表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

10 五月とヒロシ

 月曜日、めいとさんは朝から朝霧家へ行っています。

 五月先生とヒロシのふたりきりです。

 五月先生はお部屋で執筆しているのですが……あまり進んでいないようですね。

 キーボードを叩く音が、たまーにしか聞こえてきません。


「ふぁーあ」

「先生、お昼どうしますか?」

「メイドは何を用意していった?」

「夜は鶏鍋の用意してあるんですが、昼は特に何もなくて……」

「そうか」

「できるのは……トーストとサラダくらいですかね。卵は一個しかないです」

「ちょっと味気ないな」

「粉末のコーンスープがありました」

「夜が鶏鍋なら、昼はそんなんでいいか」

「ですね」


 男所帯ってこんなもんですかね。

 冷蔵庫にはこま肉と刻んだ野菜、麺が入っているのですけど。

 めいとさんはお昼用にと、ちゃんと焼きそばを用意していったのですよ。

 さてはヒロシ、作るのや洗うのを面倒に思って、手を抜いたのかもしれません。

 ヒロシのことですから、ホントに気付かなかった可能性も大ですが。


「ふぁーあ」

「先生、ゴミありますか?」

「ん? いや、ないな」

「じゃあ、モフモフで棚とパソコン拭きますね」

「ん」

「掃除機はどうします?」

「そんな汚れてないし、いいんじゃないか?」

「ですね」


 いやいや五月先生、隅に埃たまってますけど?

 食べ終わったお菓子の袋も床に転がってますよ?

 男所帯でも、これはいただけないのでは……ね。

 ヒロシも五月先生も、めいとさんに叱られますよ?


「ふぁーあ」

「先生、お昼できました」

「ん」

「先生、午後は執筆の続きですか?」

「んー、今日はいまいち筆が乗らないんだよなぁ」

「先生、それ言うなら指がでしょ」

「ヒロシくん、そこ突っ込まない」

「すんません。たしかに、さっきからあくびが多いようですね」

「んー、食べたら昼寝でもするかな。ヒロシくんはどうする?」

「洗濯しますかね」

「午後から雨だってテレビで言ってたぞ」

「うわ、そうですか……じゃあ洗濯は明日にしますか」

「ふぁーあ」

「ふぁーあ」

「暇ですね、先生」

「暇だな……」


 締まりのない会話です……。

 ふぁーあ、聞いてるこっちもあくびが出ます。

 で、二人とも昼寝を始めましたよ。

 めいとさんのいない日は、おおむねこんな感じです。

 ま、知らぬが仏。

 めいとさんに見つからなければいいのです……ね、おふたりさん。



 火曜日の朝。


「じゃんけんぽん」

「あいこでしょ」


 え、おふたりさん、朝っぱらからじゃんけんですか?


「やった!」

「ヒ、ヒロシくん……」

「駄目ですよ先生、一回勝負って約束です」

「ち……」

「勝負に上下関係はありません」

「わかった、わかった」


 五月先生、口でも負けてしまいました。

 いったい何を決めていたのでしょう?


「納豆にはやっぱり卵が入ってないとですよね。うまい」

「ヒ、ヒロシくん……」

「あげないですよ」

「いや、二人分の納豆を一緒に混ぜればよかったのではないかと……」

「あ……い、今から混ぜます?」

「もういい」

「すみません」

「じゃあ、夕べの鍋の残った鶏は私のだからな!」

「え! そ、それは……」

「早い者勝ちーっ」


 一個しかない生卵を争っていたのですね。

 なんなんでしょう……。

 小学生の会話を聞いているようです。

 このおふたり、どちらもいい歳なはずなんですけねぇ。

 朝食が終わったら、のんびりしていられないですよ。

 鍋や食器の片付け、洗濯もしておかないと。

 めいとさんが帰ってきてしまいます。


「あ、テーブルクロスに醤油こぼしたの忘れてた。洗濯、洗濯」

「ヒロシくーん、ポテチの空き袋がぁー」

「やべ、茶碗の干涸びたご飯取れない」

「ヒロシくーん、掃除機も出してくれぇー」


 さあ、タイムレースが始まりました。

 おふたりさん、証拠隠滅手抜かりなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