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第四十八話:蒸風呂と極上の葡萄酒

晩餐を前に、リヒャルトから蒸し風呂を勧められた。エルフの郷でその素晴らしさに魅了されたエルヴィンが、帝国の各宮殿に作らせたものだという。


アルヴィンとロドルフは男湯へ。見たこともない豪奢な浴場に、ロドルフはまた少し緊張する。 「アルヴィン…さん、背中、流します」 (細身に見えて、脱ぐと凄まじい筋肉だ。流石はS級ランク……) アルヴィンの鍛え上げられた肉体に感心していると、 「交代だ、今度は僕が洗ってあげよう。……やあ、実にいい背筋だね」 「いや、こ、公爵様に……不敬ですから! ……って、うわっ!?」 宮殿で皇族に背中を流されているという事態に、ロドルフの思考は容量キャパを超える。蒸し風呂の気持ちよさにぼーっとしていると、不意に尻尾を掴まれた。 「あっ、尻尾、だめぇっ!」 変な声が出てしまい、慌ててアルヴィンから尻尾を取り返して、自分で洗う。 「おや、のぼせてしまったのかな……」 涼しげな顔のアルヴィン。お貴族様の距離感は、時としてあまりにも危険だ。


風呂上がり、ロドルフは侍従と従僕に捕まり、肌や髪、さらには尻尾まで念入りに手入れをされた。 (お貴族様の生活ってのは、恐ろしいな……) 一方、ルピーネも女湯を満喫していた。ふと腰に目をやると、あれほど鮮やかだった紋様は、随分と薄くなっている。


その後それぞれサロンに戻り、冷えた飲み物で喉を潤した。 「お待たせしました」 現れたルピーネは、侍女に磨かれた肌を上気させ、上質な絹のドレスに身を包んでいた。その眩しさに、ロドルフの心臓が跳ねる。 しかし、それ以上の衝撃はアルヴィンだった。湯上がりの彼は、普段の麗人っぷりをさらに上回る、圧倒的な色気を放っていた。ルピーネも頬を染めて、ぼーっとしている。 「良い湯だったな。父上からいい葡萄酒ワインを貰ったんだ。ルピーネも成人しているし、少しいただこうか?」 まだ少し濡れた髪をかき上げながら微笑むアルヴィン。 (……ダメだ。このアルヴィンと酒を飲むのは、危険だ) ロドルフの眉間に深い皺が寄ったが、結局、二人とも差し出されたグラスを拒めなかった。


極上のワインのおかげか、ルピーネもロドルフも程よくほろ酔いになり、先帝たちとの晩餐もそれほど緊張せずに楽しむことができた。



離宮で一晩を過ごし、翌朝、新月ノイモンド宮へと戻る三人を、エルヴィン大公が見送りに来た。 「楽しい夕べだった。また会おう。今度は『幸運の竜』も連れてきてくれ」 そしてアルヴィンにサファイアの瞳を向ける。 「そういえば、お前、来週が誕生日だったろう。70歳の成人の儀にはまだ一年あるが、ロックバードの魔石がいくつか手に入ったんだ。持っていけ」 ずっしりと膨らんだ革袋を渡す。 「父上! ありがとうございます!」希少な魔石を手に入れて嬉しそうに目を輝かすアルヴィンを尻目に、ロドルフは驚愕していた。


帰りの馬車で、ロドルフが抗議の声を上げる。 「ちょっ、お前……成人式、まだだったのかよ。散々大人オレをからかっておいて……」 「エルフの成人なんて、形式的なものだよ。肉体的には50歳にもなれば十分成熟しているからね。特に僕はスリークォーターエルフだし」 アルヴィンはこともなげに言う。ロドルフは昨日の蒸し風呂でのアルヴィンを思い出し、首まで赤くして沈黙した。

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