第三十九話:霜の巨人と雷光の攻防
さらに山頂を目指して歩を進めた数日後、夜も昼も真っ白な世界が続く中での夜明け前。 「ルピィ! てきー」 ルークが隣で寝ているルピーネを起こした。ルピーネは跳ね起きてテントから這い出し、隣の二つのテントに呼びかける。 「アルヴィン、ロドルフ、起きて!」
三人が急いで荷物をまとめていると、地響きと共に現れたのは、この地の主とも言うべき「霜の巨人」の小隊だった。三メートルを超える巨体に、氷の塊のような棍棒や戦鎚を手にしている。その一体が、まだ畳んでいなかったルピーネのテントを踏み潰した。 「あーあ、サラマンダーの魔石をまぶしたエルフの布を裏地に使った、軽くて自慢の防寒テントなのに!」 アルヴィンが頬を膨らませてむくれる。
「俺がこいつらの足を止める! 二人は後ろから隙を突いてくれ!」 ロドルフが前に出た。巨人の放つ一撃が、彼の金剛鉄製のプレートアーマーをかすめるが、ロドルフは怯まない。ドワーフの鎖帷子の首元には、ヘーゼルの輝きを湛えた銀のフィビュラが光っている。
複数の巨人による戦鎚の凄まじい連撃に雪原が陥没するが、ロドルフの足は一歩も引かない。雷光を閃かせながら、凄まじい速さで十体以上いる巨人の四肢をハルバードで切り裂いていく。後方からは、ルピーネとアルヴィンが魔導スリングとクロスボウで的確に援護弾を飛ばした。
しかし、霜の巨人たちは身体に深い傷を負っても、わずかな時間で塞がってしまう驚異的な再生能力を持っていた。回復した者から強引に距離を詰めてくる。斬っても斬っても再生してくる巨人群に包囲され、ロドルフの顔に焦燥の色が浮かんだ。
その時、視界が白銀の輝きで覆われる。 「……大丈夫だ、君は強い。背中は僕が守るよ」新雪を舞わせながら軽やかに跳躍したアルヴィンが、伝説のレイピアを輝かせ、頭上からロドルフの隣に降り立った。こわばるロドルフの左手を一瞬だけ力強く握り、安心させるように微笑む。吹雪の中でも一点の曇りもない、花のように美しいエルフの貴公子の笑顔は、破壊力抜群だった。
(やばい、こいつ……うっかり惚れそうになるだろ、これ) ロドルフは一瞬だけ放心したが、すぐに気合を入れてハルバードを握り直した。 「……ああ、やってやるぜ、アルヴィン!」




