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第八話:雷鳴の峡谷と麗しの射手

野盗の声が峡谷に響き渡ると同時に、霧の中から卑俗な笑みを浮かべた男たちが次々と姿を現した。その数は三十をゆうに超える。 「ロドルフ、来るわよ!」 ルピーネは剣を構えたが、多勢に無勢。ロドルフがハルバードを旋回させ、先陣の数人をなぎ倒して奮戦するが、その隙を突いて大柄な四人の男がルピーネを包囲した。


「逃がさねえぞ、別嬪さん」 一人が背後からルピーネを羽交い締めにし、二人がかりで彼女の両脚を浅瀬の岩盤に押さえつけた。 「きゃあああっ!」 最後の一人が笑いながらマチェットを振り下ろし、彼女のマントを切り裂く。上衣が裂け、脇から腰にかけての白い肌と、そこに刻まれた「紋様」が露わになった。


「こいつ、肌がスベスベだぜ。売る前に味見してやろう」 興奮した野盗の下卑た手つきと言葉に、ルピーネの目に涙がせり上がる。「ルピーネ!! くそっ、やめろ!!」 ロドルフの絶叫。


その時、ルピーネの肩に乗っていたルークの瞳が、これまでにないほど激しく紅く燃え上がった。 《ママを、はなせッ!》 ルークの咆哮が脳内に響いた瞬間、彼女の身体を抑えていた二人の手首から先が、瞬時に焼け焦げ、炭となって濁流に落ちた。 「ぎゃああああ! 手が、俺の手がぁっ!」 「化け物だ! 殺せ、そいつを殺せ!」


混乱の中、残った賊の一人がルピーネの手首を捻り上げ、もう一人がルークの尻尾を掴んで空中で振り回した。目を回すルーク。さらに奥から数人の賊が駆け寄る。絶体絶命、そう思われた時。

――シュ、シュ、シュ! 軽快な連続音が響き、ルピーネを抑えていた男たちの喉元に正確に矢が突き刺さった。


「やあ、助太刀するよ。ずいぶん物騒なことになってるね」 のんびりとした、鈴を転がすような声。 岩棚の上に立っていたのは、たなびくシルバーブロンドの髪に、サファイアブルーの瞳を持つ、絶世の美形――エルフの青年だった。彼は手にした奇妙な連射式クロスボウを構え、流れるような動作でさらに二人の野盗を射抜いた。


《ママ!》 山賊の手から逃れたルークが、目をパチパチとさせて、ルピーネに合図をする。「ロドルフ、川から出て!」 ルピーネの声で、ロドルフが目の前の賊を薙ぎ払って、後方の岩場へ上がる。ルピーネ自身も水から上がった瞬間、ルークの身体が激しい雷光に包まれた。 ドォォォォォン!! 川に落ちた特大の雷撃が水を伝い、残っていた野盗たちを焼き払う。動かなくなった男たちは濁流に飲み込まれ、残った数人は悲鳴を上げて逃げ去っていった。


「おお、凄いね。手助けは不要だったかな」容姿端麗なエルフの射手は、飄々とした態度で岩場を降りてきた。「エルフって本当にいたんだ…」とルピーネは口の中で呟いた。


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