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因みにこうなった場合は…… (次男)

Ladies&Gentlemen!

ご機嫌いかが?今回のタイトルで初っ端飾ることになった次男のテッペイ君でっす。

いきなりだけど俺、今リョウになってます。高校一年生に逆戻り。あ、因みに俺はこの学校のOBじゃねぇよ。家から一番近い共学だったから。

俺は徒歩圏内で、尚且つバイトが許可されてるとこならどこでもいいって感じで高校選んだけど、リョウは遠くてもいいからなるべく金の掛かんないとこ行きたいって言って聞かなかったんだよなぁ。そしたら在学中は試験で常に学年順位十位以内、全国模試は二百位以内に入ることを条件に特待生として認められるこの学校選んだんだよ。学費、制服、教材、文房具、昼食代等が全部免除で、おかげであいつの高校進学で掛かった金って、ぶっちゃけ自転車くらいだった。

生徒会補佐に選ばれたからバイトできなくなったって落ち込んでたけど、気にしすぎなんだよなぁ。遊びたい盛りなんだし、もっと甘えてくれりゃいいのに。




そうそう、そんで今のリョウ……つーか俺の状況ね。

大勢の甲高い声を出す連中に責められてます。何故に?


「ちょっと頭が良いくらいで、君みたいな平凡が生徒会の皆様に近付くなんて図々しいんだよ!」

「補佐だからって調子に乗らないでよね!」

「そもそも君のような庶民がこの学校に通っていること事態おかしいんだよ。とっととこの学校から出てってよね」


キャンキャンキャンキャン……何このチワワみたいなの。どいつもこいつも小柄で、一見可愛い感じの外見をしてる。けど俺ほどじゃねぇな。

違う違う、そうじゃなくて。


「え~と、とりあえず君ら、何なの?」

「生徒会の役員方の親衛隊だよ!さっき言っただろっ!」


俺は初めて聞きました。君らが言ったのを聞いてたのはリョウ君本人なのだよ。

つーか親衛隊って……いつ聞いても不思議なんだよなぁ。山下りりゃ可愛い女の子いっぱいいんのに、何で男にはしるかね、こいつら。ノリ?

ああ、でもここってバス通ってないんだっけ。そんでここの生徒ってリョウとカナタ以外は全員寮に住んでるらしい。あいつら二人だけチャリ通。

あ、言い忘れてたけどここ、男子校ね。え?知ってた?そりゃすんません。


「もういい!これまで何回か警告文送ったり忠告したりしてきたけど、態度改める気ないみたいだし、制裁に移らせてもらうよ」


なぬ?!こんなこと何度もあったのか?俺も兄貴も、それにぜってームカイの奴も聞いてねぇぞ。

んでもって制裁って、つまり実害を成すってことだよな?

眉間に皺を寄せてチワワの動向を窺ってたら、俺の正面に立ってた奴が高々と腕を上げてパチンと指を鳴らした。すると校舎の角から姿を現したのは、大柄で厳つい顔して、んでもって派手な頭した見るからに不良っぽい男子生徒五人。

指鳴らす仕草といい、そのタイミングで現れることといい、こいつら一々芝居がかってんなぁ。演劇部?


「あいつをボコボコにして。いいサンドバックでしょ?」

「何なら辱めてくれていいから。その際は写メ撮って送ってね。学校中にばら撒くから」

「サンドバックはともかく、あいつじゃ勃つもんも勃たねぇよ。見るからに地味じゃん」

「でも善がってる顔は意外にいけっかもよ?」


何だろうなぁ。タツヤの野郎にセクハラ言われ慣れてる所為か、高校生のガキがほざくことが可愛く聞こえる。

この前は伏字するような台詞なかったけど、酷いときは×××とか、○○○○○して△△△△してやるとか、▼▼▼を●●●●●●●して□□□してやるとか……。あ、何か目頭熱くなってきた。


