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庶務になった経緯を語ってみた (親友)

今回は三男の親友、カナタ視点です。

そりゃあ生徒会は一般生徒と違って、より良い学校作りの為とか小難しい理由で勉学とは別に仕事が課せられてるわけだし、休憩だって当然必要だけどな、それでも生徒会室内に給湯室とかいらないだろ。喉渇いたなら自販機で買えやって思うの俺だけ?

つーかここ、給湯室っていうより寧ろキッチン?IHヒーター三つもいらないし。電子レンジやオーブントースターはともかく、グリルとか何だよ?ここで魚焼けってか?リョウ以外ぜってー嫌な顔しそう。

……うはっ、想像したらちょっと笑える。


「ボンボンの学校って、やっぱ何考えてっか分かんないよな~。この給湯室もそうだけど、仮眠室とか贅沢過ぎだろ。眠いなら寮帰れ。しんどいなら保健室行けやって思うし」

「公立の中学校に通ってた僕達には信じられないよね」

「私立でもこれはないだろ」

「……この会話ももう何度目だっけ?」

「言わなくなったら負けだぞ。この学校の金銭感覚に染まったら一生マトモじゃなくなると思え」


まぁ節約家のリョウより俺の方が染まりやすいのかもしんないけど。

毎度の愚痴を零しながら俺はお茶請け、リョウは飲み物の準備中。別にこんくらいの用意一人で充分なんだけど、知ったこっちゃない。実際一人でやるとなれば役職上、一番下のリョウだけど、あんな常識からズレた連中の中に俺一人取り残されたら、間違いなく洗脳される。

だってそうだろ?海外にある○○国の××って店が美味いとか、ブランドの△△△を手に入れたとか、その程度なら内心悪態吐きながらもどうにか平然を装える。でも■■のケツは緩いとか、□□は◆◆◆が巧いとか、そういうのはマジ勘弁。いや、相手が女なら興味津々だけどよ、連中……つーかここの生徒、八、九割がバイかゲイだから、R指定の話題は全部そっち系なんだよ!

くそっ。俺、美術選択なのに、奴らの所為で美術教諭の印象が根暗から床上手に変わっちまったし。

横目でリョウを見れば、慣れた手つきで会長がリクエストしたココアの準備に取り掛かってた。

何で俺がこんな目に……って思わないでもないけど、理不尽の度合いでいえば、俺よりこいつの方が大きいよなぁ。




入学して約半月。中学からの持ち上がりばっかの中、外部生の俺達二人が漸くクラスに馴染め始めた頃に、災厄は突如訪れた。


「君、生徒会に興味ありません?」

「全然。全く。これっぽっちもないッス」


放課後、色んな生徒に騒がれながらやってきたのは副会長。廊下がキャーキャー煩かったから何事かと思ったけど、まさかその原因が俺に用事があるなんて考えもしなかった。知ってたらとっとと帰ってたってのに。


「そもそも何で俺に打診してくるわけ?外部生の俺じゃなくて、元々この学校に通ってる奴使った方が、仕事も潤滑に動くだろうに」

「生徒会役員は生徒の支持が高い者、つまり文武両道で容姿に優れ、且つ富家の者が選ばれます。この度全校生徒にアンケートを採って尚且つ生徒会で検討した結果、庶民の出ではあるものの、それを差し引きしても君が一番相応しいと判断しました。外部生ということもあり、この学校に新しい風を吹かせる起爆剤となって頂きたいんですよ」


悪かったな、ブルジョワじゃなくて。

他にも、支持に容姿は関係ないだろとか、アンケートなんていつ採ったんだとか、それらしい理由言っても付け足しっぽいんだよとか、色々ツッコミたいとこだらけだけど、それ口に出したらぜってー今こっちに注目してる連中、敵に回す。


