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×××が現れた! (次男4)

何年ぶりだろうな、リョウがあんな怪我すんの。パルクール始めた頃は生傷絶えなかったけど、包帯巻くくれぇ酷かったのって足の骨に罅入ったとき以来か。あんときゃ俺も兄貴もさすがにテンパったけど、ムカイの奴が一番凄かったな。高校休んでリョウの小学校について行ったぐれぇだったし。あまりの過保護っぷりにドン引きしたわ。

そーいやあいつ、怪我のこと知ってんのか?昨日リョウの帰りが遅いから迎えに行くっつって……あ~……ちょいメールしてみっか。

そう考えて、スプーン咥えながらポケットの中のケータイ取り出そうとしたのはいいんだが、思わぬ邪魔が入った。


「隣り、いいかい?」

「ああ、はい、ど………ぅぞ」


昼時、生徒とは別に教職員用として設けられてるスペースでカレーを食ってた俺に話しかけてきたのは、あんまお近づきになりたくない若い教諭。無駄に爽やかな笑顔がひたすら俺に向けられてる。あれ?日差しってこの時間、校舎の真上から降り注いでいるはずなのに超眩しいんですけど。

そして直後に何人かの生徒による甲高い嬌声。どうやらこいつの破顔にやられたらしい。……うん。男の「キャー!」はちっとも可愛くねぇな。

チラッと横目で隣りを見れば、バチッと視線が合ったので反射的に逸らす。何で俺の方見てんだよ?!

つーか、他にも席いっぱい空いてんじゃねぇか。あっちで談笑してる先生方とか、そっちにゃてめぇと同じ担当教科の先生いるし。あそこら辺にでも混ざってこいや。

……て、こいつが素のタツヤなら言えんのに。今は“ケンゴ先生”だからなぁ。


「……早く食べないと冷めますよ?」

「そうだね。じゃあテッペイ先生の食べっぷりを観賞しながら戴こうか」


観賞なんかせんでいい!いや、こいつ、遠回しに視姦するっつったのか?俺の考え過ぎ?!


「テッペイ先生はカレーに生卵を入れるんだね。それをちょっとずつ混ぜるんじゃなくて一気に。俺達もそんな風に混ざり合えていけたらいいね。あ、俺そのスプーンになりたいな。テッペイ先生の舌が匙に絡んで唾液が……あれ?どうかした?」

「…………イエ、オキニナサラズ」


全然全くこれっぽっちも考え過ぎじゃねぇ!寧ろ視姦どころのレベルじゃねぇよ!生粋の変態だ!鳥肌立ちまくり!

てめぇ、タツヤ、この野郎!俺が教育実習生で迂闊に暴言吐けねぇからって調子に乗りやがって!仮にも今のお前、教職員だろうが。ここでそういうこと言うんじゃねぇよ!

でも……あれ?それにしちゃ何か違和感ある気ィするけど……どちらにしろ、こいつマジ危険だ。

さすがにこれ以上カレーに口付ける気ィ失せて逃げようとしたそのとき、今度はテーブルを挟んだ正面から声を掛けられた。


「ここ、座りますね」


トレイを置いて俺の前に座ったのはつい先日会った眼鏡白衣。名前何てったっけ?


「何か御用ですか?レン先生」


そうそう、レン先生。非常勤の美術教師だっけか。この際だからこの間の礼を……て、あんときゃリョウの体だったから、今の俺が言ったら変に思われっか。


「勿論昼食をとる為に食堂にいるんですが?ケンゴ先生」

「それならわざわざここでなくてもよろしかったでしょう」


あんたもな。

変態属性の体育教師にツッコミたいのを堪えて、新たに現れた美術教師を観察する。

あの宇宙人ってほどでもねぇが、この人も随分な恰好だな。前髪は目元が隠れるくれぇ長ぇし、掛けてる鼈甲眼鏡はダセェし、服も……これはしゃあねぇか。白衣に絵の具が飛んでんのは下の服汚さねぇ為だからだろうしな。

そういや猫背だけど、そこそこ身長あったな。背筋伸ばしゃぁ百八十くらいは余裕………(自分)の背丈と比較して凹んだ。

……気を取り直して。


「え~っと、初めまして、レン先生。僕、教育実習で二年生の英語を教えてます。生徒や他の先生方からも下の名前で呼ばれてるんで、どうぞテッペイって呼んで下さい」

「………クッ」

「?」

「美術担当のレンです」


広げた掌で眼鏡の蝶番を持ち上げながら挨拶したその仕草は、傍から見れば緊張でキョドってるように見えんのかもしれねぇが……気のせいか?こいつ、今笑った?初対面で笑われるような心当たりなんて……あ!

