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第五十六話:悪魔の蔦と森の秘湯

里での滞在中、一行は予期せぬトラブルの解決を頼まれた。ある日の晩餐の席で、エルヴィン大公が切り出したのだ。 「アルヴィン、それに『白銀の疾風』のお二方。一つ調査を頼まれてはくれないか。今朝、セシリアに相談されてな」 ここ一ヶ月ほどの間に、里の象徴であるオークの古木をはじめとする植物が、徐々に枯れ始めているのだという。 「この分は報酬を追加して払おう。なあに、義父ちち上がいくらでも出す、と仰られているしな」 アルヴィンの父親は、愛妻であるセシリアと、その父である領邦君主にはめっぽう弱いらしい。


翌朝、早起きした一行はルークを連れて、郷の水源にもなっている霧の谷の奥地「水晶の泉」へと向かった。護衛は邪魔だと断ったものの、アルヴィンの案内では不安なため、護衛騎士に詳細な地形図を書いてもらった。 ルークとロドルフが先導し、数時間歩いた後、一行は頭上がぽっかりと開けた空間に辿り着いた。 「なんだかここ、変な臭いがしねえか?」 ロドルフが鼻をクンクンさせる。流石は獣人の嗅覚だ。 「うん、するわ。多分、この蔦が臭いのよ」 ルピーネも同意し、アルヴィンがその先を凝視する。 「水源の泉が澱んで濁っているね。……あっ、これは『悪魔デビルアイビー』だ。お手柄だよ、よく見つけたね」 在来種の蔦に擬態し、木の根や幹に潜り込んで森の魔力と生命力を根こそぎ吸収する、極めて厄介な寄生植物だという。


「昔、絶滅したと思われていたけれど、一部が生き残って復活しちゃったんだね」 アルヴィンはのんびりとした口調で続ける。 「根を残さないよう、全てを魔力で焼き切らなきゃいけないから面倒だし、結構な魔力を消費するんだけど……この面子メンツなら大丈夫かな」 「ルーちゃん、ちょっと力を貸して。僕のクロスボウの矢筒に、思いっきり光の魔力を注いでもらっていいかい?」 「キュイ。やるー!」 ルークは自分の役割を理解したようだ。 「それじゃあ、次。ルピーネ、僕がクロスボウを連射したらすぐ、着弾点すべてに魔導スリング弾を放ってくれる? ルーちゃんは、その時にルピーネの投石器スリングへ火の魔法を通して。こっちはやや加減して、そおっとね」 「じゃ、いくよ、せーの!」


アルヴィンが光の矢を連射すると同時に、ルークの火の魔力を乗せたスリング弾が後を追う。光と火の魔法の奔流が悪魔の蔦を焼き尽くし、寄生植物が一掃された水源からは、再び清らかな水が溢れ出した。 念のため、ロドルフとルピーネがにおいで、アルヴィンが目視で取り残しがないかを確認し、任務は無事完了した。


夕方、王宮に戻った一行を、領邦君主とセシリアは大歓待で迎えた。 「これは報酬とは別だ。エルフの祈りを込めた水晶だから、治療魔法の触媒に使いなさい」 手渡された貴重な素材の数々に、アルヴィンも「陛下ラインハルトへ良い土産ができた」と満足げだ。 頼まれた件が無事解決して、面目を保ったエルヴィン大公は、アルヴィンの母、セシリア姫に鬱陶しいぐらいに纏わりついているが、所詮は美男美女、眼福でしかない。



その晩、三人は君主自慢の風呂へと案内された。 森の香りが漂う蒸し風呂と、満天の星を仰ぐ露天風呂。 「混浴もあるけれど、男女別にしようか。ロドルフ、君はこっちだよ」 「ま、待て、アルヴィン。引っ張るな!」 「ここの風呂は最高なんだ。また背中を流してあげようか?」 微笑むアルヴィンの無邪気な問いに、ロドルフは既に湯気に熱せられたように、真っ赤に上気した顔を見せた。

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