第四十話:炎の戦士と夜の問題
「ロドルフ、雷撃でもう一度奴らの手足を切り落として! アルヴィンはレイピアで急所を狙って! 私の火で再生を止めるわ!」 ルピーネの凛とした号令が響く。彼女はもはや、守られるだけの少女ではなかった。
ロドルフが腕を一閃すると、強化されたハルバードが咆哮し、巨人の脚を「雷光」が焼き切る。体勢を崩した巨人の喉元へ、アルヴィンのレイピアが吸い込まれるように突き立てられた。 「無駄だよ。この刃は魔力の流れを断つ」 アルヴィンの華麗な剣捌きが巨人の魔力循環を乱し、再生を遅らせる。
「行くわよ、ルーク!」 ルピーネが魔導スリングを大きく振りかぶり、指先の炎を装填して放った。 「燃えろ――!」 着弾した炎は、瞬時に巨人の全身を包み込む「紅炎」へと化し、傷ついた肉体を再生する間もなく焼き尽くした。魔女が竜の残り香を宿すと言ったその火は、トロールの魔力すら無効化する絶対的な熱量を持っているようだった。
二時間後、最後の一体が灰となって崩れ落ちた時、吹雪がわずかに凪いだ。 「……Bランク昇級試験なんて、受けるまでもないかもしれないね」 アルヴィンがレイピアの雪を払い、余裕の笑みを浮かべる。ルピーネは、まだ少し熱を帯びている自分の指先を見つめた。
ルピーネの腰の紋様は、戦う前よりも熱を帯びている一方で、アザの色は以前よりも薄くなっているようだった。 「ルピィ、やった! ルー、つよい!」 誇らしげに胸を張るルークを抱き上げ、ルピーネは北の空を見上げた。魔女が警告した『虚無』の気配が、黒い霧となって山腹を這い回っているように見え、彼女は小さく身震いした。
その夜の最大の問題は、二つ残されたテントにどういう組み合わせで寝るか、ということだった。ひそひそと相談するアルヴィンとロドルフ。 「君とルピーネでいいのでは?」 「そ、そんなの無理だろっ!」 「じゃあ僕とルピーネで寝る?」 「いやっ、それは絶対許さんっ!」
結局、ルピーネがテントを一つ使い、アルヴィンとロドルフが二人で同じテントで寝ることになった。 (ロドルフの顔が少し赤いけど、熱があるわけじゃないわよね?) ルピーネは、妙に落ち着かない様子の仲間が少しだけ心配になった。