まさかと思って手の甲で唇を拭ってみりゃ、案の定カレーのルーが。しかも結構ベットリ。


「うっわ!俺、いつからこんな状態で飯食ってたんだ?!恥ずかしっ!」


隣りで変態が「僕が舌で舐めとってあげるのに」なんてほざいてっけど、当然無視。


「フッ……」


正面から再度小さい笑い声が聞こえてきて、瞬時に耳まで赤くなったのが自分でも分かった。

馬鹿にされた!ぜってぇ見た目通りガキっぽいって思われた!穴があったら入りてぇ~!ぬおぉぉぉぉぉ!

さすがにこれ以上ここに留まってられねぇと慌てて席を立ったまさにそのときだった。


「あ~腹減った~っ!今日は何食べるかな~っ!」

「ルカの好きな物を好きなだけ食べたらいいんですよ」

「腹が減っては戦はできないって言うしね~」

「食べれなくなったら俺様がお前ごと貰ってやるから安心しろよ」


来やがった……宇宙人とその仲間達。

それと共に食堂内を駆け巡る不穏な視線と悪意の込められた囁き。あ~、空気悪っ。

とっとと退散するに限るな。隣りの変態も宇宙人見てるし。正面のレン先生は我関せずでステーキ食ってっし。

この隙にと、カレーの乗ったトレイを持ってそろ~っと足を動かした……んだが。


ガガッ……!


……やっちまった~!

ガッと!足が椅子の脚にぶつかってガッと!こんなときに限って派手な音が!しかも宇宙人が来る前までの喧騒が形を潜めやがったから、余計に音が響いて……て、うぉ!


「お前可愛い顔してんなぁ!名前なんていうんだ?!」


何てこったい。こいつとだけはcontact避けたかったのに……!

冷汗ダラダラでどうやってこの場を切り抜けるか考えてる間も、宇宙人は「名前を教えろよっ!

」と馬鹿の一つ覚えみてぇに煩ぇ。

つーか、こいつ、俺より二センチくらい視線上……!


「あのね、君。いくら彼が教育実習生だからって敬語を使わないのはいけないだろう」

「教育実習生?!」


げっ!この変態教師、バラしやがった!


「俺、おじさんに頼んで教育実習生引き受けてやってくれってお願いしたんだ。だから感謝しろよ!」


あ、俺、今、血管がこめかみに浮かんでるかも。いや、切れた?

とにかくブチッときた。

お前、ホントに何様のつもりだよ?人の弟傷だらけにして、しかも俺がここにいるのは自分のおかげだから感謝しろ?ざけんな。


手に持ったトレイを放り投げて宇宙人に飛びかかろうとしたんだが、それより早く動いた奴がいた。

正面に座ってたはずのレン先生がいつの間にか俺のすぐ傍にいて、トレイに乗せてた俺のカレーの残りをスプーンで掬ってそれを宇宙人の口に突っ込みやがった。


「んがぁっ!」

「てめぇ、ルカに何しやがる?!」

「ピーチクパーチク煩いから、腹が減ってるんじゃないのかと思っただけだ。そもそもここは教職員スペースだ。生徒が侵入していい領域じゃない」

「僕達生徒会は例外ですよ」

「生徒会?生徒会は全校生徒がより良い学校生活を送れるよう活動する組織のはずだが、その役目を一向に果たしていない役者不足が何をのたまってるんだ?」

「何だと……?!」


犬歯を剥き出して、または親の敵かってくらい険しい表情をして睨んでくる生徒会三人組を鼻で一笑したレン先生は、さり気なく俺の肩を抱いてこの場を後にした。

今回新しく出てきた人はなしです。


次回もない……いや、あるのか?

あると言ってもいいのかな?どうだろう……

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