の服しかないようであった。
素敵な黒い色はともかくそのフリフリのゴスロリっぽいドレスは流石にいろいろ無理だろ!
まあ、ウエストは入りそうだがな!
……だがそれを指摘するのはなぜか不味い気がするので
スルーする。
「いや、このままで結構だ。……何、前を閉じていれば問題ない!」
っと、いつものように思わずまたマントを”ばさーっ”と広げてしまった。
すると、ちょうど目の前に? 天使ちゃんがいた。
小さくて大人しいので視界に入っていなかった。
不注意であったな、うん。
……いやん、まいっちんぐ。なんつって。
しかしなんだ彼女はなぜだかこちらを、
そう目の前にあるモノをジーッと見てらっしゃる。
……淑女たるもの慎みを持たなくてはいけませんことよ。
とか何とか思っていると徐に、
「……姉様、どうしてこの方はオマタに芋虫が付いていいるのでしょうか?」
などと言ってきた。
「もしかしてなにかの病気なのでしょうか?」
病気じゃないよ!
「でしたらさっそく治療しなくては……これはしゅじゅつの必要があるのでしょうか?」
などとビックリ発言が飛び出しました。
だがこれは子供の言う事……そう子供の言う事だ。
ちゃんと大人としての対応をしなくては!
「いや、あのね、お嬢ちゃん。これは病気ではなく、
その所謂一つの男女の性差っと言うやつでして」
「セーサ?」
「……そもそもこれは男の子なら誰でも付いているもので」
「おとこのこ!?」
「寧ろ無いと男じゃない訳と言う事になる訳でって今までに見たことないのかな?」
って、この様子じゃ無いのだろな。
……そういや手術とか言ってたな。ならば、
「……あと大切な所だからね、
寝てる間にとかに絶対に切り落としたりしちゃダメだよ!
絶対にだよ!!
いいね!!!
これは君とお兄さんとの約束だ!」
「???」
なんとか言い含めようとするものの、
まだ小さくてよく解らないようだ。
……俺もこれ以上何と言っていいのか解らん。
駄菓子菓子、こんなところ世間様に見られてしまったら
ポリスメンに通報されれタイーホされてしまう。
早く何とかしないと。
悩みながらも天使ちゃんは何とか理解しようとしてくれている。
「……そうなのですか? これがおとこのこ?」
……ジーッ。
「あっ、たいへんです姉様。
見る見る間にどんどんと大きくなっていきます」
っと、カワイイおめめをまん丸にして見つめながら、
「芋虫から蛹になっていきます。
それに先っちょが痛々しく膨らんであんなに真っ赤に
……腫れているのですか?
擦った方がいいのでしょうか?」
っと解説までしてくださる。
どんなご褒美ですか?
って、どわあ〜ああっ、恥ずかしい!
いちいち説明しないで!
思わず死にたくなる!!
益々大きくなっちゃう!!!
ああ、子供相手とはいえこんなかわいい娘に見つめられると思うと……
つい意識して反応してしまった。
バカバカバカ 俺の馬鹿!
……俺にそんな趣味はないはずなのに……多分。
これも若さゆえの過ちだな。
なにせ風が股間を吹き抜けただけで反応してしまうお年頃だ。
それもやむを得まい。
……さりとて、ここは一つちゃんと誤解を解いておかねば!
「いや、その、そう違うんだ!
あと、いちいち解説しないでいいから!
って触っちゃラメ〜え!
益々益荒男が増していく。
……いや、
これは、
あの、
その、
この、
これは所謂一つの生理現象というかなんというか!!
別に幼女に見つめられて思わず欲情したとか
そういう訳では決してなくてね!!!
つまりは……ああ、見ないで!
そんな純真な目で、汚らわしい俺のを見ないで~!」
言い訳でも弁解でもない。
これはあくまで、
そうこれはあくまで正当な説明をしているだけなのだが訳が解らず戸惑う少女。
するとそんな有様を見てもまるで気にせず、
更にこともなげに俺の代わりに答える姉様とやら。
「そうね、この本によると擦ると膿みが出て萎むそうよ」
っと、得意げに知識を披露してくる。
なんて事言うんや!
