第五十二話:海の魔物と白竜の嗅覚
読んでいただきありがとうございます。【1,000ユニークアクセス超え記念企画】として書きましたが、本編にうまく繋がりましたので本編の一部として書きました。全三話の一話目です。
帝都ギルドへ戻った一行を待っていたのは、ギルド長直々の特命依頼だった。 「ようやく準備が整った。通常の二倍もの体長を誇る『海の魔物』二頭の討伐だ。すぐに南の漁港都市へ向かってくれ」 二ヶ月余りの待機期間は、事前にギルドによる実地調査を行い、神出鬼没な魔物の数と出現場所を特定するために必要だったらしい。
魔導馬車に揺られること三日。目の前に広がった鮮烈な青に、一行は歓声を上げた。 「これが海かー!」「綺麗……!」「うわ、水が本当にしょっぺーな!」 水に手を浸してはしゃぐ彼らを、アルヴィンが目の前の海の色を映し取ったかのような瞳で、眩しそうに眺める。 「君たち、海を見るのは初めてかい?」 頷く二人。内陸部にある獣人の村で育った二人にとって、水平線は未知の絶景だった。だが、ふとロドルフが我に返ったように呟く。 「……ところで俺たち、泳げたっけ?」
到着した港町は活気を失っていた。ここ三ヶ月ほど、二頭のキング・クラーケンが港のすぐ近くで暴れ回っているせいで、漁師は海に出られず、商船も寄港を拒んでいる。困窮した周辺市町村が資金を出し合い、ようやく上級冒険者パーティー『白銀の疾風』を雇うに至ったのだ。
ギルド調査員の報告を受けた後、『白銀の疾風』一行は、三人乗りの小舟を手配して、早速大洋に漕ぎ出した。キング・クラーケンの気配を探りつつ、慣れない海上での戦闘訓練も開始する。獣人の二人は、持ち前の運動神経でコツを掴み、一時間ほどもすると海上での連携もすぐに形になってきた。
キング・クラーケンがよく出没していると報告を受けた海域にさしかかった時、沖合から来る高波と、同時に岸辺から打ち返される大波が小舟を翻弄し、ルピーネが一瞬で波にさらわれる。ロドルフはすぐさま飛び込んで救出に向かう。(おお、泳げているじゃないか。見事な犬かきだが……) 感心するアルヴィン。
二人が小舟に這い上がると同時に、ルークが妙な声を上げた。 「キュイ、キュイ!……あかちゃ、ママ、いない」 「ママならここにいるわよ、ルーク」 ルピーネが子竜を優しく抱き寄せようとするが、ルークは激しく首を振る。 「ルピィ、ママじゃない。あかちゃ、あっち!」 小さな爪が指し示したのは、キング・クラーケンなど入りようがないほど狭い、浅瀬の洞窟だった。