「じゃあまずはほどほどに痛めつけるとするか」


不良がニヤニヤしながらこっちに近付いてきたのを一瞥して、俺は小さく溜息を吐く。

兄貴は事務員だけど、ミキさんに護身術を叩き込まれてるからある程度は立ち回れる。けどぶっちゃけ、俺もリョウも喧嘩はできない。

よってこの場を潜り抜けるには逃げるしかない。


「マゾじゃないんでお断り。アディオス!」


人差し指と中指を立てた手を額の前で軽くスライドさせてウインクし、俺は一目散に駆け出した。

先人は良い言葉を残してくれた。それ即ち、逃げるが勝ち。


「あ、コラ!待ちやがれ!」


待てと言われて誰が待つか。

とにかく闇雲に走って、開いてた窓から校舎に侵入。緊急事態なんで土足のまま。

良い子は真似しちゃいけません!駄目!絶対!

俺もリョウも別に走るの苦手じゃないし、鈍足ってわけでもないけど、追いかけてくる連中もそこそこ持久力はあるらしい。ちょっと気になって肩越しに振り返ってみたら、思ったより距離が縮まってきてた。

……残念な現実。原因はリーチの差。

あっち、どいつもこいつも百八十センチ越え。

リョウの身長、百六十センチあるかないか。俺も似たようなもん。兄貴だって百六十五センチ多分ない。遺伝だから仕方ないといえばそこまでの話。チキショー!

一見このままだと捕まるのも時間の問題ってことで……さて、どうすっかな~?


「おい、そこ!今は授業中だ!」


突如聞こえた怒声にパッと前を見たら、金髪イケメンが立っていた。そいつの一歩後ろにはリョウの親友、カナタもいる。

そうか。何かこの建物人気ねぇなと思ったら、理科室やら美術室なんかがある特別棟か。生徒会室も入ってんだっけ。そういやあの金髪、会長だわ。

二人のいるとこまでもう少しという距離で、ふと何かが視界の端に映った。

窓の外。体育館。クラブハウス。樹。

……いける!


「そこのバ会長!しゃがめ!」

「あ?お前……いや、それよりバ会長って……?!」

「いいからしゃがんどけって。バ会長」


カナタに後ろから膝カックンされたバ会長の頭に手を置いて、俺は窓の外へと飛び出した。そしてその先にあった樹の枝に掴まって、勢いそのままに逆上がりの要領でクルリと着地。衝動でゆらゆら不安定に揺れたけど、大丈夫そうだ。

俺の行動をしかと読んで、予め窓を開けておいてくれたカナタにグッジョブと親指を立てると、あっちもニヤリと笑ってビシッと合図を返してくれた。君なら分かってくれると思ったヨ。文句を言うだろうバ会長の相手、よろしく。

そんで、ちょっと離れたところでは俺を追いかけてきてた不良共がポカンとこっちを見ている。ハハハ、ザマァ。

来れるもんならやってみろって挑発したかったけど、リョウはそんなことしないので涙を呑むことにする。

そのまま余裕綽々に枝から枝へと跳んでクラブハウスの屋根へと移り、無事、俺は危機を乗り越えたのでした。まる。

因みに、何でバ会長の頭を軸にしたかって?だってサッシに手ぇ置くと痛いじゃん。




   *




「ちょっと、兄ちゃん!今日僕の体に替わったとき何したの?!」


元の体に戻って数時間後。リビングで兄貴とテレビ見てたら、宿題をしてたはずのリョウが慌てた様子で怒鳴り込んできた。


「何って?特に何も?」

「嘘!会長からよく分かんない怒った感じのメール届いたよ!」


あのバ会長から?確かに昼間会ったけど……別に怒らせることしてねぇよなぁ?


「テッペイ。あんまりリョウらしくないことするなよ?」

「分かってるって」


でも今回は仕方ねぇだろ。つーか、寧ろ替わったのが兄貴じゃなくて正解だと思うぜ?

カナタから聞いた、リョウが影で説教魔呼ばわりされてる所以。

前に兄貴がリョウの体になったとき、兄貴はゴツイ男連中を護身術で捩伏せて、痺れて立てなくなるくらい長い時間、そいつらを正座させて説教したらしい。

それに比べりゃ鬼ごっこなんて可愛いもんだろ?

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