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6 居候が来た日

 その日は、突然やってきました。

 何の前触れもなく……いえ、めいとさんは朝から何かを感じていました。


「メイドぉー、お腹空いたぁー。昼飯ぃ」

「・・・」

「メイドぉー?」


 スー、キキキ……。


「はい、五月様」

「なんだ、部屋にいたのか……って何、その顔!」

「朝ご飯の食べ過ぎでしょうか……」

「そんなに食べてたか? いつもとおんなじだったぞ」

「申し訳ございません。お昼はおうどんでも茹でて、ひとりでお召し上がりください」

「気持ち悪いか? 風邪か? 熱は? 医者行くか?」

「大したことございません。ちょっと悪寒が……気分がすぐれないのでございます」

「そうか、ならゆっくり休んでろ」

「申し訳ありません……」


 スー、キキ……パタン。


「ホントに大したことなければいいが……」


 五月先生、ちょっと心配そうです。

 言われた通り、うどんを茹でてひとりで食べていると、突然やってきました。


 ピンポーン……。


「はい」

「よう、めいと、来たぞぉー!」

「どちら様?」

「あ、五月先生、ヒロシです。ヒ・ロ・シ」

「やあ、ヒロシくん」

「お久しぶりっす、先生」

「あ……悪寒」

「おかん?」

「い、いやなんでもない。よく来たね、いらっしゃい……って、でっかい荷物!」

「お邪魔しまーす」

「りょ、旅行中?」


 大きな大きな荷物を携えて、めいとさんの天敵、いえ、幼馴染みがやってきたのです。

 めいとさんの悪寒は、最悪事態の予感でした。


「メイド、ちょっと顔出せ」


 スー、キキ……。


「よう、めいと。久しぶり」

「げっ、ヒロシ!」


 スー、キキ……パタン。


「なんだよ!」

「ちょっと、具合が悪いようなんだ」

「鬼の霍乱かくらんですか?」

「いや、君の来訪かな」

「ん?」

「一泊二千円な」

「・・・」

「東京へは何しに?」

「五月先生、しばらくここにおいてください。助手として雇ってください」


 スー、ギギギ……バタンッ!


「ダメです!」

「メイド、治った?」

「ぜーったいダメです!」

「・・・」

「・・・」


 突然出てきて叫ぶめいとさんに、ふたりはたじたじです。

 ま、めいとさんの反応、当然と言えば当然です。



 ここで、なぜヒロシが東京へやって来たかを説明しておきましょう。


 ヒロシの実家は農家です。

 農業学校の実習のために、半年間生徒を住み込みで請け負うことになりました。

 (注:実際には、そのような実習はないと思われます)

 ヒロシの家に来たのは、男女合わせて五人。

 住み込みですから、農作業だけでなく家事も分担して行います。

 勉強のために来ていますから、みんな一生懸命働いてくれます。

 で、ヒロシの仕事が無くなって、居場所が無くなって、出てきたと……。


 トゥルルル……、トゥルルル……。


「はい、もしもし」

「あ、ヒロシの母様? めいとです」

「あら、めいとちゃん。久しぶり」

「ヒロシが来ました!」

「あ、もうそっちに着いた? そういうことだから、しばらくお願いね」


 ガチャン、プープープー……。


「・・・」


 うーん、ヒロシのお袋さんもこんな感じなんです。

 子供の頃から、めいとさんは気づいていました。

 故郷の人たちは、あまり細かいことを気にしない。

 だいたいが、無頓着だと……。


 ははは……。

 めいとさん、ファイトです。

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