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12 ヒロシの天敵

 今日は土曜日ですがめいとさん、朝霧家に来ています。

 サトルくんのお部屋で、お泊りの用意をしています。


「サトル様、はいパジャマ。パンツと靴下も忘れずに入れてください」

「バスタオルは?」

「タオルはうちのを使っていただきますからいりません」

「ねえ、めいとのおうちってどんなの?」

「どんなのと言われましても……普通のおうちです」

「ふーん。うちとおんなじ?」

「いえ、ここのおうちとはずいぶん違います」

「じゃあ普通じゃないじゃん」

「……」

「ふたりとも、用意ができたら出かけましょ」


 今夜、カオルさんは十年ぶりの同窓会にお出かけです。

 遠くから来る同級生たちと、ホテルで一泊するそうです。

 マサトさんは新薬の研究と出張が重なり、来週まで帰りません。

 で、サトルくんは五月家にお泊りすることになりました。


「はい、これアポロのグッズ」

「トイレシートと、ブラシにおもちゃ、首輪とリード。缶詰……おやつもあります」

「さ、出かけましょ。めいとちゃん、くれぐれも五月先生によろしくね」

「はい」

「サトル、五月先生はおうちでお仕事されているから、悪戯やうるさくしちゃダメよ」

「わかってる。アポロもいるし、おとなしくしてるよ」

「ホントかしら? 心配ね」

「奥様大丈夫です。サトル様のお相手はヒロシがいますから」

「そう? じゃあ、私は駅に行くからここでね」

「奥様、いってらっしゃいませ」

「いってらっしゃい、ママ。楽しんできてね」

「ありがとう」


 サトルくんとめいとさん、五月先生の家へ向かいます。

 アポロくんはキャリーバッグの中に入れられて、おや、寝ているようです。

 ゆりかご状態なのですかね。


「アポロのトイレどうするの?」

「玄関のたたきにシートを敷きましょう」

「ちゃんとそこでするかな?」

「においのついたシートも持ってきましたから、家に着いたらすぐにさせましょう」

「うん」

「アポロさんはお利口ですから、すぐに覚えてくれると思いますよ」

「そうだね」


 いやいやめいとさん、それはどうでしょう?

 お利口といっても、環境が変わってしまったら、そう上手くいくとは限りませんよ。



「ただいまで〜す」

「おじゃましま〜す」

「やあ、サトルくんだね。いらっしゃい」

「五月様ですよ」

「お世話になります」

「はは、しっかりしてるね」

「ママにそう言えって練習させられた」

「はは、正直だね。さ、上がってゆっくりしなさい」

「はい。でもその前にアポロのトイレ」

「おう、ワンコか」

「五月様、お靴少し片してくださいませ」

「ん、わかった」


 玄関の半分にシートを敷いて、真ん中ににおいの付いたシートを置きました。

 アポロくんはバッグから出され、シートの上をクンクンしながらグルグルしています。


「なかなかしないねぇ」

「慣れないところだとしにくいのですかね?」

「そんなに周りで見られていたら、出るものも出ないんじゃないか?」

「そうでしょうか?」

「よう、めいと、お帰り」

「サトル様、ヒロシです。ただいまです」

「サトルです。よろしく」

「おっす。で、こいつがアポロか。かわいいな」


 アポロくん、廊下に上がってヒロシに近づきました。

 そして、ヒロシの足をクンクンし始めました。


「犬は足のにおいで人を判別するのだそうだ」

「アポロさん、ヒロシの足はくさいですよ」

「うっせーなー」

「あ、アポロだめ!」


 サトルくんの制止は間に合いませんでした。

 右の後ろ足をあげて……。


 チョロチョロ、チョロ……。


「あ……生暖かい……」

「あーあ、やっちゃった」

「ヒロシくんの足は、犬のおしっこ並みにくさいということだ」

「先生、ひどいです」


 そのあと、アポロくんのおトイレはヒロシの足になりました。

 めいとさんは正直、サトルくんとヒロシが仲良くなれるか不安でした。

 でもそれは不要な心配で、ヒロシの天敵はアポロくんになりました。


 ドタドタドタ、ドタバタドタ……。

 クンクンクン、キャンキャン……。


「めいとー、またアポロが足嗅いでくるよぉー!」

「靴下洗えばいいだけです」

「トイレシートいらなかったね」

「ホントですね」


 チョロチョロ、チョロ……。


「あ……生暖かい……」

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