第五十八話:重大な誤解と銀の指輪
帝都へ戻り、「新月宮」でのいつもの日々が始まった。 ロドルフは、アルヴィンがルークの銀の首輪を新調する際に、古い方の首輪を密かに譲り受けていた。ある決意を胸に、それを馴染みの鍛冶屋へと預けていたのだ。
数日後の夕方、出来上がった銀の指輪を手に、ロドルフはルピーネの部屋を訪ねた。だが、半開きになった扉の隙間から見えた光景に、彼の心臓は凍りついた。 部屋の中では、アルヴィンがルピーネに覆い被さるように顔を近づけ、何やら囁き合っていたのだ。
「ここが、いいの?」 「うん、でも、もうちょっと長くしたいなあ」 「あっ、痛っ。ちょっとだけきついかも……」 「ごめん、優しく触るからね」
艶めいた会話――。だが真実は、成長したルークの体格に合わせて、アルヴィンがルピーネのエルフのマントのフードサイズを調整していただけだった。そうとは知らないロドルフは、青ざめた顔で廊下に立ち尽くす。 「あ、ロドルフ。どうしたの?」 ルピーネが気づいた時には、ロドルフはその場から逃げ出そうとしていた。 「こ、これ! 言ってたやつ、できたから!」 ロドルフは震える手で銀の指輪をルピーネの手のひらに押し付けると、用意の言葉も告げられぬまま、自室へと逃げ帰った。
「変なロドルフ。……何かしら、これ」 呆然とするルピーネに、一部始終を察していたアルヴィンが肩をすくめて助言する。 「君たちは、もう少し二人でゆっくり話をしたらいいと思うよ」 (……根性なしめ) 心の中で毒づくアルヴィンを余所に、一人残されたルピーネは手のひらの指輪を見つめた。 「これ、ルークの元の首輪で作ったのね。模様が同じだもの……」 彼女は意を決し、ロドルフの部屋の扉を叩いた。




