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17 女の勘は鋭い

 グラグラグラ、ブシュー……。


「お、奥様、お鍋噴いてます!」

「あらやだ、ごめんなさい。またやっちゃった」

「お体の具合でも悪いのでございますか?」

「そんなことないわよ。元気元気!」

「でも……」

「大丈夫。何でもないの」


 と言われても、ちょっと信じ難いですよね。

 めいとさん、最近カオルさんの様子がおかしいと感じていました。

 それは、サトルくんも同じのようです。


「ねぇめいと、ママの様子変じゃない?」

「サトル様も気づいておられましたか」

「うん。話しかけても返事しないときある」

「そうですか。時々ぼーっとなさるのですよね」

「うん」

「同じ所を何度もフキンで拭いていたり、ハーブティをじっと眺めていたり」

「風邪でも引いたのかな?」

「違うと思いますよ。何か、心配事がおありな感じです」


 ほうほう、めいとさん、珍しく勘が冴えてます。

 でも、カオルさんが何を心配しているまでは、わからないですよね。


「ぼくのテストの点が上がらないからかな?」

「違うと思いますよ。サトル様、算数頑張っていらっしゃいます」

「うん……」

「それに、サトル様の成績はそんなに悪くはございません」

「ホント? ぼくのことじゃない?」

「ええ、違うと思いますよ」

「じゃあ何だろう?」

「何でしょうねえ?」


 めいとさんがいない日、カオルさんはさらにひどいのです。

 お昼も食べずに、ソファーでため息ばかりついています。

 アルバムを出してきては、閉じたり開いたり。

 そして、ため息。

 ハーブティを煎れたのに、結局飲まなかったり。

 そして、ため息。

 まさか、この生活が嫌になってしまったのではないですよね?



「奥様、何か心配事がおありですか?」

「えっ?」

「話してしまわれたら、すっきりするかもしれませんよ」

「……」

「わたくしで良ければ、ですが……」

「……」

「何でもお聞きいたします」

「……」


 カオルさん、なかなか話し出しません。

 めいとさんも、それ以上突っ込みはしませんでした。

 そして、数日後のことです。


「ねぇ、めいとちゃん、マサトさんのことどう思う?」

「ご主人様のことですか?」

「そう。どう思う?」

「どう思うと言われましても……」


〈マサト様は見た目もシュッと格好良くって、お優しくて真面目な方です。五月様と比べたら、殿方としてもポイントは高いですよね。五月様のだらしなさもほっとけなくって、こう、母性本能をくすぐられるというか……〉


 めいとさんめいとさん、何か勘違いしてませんか?


〈ヒロシは論外です。だからって五月様っていうのは安易ですよね。でも、マサト様はカオル様の旦那様ですし……〉


 だから、勘違いですって。

 え? めいとさん、五月様のこと、まんざらでもないんですか?

 ええ? 主従漫才ならぬ、主従恋愛ってことですか?


「あの人、最近怪しいのよ」

「怪しい、でございますか?」

「そう、帰宅は遅いし、出張も増えたし」

「お仕事がお忙しいのでございますね」

「それだけじゃないと思うの。最近いいにおいさせて帰ってくるのよ」

「いいにおいでございますか?」

「そう。女性用の香水みたいな」


 カオルさん、どうやらマサトさんが良からぬことをしていると疑っているようです。

 いわゆる女の勘ってやつですね。


「ご主人様に限ってそんなことは無いと思いますけれど……」

「男なんてわかんないわよ。仕事って言っとけば何でもありって思ってるのよ」

「そうなのですか?」

「五月先生だって……」

「五月様は無いと思いますです。ほとんど家にいらっしゃいますから」

「それもそうねぇ。とにかく、マサトさんは怪しいの!」

「はあ……」

「突き止めてやるわ!」


 突き止めるってカオルさん、どうするおつもりでしょう。

 まさか会社に乗り込むわけにもいきませんよ?

 ストレートに聞くのですか?


「めいとちゃん!」

「は、はい!」

「あの人のこと尾行して!」


 え、ええ? 

 カオルさん、とんでもないこと思いつきました。

 めいとさんに尾行なんて、できますかね?

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