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18 チクチク愛糸

 皆様、覚えていらっしゃいますか?

 カオルさんがソーイングモンスターと化したこと。

 めいとさんが、着せ替え人形さながらに写真を撮られたこと。

 それはそれは大変でしたが、カオルさんは三週間で飽きたのでした。

 カオルさん、裁縫の腕はプロ並みです。

 家中いたるところに、手作りされたものが置かれています。

 クッションにテーブルクロス、ティーコゼにコースター。

 ランチョンマット、玄関マット、ベッドカバーまで、そこかしこです。

 そんなカオルさんに、めいとさんはパッチワークを教わっています。


 チクチク、チクチク……。


「めいとちゃん上手になったわね」

「そうでございますか?」

「ええ。針で指を刺すこともなくなったし」

「えへへ、奥様のおかげでございます」

「それは何を作っているの?」

「巾着のポーチでございます」

「そう、出来上がりが楽しみね」

「あい」

「今度手芸専門店が新装開店するのよ。一緒に行ってみましょ」

「あい、奥様」



 ということで、カオルさんとめいとさん、手芸屋さんにやってきました。

 オープンセールもやっていて、お客様がたくさんです。


「それだけ、手作りしている人が多いということでごさいますね」

「そういうこと。私も新しい生地買おうかしら」

「わたくしも」


 カオルさんとめいとさん、たっぷり一時間をかけてお買い物しました。

 生地だけでなく、縫い糸に刺繍糸、キルト芯やファスナーなども買いました。


「めいとちゃん、それで何作るの?」

「そうでございますね。まずは五月様のクッションカバー作ります」

「いいわね」

「奥様は何を作られますか?」

「そうね、テーブルクロスをおニューにしようかしら」

「それで、春らしくピンクのなのでございますね」

「ふふふ。自分で手作りしたものを、ネット販売している人も多いのよ」

「そうなのでございますか?」

「私も出したことあるのよ」

「売れましたか?」

「何点かね。サトルの子育てが大変になってきてやめちゃったけど」

「わたくしにもできますか?」

「誰だって、登録さえすればできるわよ」

「いえ、わたくしパソコンが苦手で……」

「心配ないわよ。素敵な作品がたくさんあって、お買い物もできるわよ」

「そうですか。わからなくなったら五月様に聞いてみましょう」

「人気になるといいわね」

「五月様の小説より売れてしまったらどうしましょう」

「めいとちゃん、それはだめよ。あくまでも趣味の一環にしておいた方がいいと思うわ」

「そうでございますね。五月様にへそを曲げられたら困ります」

「めいとちゃん……」


 こうしてめいとさん、早速サイトをチェックです。

 検索してみると、手作り品の販売サイト、結構あるのですね。

 なんとかひとりで登録はできました。


〈売上を受け取るための銀行口座を新しく作った方がよいようです。明日作りにいきましょう。一日何個くらい作れるでしょう? 五月様と朝霧家のお仕事の合間ですから、そんなにたくさんは作れないですよね。でも、月々これくらい売れれば……〉


 めいとさん、それじゃ捕らぬ狸のなんとやらですよ。

 先ずは、作品作らなくちゃ始まらないのですからね。


「先生、最近めいとのやつ、やたらと自分の部屋にこもってないですか?」

「なんか楽しそうにしてるから、いいんじゃないかな」

「先生、めいとに甘いですよ」

「そうか?」

「俺の仕事がちょっとずつ増えている気がするんですけど……」

「まぁまぁ、いいじゃないか」

「ほら、やっぱり甘いです」

「んんー、あんまりぶつくさ言って、へそを曲げられると困るしな」

「先生……」


 チクチク、チクチク……。


〈材料費がこれくらいで、わたくしの縫製はあんまり欲張ってはダメですよね。お値段はこれくらいでしょうか。最初の売上で、五月様には新しいマウスパットをプレゼントしましょう。ヒロシには……ポテチでいいですかね〉


 めいとさん、けなげですね。

 自分のことよりも、まずは五月先生のことを考えています。



「そう、ネット販売始めることにしたのね」

「はい、奥様」

「で、名前はどうするの?」

「名前でございますか?」

「販売者の名前よ」

「あ……決めてないです……」

「愛糸っていいじゃない?」

「まんまです」

「糸を愛する。ピッタリよ」


 こうしてめいとさん、着々と準備を整えています。

 近々、手作り作品のネット販売が始まりそうですよ。

 人気が出るといいですね。


「あ、そうそう。マサトさんの尾行の日、決めたから」

「え、ええ?」


 その話、続いてましたか……。

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