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閑話(ザムエル):陰に追われた男

ギルドの受付で、卑屈な目つきで依頼を捌くザムエルにも、かつて「色男」と呼ばれた時代があった。


地方都市でE級冒険者をしていた若き日の彼は、その整った容姿を武器に、ある年上の貴族の未亡人の寵愛を受けていた。平民である自分の口づけ一つで、優雅を装う高貴な身分の女がいとも簡単に身を委ねる様は、ザムエルの青臭い自尊心を大いにくすぐった。


町の有力者であった未亡人の後ろ盾を得て、彼は良い依頼を優先的に回され、瞬く間にCランクへと昇りつめた。(全く打算がなかったとは言わない……だが、あの方の寂しさに触れ、情を感じていたのも事実だ)


しかし、周囲の目は冷ややかだった。「あいつは実力で上がったんじゃない。ただの男娼だ」という陰口が、常に彼の背につきまとった。


その評判を実力でねじ伏せようと、彼は分不相応な高難度の魔物討伐クエストに挑み、再起不能に近い重傷を負ってしまう。パトロンであった未亡人は、脚に酷い怪我を負い、冒険者としての輝きを失ったザムエルに興味を失い、何も言わずに去っていった。


夢も女も地位も失い、帝都の冒険者ギルドで事務方の仕事を得るまで、ザムエルはそれこそ泥水を啜るような日々を送った。 「才能のある奴も、運のある奴も大嫌いだ」 彼が今の捻くれた性格になったのは、その時の醜い傷跡が今も疼くからだった。


そんなザムエルが、眩しいほどの光を放つ『白銀の疾風』の三人を、どんな目で見つめればいいのか。答えは彼自身にも分からなかった。

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