第五十一話:戦士の帰郷と白銀の角
獣人村での滞在中、ロドルフの19歳の誕生日が巡ってきた。 かつて村一番の有望株として人気者だった戦士が、今や帝都でも名の知れたA級冒険者として凱旋したのである。村の娘たちがロドルフを放っておくはずもなく、お祝いの席では若い娘たちが順番を争うように彼を取り囲み、黄色い声を上げていた。 そんな様子を遠巻きに眺めていたルピーネは、胸の奥がチリりと痛むのを感じていた。 「……何よ、あんなに鼻の下を伸ばしちゃって」
献杯の列を外れ、少し夜風に当たろうと、逃げるように宴会場を出た彼女の後を、いつの間にか宴を抜け出してきたロドルフが追う。 「なんだ、ルピーネ。その態度……もしかして妬いているのか?」 軽口を叩いた彼は、その琥珀の瞳が、今にも雫が零れそうなヘーゼルの瞳を捉えた途端、激しく狼狽した。
「……別に。ロドルフがモテるのは、今に始まったことじゃないでしょ」 ふいっと顔を背ける彼女の肩を、ロドルフは夢中で抱き寄せた。その腕の逞しさと、ほんのりと香る酒の匂いに、ルピーネの心臓が激しく跳ねる。 「俺が傍にいて守りたいのは、昔からたった一人だけだよ」 耳元で囁かれた低く切実な声に、ルピーネは顔を真っ赤にした。
「……しゅ、主役がこんなところにいていいの?」「アルヴィンの奴を代わりに置いてきたから、当分は大丈夫だ」呟いたロドルフの熱い息がルピーネの肩にかかる。二人はしばらく寄り添ったまま、花の香りを運ぶ夜の風と、お互いの息遣いを感じていた。
その晩、両親からルピーネへ、一年遅れの成人の贈り物が手渡された。それは祖母から父に託された、曽祖父の「白銀の角」の一対だった。 「これはお前が持っているのが一番いいと思ってね」 父の言葉に、母も優しく頷く。
その大切な形見の品をアルヴィンに見せると、彼はその輝きを見つめて言った。 「ルーちゃんが思ったより早く成長しているから、もう少し大きな首輪を新調しようと思っていたんだ。よければこの角の一つを君の腕輪に、もう一つをルークの新しい首輪に埋め込んであげるよ。竜人の末裔の加護は、二人にとって最高のお守りになるんじゃないかな」 「とても素敵なアイデアだわ。アルヴィン、ありがとう!」
村では、帝国の英雄となった『白銀の疾風』一行の定住を望む声も多かった。しかし、彼らには帝都で待つ上級クエストと、何より広大な世界を自分たちの足で歩んでいく意志があった。 数日後、両親と小さな弟クルトをもう一度しっかり抱きしめてから、ルピーネは晴れやかな笑顔で再び村を後にした。 その隣には、以前よりも肩の距離が近くなったロドルフが、誇らしげに並んでいた。
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英雄たちの凱旋です
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