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第四十七話:青玉の瞳と遺伝の回廊

数週間後、一行は貴族のお忍び風の衣装を纏い、帝都の東に位置する離宮へと向かっていた。アルヴィンの父である前々帝エルヴィンと、兄の前皇帝リヒャルトに冒険の報告を行うためである。


「あ、あの……本当に私たちが大公殿下や前皇帝陛下にお会いしてもいいの?」 近衛騎士が護衛する帝国の魔導馬車に揺られながら、ルピーネが緊張した声で尋ねる。 「構わないさ。隠居した老人たちだよ。父上も兄上も、君たちに会うのを心待ちにしている」 アルヴィンは事もなげに言うが、ロドルフもまた、借りてきた猫のように神妙な面持ちで座席に鎮座していた。


普段は近隣の宮殿に別々に暮らす先帝たちだが、この日は前皇帝リヒャルトの離宮に大公エルヴィンが訪れ、一行を待ち構えていた。豪華な調度品で飾られた応接室で出迎えたのは、黒髪に深いサファイアブルーの瞳を持つ、二人のよく似た美丈夫であった。 (「隠居した老人」の概念が根底から覆されるわ……)


跪いて挨拶する三人を立たせ、前皇帝が口を開く。 「三人とも楽にしてくれ。私がアルヴィンの兄のリヒャルト、こちらにいらっしゃるのが父帝のエルヴィン公だ」 (えっ、こちらが大公殿下……?) ルピーネたちは混乱した。93歳のエルヴィンの方が、71歳のリヒャルトよりもさらに若々しく、まるで40歳そこそこの男盛りのように見えるのだ。 「本当にエルフの血ってのは、常識が通じねえな……」 ロドルフが呆れたように独りごちた。


「ここでは落ち着かないな。談話室サロンに行ってゆっくり話を聞こうではないか」 エルヴィンが優雅に踵を返し、颯爽と歩き出す。だが、すぐさまリヒャルトが苦笑しながら声をかけた。 「父上、サロンは反対側の回廊ですよ」 「……おっと、そうだったかな」 悪びれもせず戻ってくる大公の姿を見て、ロドルフとルピーネの目が合った。 (これ……アルヴィンの『方向音痴』、確実に遺伝だわ)


和やかなサロンでの歓談中、リヒャルトが唐突にアルヴィンへ問いかけた。 「ところでアルヴィン。もしやこちらのお嬢さんは、お前のいい人なのかな?」 「ぶっ……! いや、大事なパーティーの仲間ですよ、兄上」 思わず吹き出したアルヴィンに、リヒャルトはさらに畳みかける。 「そうか。では、こちらの彼が……」 「「ち・が・い・ま・す!!」」 食い気味に否定したロドルフとアルヴィンを見て、リヒャルトは楽しそうに笑った。 「いや、すまないね。長い付き合いだが、この弟が他人にこれほど心を許し、楽しそうにしている姿を初めて見たものだから」 その言葉に、三人は照れくさそうに顔を見合わせた。

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