「いやいや。俺のこと高く買って頂いてるのは嬉しいんスけどね~、この学校に入ったばっかだし、期待に応えられそうにないッスよ」


ヘラヘラ笑って程よく追い返そうとしたら、ヒソヒソと俺らに注目してた奴らの声が耳に入る。


「あいつ、何様のつもりだよ?」

「カナタ君なら生徒会入り、大歓迎なのに」

「副会長様の頼みを断るなんて……」

「ふぅん……。ま、あの子なら庶務になっても僕はいいと思うけどね」


是と言おうが否と言おうが、文句ある奴ばっかじゃん。

どうすっかなぁ~と、頭掻きながらふとリョウを見れば、俺のことを気にする節はあれど助け舟を出す様子はない。まぁ俺としても、そんなことされちゃ困るしな。下手にあいつがでしゃばって副会長に楯突こうなら、問答無用で全校生徒敵に回すだろうことは目に見えてるし。

成績は次席。運動神経も投球こそ苦手ではあるが持久力に関しちゃ高い。それでも容姿が平凡ってだけでここじゃ大きな痛手。

入学してされど半年。男同士でイチャコチャしてる場面を目撃したのは一度や二度じゃなかったり。そこでクラスメイトに改めてこの学校について訊いてみりゃ、親衛隊やら男と男のカップリングだとか、終いにゃ外見がモノを言うと。

世間じゃ学力レベルの高い進学校なはずなのに、なんだこの……馬鹿と天才の紙一重みたいな。


「入学したてで慣れないと言われれば尤もです。なので、今回は特例として補佐も選出することにしました。その補佐に誰が良いか、君に選ぶ権利を与えましょう。ですから……庶務、引き受けて頂けますよね?(断ったらどうなるか……勿論分かってるよな?)」


副会長、副声音が聞こえてきたのは気のせいッスか?

それよりマジか。俺、庶務決定?メンドくせー!


「カナタ君!僕が補佐になるよ!」

「ううん、僕選んでよ!」

「俺の方が相応しいって!」

「いやいや、俺がっ」


クラスメイトはとりあえず分かるけど、他の連中、誰よ?

ギャーギャー煩いのに顔を顰めてたら、ふとこんな状況には相応しくない求人誌を持った手が視界に映った。リョウだ。騒ぎ出した周囲にキョドってる。

あいつ、やっぱり学校終わった後バイト探す気でいたな。ヒロキさんとテッペイさんにあれほど金の心配しなくていいってこっ酷く叱られたのに。

おまけに俺、お前の幼馴染にこっそり脅されてんだぞ。「俺の(・・)リョウが変な奴らに絡まれるようなことになれば、命はないと思え」って。あれはカタギの目じゃなかった……!

リョウはぶっちゃけ地味だけど、ヒロキさんやテッペイさんに近付く為の手段として、リョウを利用しようとする馬鹿が出てこないとも限らない。

バイトさせるくらいなら、いっそのこと……。


「副会長。補佐、どんな奴選んでも文句言わないッスよね?」


つーか、言わせない。絶対に。


「役に立たないような子はさすがに困るけど」

「その点は問題ないッスよ。寧ろ俺より有能。折紙付き」




それで俺はリョウを選んだわけだけど、そんときゃもう、周りは阿鼻叫喚。顔がパッとしないからってだけで失礼な連中だよな。

おまけに俺の目を盗んで度々制裁してるみたいだし。幼馴染殿にバレたらどうしてくれる。ま、生徒会役員に選出した俺の所為なんだけど。

リョウにも当然渋い顔されたものの、困ってる俺を放っておけないってことで了承してくれた。優しい親友を持って俺は幸せですよ。うん。


「おい、飲み物まだかよ?!」

「お腹空いた~」

「「今持っていきまーす」」


生徒会の仕事は忙しいし、親衛隊とか馬鹿げてるし、無駄にプライド高い奴多いし、建物の造りは金掛け過ぎだし、ビジュアル重視とかどうよ?って感じだし、色々ツッコミどころ多いけど……とりあえず今のところは、生徒会庶務って役職も悪くないと思ってる。

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