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第四十三話:死闘と『虚無』の広がり

クロケルの力は、まさに圧倒的だった。 ルピーネは紅炎を纏わせた両手剣ロングソードを振るい、ロドルフはルークの魔力を込めた雷光の鉄斧ハルバードを叩きつけ、アルヴィンは疾風のごとき片手剣レイピアの刺突を繰り出す。しかし、三人と一匹の懸命な応戦も、クロケルが指先一つで放つ闇の奔流に、容易く散らされた。


既に二時間はこの状況が続いているだろうか。冒険者ギルドが誇る『白銀の疾風』自慢の連携攻撃も、この悪魔には全く効いていないようだ。 「どうした? 塵芥ちりあくたなりに、もう少し我を楽しませてくれよ」 楽しむように言う悪魔クロケル。一行は、彼の暴力的な魔力の大きさに翻弄され、防戦一方のままふみにじられていく。


一方で、主の魔力に呼応するように『虚無』が拍動を速めていた。少し離れた盆地に形成されていた黒い沼は、周囲を貪り食いながらみるみる膨張し、既に三人の足元にまで、その死の境界線を広げて来ていた。このまま一行が飲み込まれてしまえば、世界の崩壊は決定的なものとなるだろう。


「……させるか!」 アルヴィンが叫んだ。彼は懐から竜笛を取り出し、鋭くひと吹きする。人の耳には届かぬ無音の音に導かれるように、ルークが空から急降下し、アルヴィンのクロスボウに光の魔力を注ぎ込んだ。 「行け!」 光を宿した矢の連射が、初めてクロケルの影を射抜く。 「ちっ、鬱陶しいな」 苛立ったクロケルが闇の魔力を乗せてつぶてを放った。それはアルヴィンの上半身を掠め、彼を背後の巨岩へと激しく叩きつける。


「アルヴィン!」 「……気にするな、今だロドルフ!」 岩陰で呻きながらもアルヴィンが叫ぶ。わずかな隙を突き、ロドルフが渾身の力でハルバードを振った。 「おおおおおっ!」 天を割るような特大の雷撃がクロケルの足元に直撃し、大地を揺らす。激しい電光に焼かれ、その周囲の『虚無』が一挙に消滅した。 「……ほう、少しはやるじゃないか」 ニヤリと笑うクロケルは、しかし無傷だ。


一方こちらでは、アルヴィンは肩を強打し、ロドルフも息が上がっている。 おまけに、三人とも、身体のあちこちに血が滲んでいる。『白銀の疾風』はかつてないほどに追い詰められていた。絶体絶命の状況のなかで、満身創痍のルピーネはぼんやりと考えた。 (ルークの家族を探しに来たのよ。こんなところで死ぬわけにはいかない)

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