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13 五月家の夕食

 五月先生、サトルくん、めいとさんにヒロシ、今夜は賑やかなお夕食です。


 キャンキャン……。


 あ、はいはい、アポロくんもいます。


「アポロだめだよ。人間のご飯はもらえないんだよ」

「だめです。アポロさんはもうご飯済ませたでしょ」

「もやし食べるか?」

「五月様、だめですよ」

「お、俺のところには来るなよ……」


 五月家の食卓は、脚の低い和風のテーブルです。

 アポロくんでも、前足を掛ければ上に登れてしまいます。

 四人を順繰りに、尻尾を振りながらちょうだいして回っています。


「アポロ、言うこと聞かないとバッグの中に押し込んじゃうよ!」


 キャンキャン……。


 サトルくんが叱っても、アポロくんはやめません。

 そりゃそうですよね、アポロさん。


「仕方がございませんね。わたくしが抱っこしています」

「めいと、その前におかわり」

「ヒロシ……あんたが抱っこする?」

「いや、自分でよそってきます。また粗相されたらやだ……」

「ふん。アポロさん、今夜はヒロシと寝ますか? おねしょしてもいいですよ」

「冗談やめて。サトルくんもおかわりするかい?」

「うん」

「五月様のお仕事部屋で遊んできます」

「ん」


 夕食のメニューは揚げ出し豆腐、ひじきの煮物とほうれん草のごま和え。

 箸休めにはさらに、もやしのおひたしにきゅうりのお新香。

 メインは鶏の唐揚げ、お味噌汁の具はじゃがいもと玉ねぎです。


「サトルくん、うちの食事は和風が多い。メイドの料理は美味しいかい?」

「野菜の煮物はちょっと苦手だけど、美味しくて好きなのもあるよ」

「お母さんは料理上手って聞いてるよ」

「うん。いろんな国の料理作ってくれる。パエリアとか、ボルシチとか、チャプチェとか」

「ボルシチって何?」

「ヒロシ兄ちゃん知らないの?」

「全然知らない」

「ロシアのまあ、スープだよな」

「五月先生食べたことあるんすか?」

「ああ、何回か」

「めいとが作るんすか?」

「まさか、外食でだよ」

「でしょうね……」

「作るの簡単みたいだよ。ママが、お鍋に材料入れて煮込むだけだって言ってた」

「そうか。おーい、めいとぉー、めいとぉーっ!」


 キャンキャン……。


「あ、やべ……」

「メイド、私が変わろう」

「お食事お済みですか?」

「ん」

「では、お願いします。で、ヒロシは何?」

「ボルシチ作ってくれ」

「は?」

「サトルくんのママに教わって、ボルシチ作って!」

「はいはい、そのうちね。サトル様もお食事お済みですか?」

「うん、ごちそうさま」

「では宿題を終わらせて、お風呂にどうぞ」

「宿題ぃー?」

「ヒロシと一緒にやられませ」

「わかったよ」

「家庭教師代、ボルシチな」

「はいはい」


 サトルくんとヒロシ、片した食卓で宿題を始めました。

 このふたり、意外と気が合うみたいです。

 最初は渋っていたサトルくんでしたが、さらさらと宿題を終わらせました。

 五月先生とアポロくんも戻ってきて、傍らで寝息を立てています。


「サトル、一緒に風呂入ろうか?」

「うん」

「そんで、一緒に寝るか?」

「うん」

「サトル様はわたくしと寝るのですよ」

「男同士のほうが良いよなぁー」

「うん」

「なら、お布団ヒロシの部屋に運んでください」

「よっしゃっ!」


〈この状況だと、アポロさんは五月様に取られてしまいそうですね……〉


「ううーん、アポロ、お手……」


 クゥーン……。


 おやおや、五月先生とアポロくん、揃って寝言です。

 めいとさんはひとり寂しく食器を片付け、明日の朝食の仕込みを始めました。


 キュルル……。


〈お腹空きました……食事の続きしましょ〉


 またまたひとり寂しく、夕飯の続きです。

 そんなに落ち込まないで、めいとさん。

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