# 第七章 ## 「未来の妻は、とんでもなく強かった」
# 第七章
## 「未来の妻は、とんでもなく強かった」
---
帝都の中央広場。
全員が固まっていた。
衛兵。
貴族。
民衆。
ミラ。
そして皇帝レオン。
誰もが同じ顔をしている。
「え?」
である。
---
銀髪の少女は微笑んだ。
「久しぶり、レオン」
「初対面だが?」
「十年前だからね」
「意味がわからぬ」
「知ってる」
少女はなぜか嬉しそうだった。
---
ミラは頭を抱えていた。
(終わった)
(情報量が多すぎる)
未来管理局。
世界線修正。
未来の妻。
一気に来すぎである。
---
レオンが手を挙げた。
「質問してもよいか」
「どうぞ」
「朕は本当に結婚できるのか?」
少女は頷く。
「できる」
レオンは感動した。
「おお……」
そこか。
そこだった。
---
「陛下!」
ミラが叫ぶ。
「もっと他に聞くことありますよね!?」
「そうか?」
「あります!!」
---
少女はクスクス笑う。
「相変わらずだね」
その言葉に。
ミラは違和感を覚える。
未来の妻。
なのに。
その目はどこか寂しい。
まるで。
大切なものを失った人の目だった。
---
「名前は?」
レオンが聞く。
少女は少しだけ考えた。
そして答える。
「ルナ」
---
その瞬間。
ミラの未来観測装置が反応する。
警告音。
激しいノイズ。
『危険人物確認』
『世界線特異点』
『未来記録存在率──0%』
---
ミラの顔色が変わる。
(存在率……0?)
ありえない。
未来に存在する人間なら数字が出る。
だが。
ルナには未来記録そのものがない。
---
つまり。
未来から来たはずなのに。
未来に存在していない。
---
ルナはミラを見る。
優しく。
そして悲しそうに。
「久しぶりだね」
ミラが固まる。
「……私を知ってるの?」
「知ってるよ」
ルナは笑う。
「あなたは私の恩人だから」
---
ミラの記憶にない。
だが。
ルナは確信している。
---
レオンが混乱していた。
「整理するぞ」
「うん」
「そなたは未来から来た」
「うん」
「朕の妻だ」
「うん」
「ミラの知り合いだ」
「うん」
「つまり家族か」
「違います!!」
ミラとルナが同時に叫んだ。
---
広場に沈黙。
レオンだけが不思議そうな顔をしている。
---
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……
空の巨大時計が動き始める。
歯車が回転する。
嫌な音。
世界が軋む音。
---
ルナの表情が変わる。
初めて笑顔が消えた。
「来る」
ミラも気づく。
「まさか……」
---
時計の中心。
空間が裂ける。
そこから現れたのは。
巨大な黒い影。
人の形をしている。
だが人ではない。
顔がない。
目がない。
感情がない。
---
『歴史執行者』
---
未来管理局最強戦力。
世界線そのものを守る怪物。
---
民衆が悲鳴を上げる。
衛兵たちも震える。
クロードですら青ざめていた。
「馬鹿な……」
「執行者まで出てくるのか」
---
ルナが静かに言う。
「レオン」
「なんだ?」
「逃げて」
「断る」
即答だった。
---
「危険だよ?」
「民がおる」
「死ぬかもしれないよ?」
「なら守る」
---
ルナは少しだけ笑った。
懐かしそうに。
「やっぱり変わらないね」
---
次の瞬間。
執行者が手を振る。
それだけ。
それだけで。
広場の石畳が吹き飛んだ。
建物が崩れる。
空気が裂ける。
---
「うわあああああ!!」
悲鳴。
混乱。
絶望。
---
だが。
レオンは前へ出る。
たった一人で。
---
「朕はな」
静かな声。
---
金色の光が溢れる。
優しい光。
温かい光。
---
「寂しがりなのだ」
---
光が広がる。
民を包む。
街を包む。
恐怖を包む。
---
「だから」
---
レオンは笑った。
いつもの笑顔で。
---
「皆が泣くのは嫌いだ」
---
その瞬間。
帝都全体を覆うほどの光が爆発した。
---
ルナの目が見開く。
ミラも言葉を失う。
クロードですら震える。
---
未来に存在しない力。
記録にない奇跡。
---
そしてルナは呟く。
「始まった……」
---
ミラが聞き返す。
「何が?」
---
ルナはレオンを見つめる。
愛しそうに。
悲しそうに。
---
そして言った。
---
「皇帝レオンが、世界を救う物語が」
---
## 第七章・終
---
### 次回
**第八章
「皇帝の力の正体」**
ついに明かされる、
レオンの金色の光の秘密。
そしてルナが隠していた
「未来でミラに起きた悲劇」が語られる――。




