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×××が現れた! (次男2)

教育実習五日目。今の俺はこれ以上となく充実している………はずもなく、ぶっちゃけもう精神ボロボロで今にもノックダウンしそう。誰か代わって。あ、勿論兄貴とリョウ以外で。ただでさえ多忙な二人に今以上の心労かけさせられるかっての。

で、原因は何かって?俺が人気者だからだよ。あ?自惚れるな?いやいや、マジで!嘘じゃねぇって!

まずは煩いウザい関わりたくないNO.1の宇宙人、改め愛敬ルカ。今んとこあいつに俺の面割れてねぇけど、“教育実習生”って立場がひっじょ~にヤバイ!

というのもユタカ先生から聞いた話、俺がこの学校への受け入れを許可してもらえたのは、あの宇宙人の好奇心のおかげ(・・・)なんだとか。


「君の母校の校長から教育実習生を引き受けてくれないかと連絡があったとき、当初理事長は渋っていたんですよ。ですが、丁度転入手続きで理事長室に居合わせてた愛敬君が会ってみたいと騒い……いえ、大変興味を示しましてね」


甥っ子の駄々に誘因されて受け入れ許可したとか……そんないいかげんなのアリ?

因みにどうしてユタカ先生がこんなこと知ってたのかというと、やはり宇宙人はそんときもでけぇ声で喋ってたようで、ドアを閉めてても理事長室の外に話は筒抜けだったんだとか。

けど幸いなことに、宇宙人は自分の発言が切欠で教育実習生()を呼び寄せたことなどすっかり忘れてるらしい。確かにあいつのおかげで俺はここにいるのかもしんねぇけど、だからって俺があいつと会わなきゃいけねぇってこたぁねぇだろ。あくまで決断は理事長がしたわけだし。

で、次に煩わしいのは一部のミーハーな生徒。これは大まかにtwo typesに分けられる。別に分けんでもいいんだが、まぁ聞いてくれ。

一つはまんま、今の俺の姿に一目惚れした奴ら。うん、顔が良いのは自覚してますけど、何か?

文化祭のときは詰め寄られたりもしたけど、まぁ半分は兄貴目当てだったし、教育実習生といえど立場的にゃ教師に近いわけだから最低限の節度くらいあるだろ、なんて最初のうちは能天気に構えてたんだけどよ……思い出しちまったんだよな、前にリョウから聞いた話。


「溜まった性的欲求を手っ取り早く解消したかったとか、親衛隊が制裁対象を辱めようとしたとか……資産家の子どもが通ってる学校だから表沙汰にならないけど、そういった物騒なことも無きにしも非ず、なんだよね」


つーまーり、俺ってば生徒(奴ら)に憧憬だけじゃなく、肉欲的にも十分見られてるわけだ。

さっきの授業なんか、ホワイトボードに字を書こうと後ろを向けば、うなじとか腰とかケツに視線が刺さってよ、そんで書き終わって振り返ってみれば、まるで俺を獲物としてlock onした肉食獣みたいな目があちらこちらに……思い出すだけでガクブル。

そしてもう一つなんだが……


「待って下さい、テッペイ先生ぃぃぃ!」

「これっ!是非この服着て下さい!」

「化粧のりの良い肌の手入れの仕方、教えて下さい~!」


遂に昨日バレちまったんだよおおおぉぉぉ!俺――正しくはあのとき俺の体にいたのはリョウだ――が文化祭の美女コンに出てたってことがよおおぉぉ!

昨日の授業の最後に突如、一人の生徒が「うおおぉお!思い出したっ!美女コンに出てたロリータ美少女、あれテッペイ先生だ!」なんて絶叫してからがもう大変で。

スーツ姿の男にゃ食指が動かんが、ロリータファッションが似合うくらいなら……なーんて奴らまで釣れちまったんだよ!ちきしょうめ!しかも体格の良い連中のみならず、生徒会の親衛隊に入ってるような小柄な生徒まで。

そこの眼鏡、メイド服持って追いかけてくんな!

肌の手入れ?ニキビ予防洗顔でもしてろっ!勿論、men’sのな!


「あ~も~!マジでしつけぇ!」


チラッと後ろを振り向きながら走ってたそのとき、勢いよく誰かとぶつかっちまった。うぉお、ヤベェ!

