表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

19 メイドの尾行

 めいとさん、マサトさんの尾行のことを五月先生に相談しました。


「かくかくしかじか……なのでございます」

「ほぉ、いいにおいをねぇ……」

「五月様、どういたしましょう」

「そういえば、最近うちの洗濯物もいいにおいがするようになったぞ」

「はい。柔軟剤を新しいのにしてみました」

「なんか甘ったるい。も少しさり気ないのはないのか?」

「だめでございます。最近五月様のたいしゅ……いえ、今はマサト様のお話です」

「たいしゅ?」

「そこは流してくださいませ」


 そう、五月先生もそんなお年頃。

 めいとさんの心遣いをわかってあげてください。


「わたくしは、カオル様が思うようなことはないのと思うのですが……」

「で、メイドがマサトさんの尾行をすると」

「なになに? めいとがマサトさんの尾行?」

「ヒ、ヒロシ……いつの間に」

「面白いことになってるじゃん。俺も混ぜて」

「ヒロシくん、盗み聞きはいけませんよ」

「五月先生、仲間外れはずるいですよ」

「だめです。ヒロシが関わると話がややこしくなります」

「私もそう思う」

「マサト様は真面目でお優しい方です。そんな方が良からぬことなどいたしません」

「そういう人こそ、大きく道を外すってこともある」

「へっ?」

「ほら、ヒロシくん、話ややこしくしてますよ」

「俺も一緒に尾行する!」

「五月様、こやつ、人の話まったく聞いてないです」

「うむ。小説のネタとしては面白いが、ま、ありきたりだな」

「五月様まで……」

「尾行して何もないとわかれば、カオルさんも落ち着くだろう。協力しておあげなさい」


 五月家は半分楽しんでます。

 困った人たちですが、カオルさんには一大事。

 めいとさんは尾行を決意し、カオルさんから言われた決行日を迎えました。。



「それでは五月様、行ってまいります」

「ん。行っといで」

「俺も行きたい!」

「ヒロシくんはお留守番」

「めいと、上手くやれよ」


 パタン……。


「にしても、似合わない格好でしたね。オレのキャップ帽なんてブカブカで」

「あれは絶対バレるな。逆に怪しいやつになってる」


 めいとさん、今日だけはメイド服というわけにはいきません。

 履き慣れないパンツにジャンパー、帽子とメガネで変装しました。

 街に出てしまえば、誰がどんな服装をしているかなんて、気にする人は少ないです。

 めいとさんのメイド服を見慣れた人じゃなければ、意外と怪しまないかもしれません。


〈えっと、マサト様の会社はバスで駅まで行って、地下鉄に乗り換えて三駅目、と。それから歩いて十分くらい、と〉


「おや? あれメイドさんじゃない?」

「ん? どこ?」

「あの、帽子被ってる……」

「まさか、メイドさんがあんな格好するか」

「そうだね。他人の空似だわ」


 おっと、一安心。

 八百屋さんには何とかバレませんでしたよ。

 バスに乗ってしまえば、めいとさんを知っている人もそうそういません。

 無事にマサトさんの会社までたどり着き、さあ、これからが本番です。

 なぜ今日になったかというと、今夜はマサトさんの帰りが遅いからです。

 カオルさんの情報によると、会社のお得意先の人と打合せがあるそうです。

 六時過ぎに会社を出て、先方の会社へ出向くということです。

 めいとさんはその時間に会社の前で待ちぶせし、尾行開始です。


〈マサト様、まだ出てきてないですよね。すれ違ってしまったら終わりです。見逃さないようにしっかり見ていなくてわ、です〉


 めいとさん、道を挟んで反対側の歩道、電柱に隠れて出入口をのぞいています。

 時々、メガネがずれて落ちそうになるのを人差し指で直しています。

 前が見えにくくなるので、帽子のつばは後ろに回しました。

 先ほどはあんなこと言いましたが、充分怪しい人になってます。


〈あ、人がたくさん出てきました。あの中にマサト様いらっしゃるのでしょうか……〉


 みんな同じようなスーツを着て、同じような髪型をしていて、見分けがつきません。


〈ダメです。メガネが邪魔でよく見えません。も少し近くに行きましょ〉


 めいとさん、出入口から目を離さないまま、横断歩道を渡ります。

 と、反対側からマサトさんが……。

 メガネを外してしまい、つばの無い帽子で、めいとさんの顔はバレバレです。

 しかもめいとさん、マサトさんと目が合ってしまいました。


「おや? めいとちゃんじゃないか。こんなところでどうしたの?」

「あ、は、あ、その、五月様のお使いで……」

「ああ、近くに出版社があるから。じゃ、気をつけて」

「あ、は、はい……あ、えっと、もうお帰りですか?」

「いや、これからお得意先と打合せ」

「そ、そうでございますか。ご主人様もお気をつけて……」


 はい、めいとさんの尾行しゅーりょー。


〈お、奥様に叱られる……〉


〈めいとちゃん、珍しい格好してたな。メイド服の方が断然似合うのに……〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