「間違いないわ。なにしろ先程倒れていた時にも、
この本に書いてある通りちゃんとテントを張っていたようだしね」
って、見てたのね!
「ほら、この本に
『歳若い男、そう若者は
朝目覚めの時には股間にテントを張っているものである。
なぜならそれが若さの特権なのだ!』
っと、しっかり書いてあるわ。
……なら間違いないでしょう!」
「男の人……」
不思議そうな顔で呟く天使ちゃん。
やがて何かが繋がって納得したという風に発言する。
「……そうですか!
この方がお父さまと同じ『男性』と言うものなのですねっ」
そんなまるでヘレン=ケラーの「ウォーター」みたいに言われても……
いや、どこまで本気なのか?
そもそも、その様な発言は
幼少期のデリケートな少女の情操教育に悪いぞ。
それに俺の為にも可能な限り控えて頂きたいものなのだが。
というか、その本なんてこと書いてあるんだよ!
そんな本読むのは止めてポイしちゃいなさい。
すると、そんな姉の発言に対し、
純真可憐なこの少女はまさに天使のようなやさしさで
「擦ると……」
なるキーワードを真面目に考え込んでしまったのか、
更にとんでもない爆弾発言を投下して下さった。
「膿みがでるならお口で吸い出した方がよいのでしょうか?」
トンデモ発言、頂きました!
へんたい! ……いやたいへん!
君みたいな可愛い子にそんな事言われたら、俺は、俺はモー……
「……たいへんです、ますます膨らんでとっても痛そうです!」
っと、それを見て驚いている。
そこで慌てて近寄って……
「だいじょうぶですか?
痛くありませんか?
さっそく吸い出しますか?」
いや、もう堪忍して〜
「大丈夫! 大丈夫だから!!」
それ以上とんでもないこと言わないで!!!
ってだから触っちゃダメ~!
- 爆発しちゃう〜!
そのようなやり取りの間にさらに追い打ちがきた。
「あと胸のあいだに挟み込むのも効果的らしいけど、
生憎と私はそこまで大きくないし貴女は言わずものかな」
そうして憂いを帯びた表情で言ってくる。
「残念ね、折角ためしてみるいい機会だったのに」
それは、それは残念ではありますが……
最早このタフボーイのこの俺も最早うずくまって耐えるしかなかった。
今まで恥の多い人生を歩んでいたが、
ここまで興奮する……もとい、凹むことは今までに無い経験である。
……別に照れても喜んでも期待してもいないぞ!
ホントだぞ!!
だいたい、そう、この女にも責任がある。
恩人とは言え最早文句の一つも言わずにはいられない。
「なんて事小さな妹の前で言うんだよ!」
っと、びしっと言ってやった。
「乙女としての恥じらいは無いのか?
……と言うかあんたも男を実際に見たこのないのか?」
そう言うと彼女は、
「ええ、私も実物の男性は初めてみる
……と、いうか一族以外の人間とあったのも初めてね」
などと言ってくる。
「亡くなったお父様のお顔も最早よく覚えていないし」
「マジですか?」
「ええ、もうここには男というものは生き残ってはいないのだから」
「…………」
「お母様も亡くなられて、最早一族の生き残りは私達三姉妹だけなのよ」
思わぬ騒ぎから思わぬ事実が飛び出してきた。
っていうかやはりここは……この世界は!?
次回 3話 天蓋:ドーム 後編
「ところでココは一体なんなのだ? あと一族って?」
「ここは『箱庭の根の国』山岳の中にある我ら『堕天死族』の
生き残りの住まう隠れ里」
この男質問に答えると言いながらちっとも答えない上に逆に質問ばかりしたうえ脱線しまくりである。
コミュ力が低いなんてもんじゃない。