前方不注意の失態と相手に怪我をさせてねぇか、その二つにヒヤッとしながら相手との衝突で傾いた俺の体。

打ち身覚悟だったけど、衝撃は痛みじゃなく腕を引っ張られてことによって訪れた。


「大丈夫かい?」


うぎゃぁ!

誰とぶつかったのか、相手を認識して思わず悲鳴が喉元まで出かかったけど、どうにか堪える。


「君達、廊下は走っちゃいけないよ。テッペイ先生も」

「ごめんなさ~い、ケンゴ先生」

「す、すんません……」

「ほら、君達。もうすぐチャイムなるから教室に戻りなさい」


てめぇら、口で謝罪してても顔面だらしなく緩ませてりゃ、ちっとも殊勝な態度だと思われねぇよ。

んでもってケンゴ先生よぉ、さり気なく俺の肩撫でてんじゃねぇよ。てめぇの手付き、やらしいんだよぉぉっ!

鶴の一声ならぬエセ(・・)爽やかイケメン教師の一声で、俺を追いかけてきた生徒達を一掃させた野郎は、邪魔者はいなくなったとばかりに俺の顔に自分のを寄せてくる。当然俺は俊敏に動き距離をとる。

入院中の教師の代わりにやってきたという、新しい体育教師。厭味かってくらい長い脚に切れ長の目、それに細身ながらもしなやかに付いた筋肉。

脳裏に浮かぶ()と比べて髪は短いし右目の泣き黒子がねぇし、若干顔の輪郭違う気ィすっけど……こいつ、タツヤだよなぁ?!


「そんな警戒しないでほしいな。テッペイ先生とは新しくここにやって来た者同士、仲を深めたいだけなのに」

「先程はぶつかってしまってどうもすみませんでした。次の授業があるので失礼します」


舐めるようにじっとり見つめてくる視線と向き合う勇気なんてこれっぽちねぇ俺は、踵を返して一目散に、今度は早歩きでこの場を去った。

何なんだ、あいつ!前に一度、入れ替わってねぇ俺と会ってるはずなのに何も言ってこねぇし。兄貴と一緒で変装してるからか?

だとしても、兄貴の体に入れ替わったとき同様、スキンシップ多いんだよ!今回は肩だったけど、前は腰に手ぇ当ててきたし!

……愛敬ルカに俺目当ての生徒、それからタツヤ疑惑のケンゴ先生。

俺の気苦労は絶えない。




「はい、それじゃ次のページ開いて」


腕時計をチラ見して残り時間を確認。この五時間目が終わったら次は授業ねぇし、学習指導案作成すっか。つーか、前リョウが入れ替わったとき凄ぇちゃんとしたの仕上がってたから、ハードル上がってて毎回キツイんだよなぁ。

教科書片手にホワイトボードと向き合って、背後に気を配りながらマジックを右手に持とうとしたそのとき――――


ガンッ……!


例の眩暈がやってきてホワイトボードに頭突き。

生徒の動揺する声を耳で捉えつつ、グラつく頭で右斜め後ろを見遣れば、座った状態で頭垂れる兄貴の姿。

あ、入れ替わり決定。




   *




……サ・イ・ア・ク!

マジ、何故にこのタイミングで?!


「オイ、聞いてるのか、リョウ!無視はいけないんだぞ」

「ルカちゃん無視するなんて、リョウちんサイテー」

「何様のつもりですか、リョウ」

「オイ、ルカ。こんな平凡に構わず俺を見ろよ」


ギャーギャー煩ぇ宇宙人御一行に捕まってる最中とか。何、この拷問。


「え~と、愛敬君。授業は?」

「授業より俺と一緒にいる方が大事だろ!あと、名前で呼べっていつも言ってるだろ!」


てめぇより授業の方が大事だよ。名前呼びは知らん。リョウ本人に言ってくれ。

あ、つーか授業!俺がリョウになったんなら、リョウが兄貴で兄貴が俺……。

次の瞬間、俺の体から血の気が引いた。

さっきの授業、兄貴のいるクラスでやってたんだが、兄貴の授業の理解度はぶっちゃけ一年のリョウよりヤベェ。あそこまで酷ぇとは思ってなかった。

……俺の教育実習、マジで終わったかも。

“体育教師”が現れた!


テッペイは彼がタツヤだと疑っているが、はたして……?

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