第六十四話:独身者の夜と友情の火
式前夜。本来は男女別で行われる「独身最後のパーティー」は、ロドルフの「ルピーネと片時も離れたくない」という強硬な主張により、異例の合同開催となった。
村の広場では射撃や格闘競技に興じる獣人戦士たちの熱気が渦巻く。娘たちが周りで黄色い声援を送る中、次の選手として現れたのは、なんと花嫁のルピーネだった。彼女は前に出ると、投石器一閃で全ての的を粉砕する。 「すげー、これは尻に敷かれるな、ロドルフ!」 周りが囃し立てる中、ロドルフは組打で若手戦士たちを次々となぎ倒していく。誰も彼に敵わないかと思われた時、アルヴィンが上着を脱いで参戦した。娘たちの黄色い声が上がる。 「公爵様に一発くらわせてやれ、色男!」 「アルヴィン様、頑張って!」 最後、引き分けに持ち込んだアルヴィンに、ロドルフが囁く。 「手加減しただろ、お前」 「花婿の顔に傷をつけて、ルピーネに恨まれたくないからね。でも、ロドルフがすごく強くなっていて、少し焦ったよ」
日が沈み、若者たちは大きな焚火を囲んで夕餉を楽しむ。酒が回ってきたらしく、ロドルフの友人の一人が大声で言った。 「いやー、収まるところに収まってよかったよ。二人は昔からいっつも一緒にいたからな」 「ロドルフは昔から、ルピーネに近づく男をすごい目で睨んでたもんなあ」 「してねえよ!」 ぶっきらぼうに返すロドルフ。だが、焚火の火のせいか、その顔はひどく赤く見えた。
「俺たちの前ではよく冗談や軽口を言うのに、ルピーネの前だと無口だったもんなー、こいつ。どんな顔で口説いたんだか」 男友達の冷やかしは終わらない。 「別に、ルピーネとは話さなくても、考えていることとか、わかるし」 モゴモゴと呟くロドルフに、アルヴィンが追い討ちをかける。 「狼獣人は『番』を独占したい本能が強いって言うからね」
「で、ルピーネはロドルフのどこがいいんだ?」 急に自分に矛先が向いたルピーネが言葉に詰まると、彼女の膝にいたルークが代わりに答えた。 「ローは、強くて、優しいー!」 「……そうね、いつも私たちを守ってくれて、一緒にいると安心する……」 釣られて思わず本音を漏らしたルピーネは、直後に真っ赤になって両手で顔を覆った。 「もう勘弁してくれ……」 照れまくるロドルフを横目に、場は一層の盛り上がりを見せる。
「ところでアルヴィン様は、いい方はいらっしゃらないんですか」 もはや公爵様にも随分と気安くなった村娘たちが水を向ける。 「この二人みたいになれそうな、素敵な『運命の番』がなかなか見つからなくてね」 瞳に夜空を映したエルフの貴公子の妖艶な笑みに、女たちから今夜一番の嬌声が上がった。
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