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16 サトルの遠足

 サトルくんとめいとさん、スーパーにお買い物に来ています。

 来週、サトルくんが学校で遠足に行くので、その買い出しです。


「ねぇ、めいとまだ? 早くお菓子選びにいこうよ」

「もうちょっと待ってください。今日は特売日なので、も少し調味料を……」

「んあー、お菓子買いに来たのにぃー」

「マヨネーズとケチャップと。んー、重いけどお醤油も買っときますかね」


 めいとさんは特売日好きです。

 ま、それはめいとさんだけじゃないでしょうが。

 店内はいつにも増して、主婦の方が多いです。


「あ、トイレットベーパーも買いましょう。サトル様、二階に行きま……って、いないです」


 サトルくん、どうやらひとりでお菓子売り場へ行ってしまったようです。


「……大丈夫でしょう。トイレットベーパーとってこよ」


 サトルくん、もう小学四年生です。

 さすがに、迷子にはならないでしょう。


「どれにしようかな。チョコに、ポテチに、あー、バームクーヘンも捨てがたいな」

「よう、サトルじゃないか」


 声をかけてきたのは、サトルくんのクラスメイトの鈴来くんです。


「あ、スズキも来てたんだ」

「ひとりか?」

「ううん、めいとと一緒」

「めいと?」

「うん、うちのメイドさん」

「あ、五月先生んとこのメイドさんか」

「五月先生のこと知ってるの?」

「うん。母ちゃんが、売れればいいわねっていつも言ってる」


 実はこの鈴来くん、八百屋さんのところのお子です。

 朝霧家を紹介してくれたのも八百屋さんでした。

 そういうつながりがあったのです。


「スズキはひとり?」

「ああ、父ちゃんも母ちゃんも店だし」

「そうか」

「で、お菓子何にするか決めたのか?」

「んー、まだ」

「迷うよなぁ……。歌舞伎揚げ、ピーナッツ、酢イカも捨てがたい」

「スズキの好みって、そうとう大人だね」

「そうか?」


 八百屋さんのご主人、けっこうな飲んべえさんです。

 その影響なのですかね。


「よう子供ら、何してんだ?」

「あ、ヒロシ兄ちゃん」

「お、五月先生んとこの居候」

「八百屋のご子息、その言い方はおやめなさい」

「ヒロシ兄ちゃんも知ってるの?」

「うん。父ちゃんが、値切ってきて困るっていつも言ってる」

「……」

「ヒロシ兄ちゃん……」

「がはは、生活の知恵ってやつだ」

「そうかな?」

「で、なにしてんの?」

「遠足のおやつ選んでるんだ」

「へー。で、おやつ代いくらまで?」

「五百円」

「ご、五百円? 贅沢な! 俺の頃は三百円だったぞ」


 ヒロシ、時代が違います。

 今日日、三百円では……ねぇ。


「サトル様、やっぱりここにいらしたのですね。おや、八百屋さんとこのぼっちゃま」

「まいど」

「こんにちは。お菓子、何買うか決めましたか?」

「めいと、俺を無視するな……」

「ねぇ、めいと」

「なんでございますか、サトル様」

「おやつ代五百円ってさ、消費税抜き? それとも税込みで五百円?」

「おや、どうなんでしょう?」

「そんなもん、税抜きだろ」

「消費税上がりましたしね。込みと抜きでは買えるものが変わってきますよね」

「だから、俺を無視するな……」

「そんなこと気にしてなかった。母ちゃんきっちり五百円玉しかくれなかったし……」

「スズキ、それじゃ百円のお菓子を五個は買えないってことだよ」

「やばい。五個と四個じゃずいぶんな違いだよ!」


 大袈裟とはお思いでしょうが、子供たちにとってこれは、死活問題です。

 めいとさん、どうしますか?


「ヒロシ、これ持ってて!」

「え、あ、重い……」


 めいとさん、カオルさんに電話をして聞いてみました。

 結果は……。


「皆様に残念なお知らせです。おやつ代は税込みだそうです」

「ぐへー」

「去年までは税抜きで四百円だったそうですよ。それが今年は税込みで五百円」

「得してるの?」

「いやサトル、損してんじゃないのか?」

「サトル様の正解。六十円くらい得しています」

「八百屋のご子息、しっかり」

「あ、ヒロシ、それのお勘定お願いします」

「え、ちょっ、俺の買い物できなくなるじゃん。財布にそんなに入ってないよ」


 サトルくん、鈴来くん、遠足楽しんできてくださいね。

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