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第三十一話:皇帝の依頼と路銀の決着

「『虚無』の噂が広まれば民の混乱を招き、国は荒れるだろう。魔力枯渇の原因がはっきりしないうちは、大っぴらに騎士団を動かすわけにもいかん。他国に弱みを握られるわけにもいかないからな。……叔父上、帝国の事情を深く理解し、高度なエルフの魔法を使いこなす貴公にしか、この件は頼めないのだ」


ラインハルトは真っ直ぐにアルヴィンを見据え、言葉を継いだ。 「どうか北の大森林に向かい、魔力枯渇の理由を探り、この『虚無』の正体を見極めてはくれまいか。予算に糸目はつけぬ」


「……母上から多少は聞いていましたが、また随分と厄介な頼みごとですね、陛下。僕は発明の趣味を極めるために帝都に出てきたというのに」 アルヴィンは肩をすくめて見せたが、その瞳は既に「気楽な放浪者」ではなく、事態を冷静に分析する「当事者」の鋭さを帯びていた。


ラインハルトはルピーネたちに向き直った。 「『白銀の疾風』の二人についても、活躍は聞き及んでいる。聞けば君たちの目的の地も、今回の任務地から遠くないとか。叔父上は長年、上級冒険者として名を馳せてきたが、パーティーを組んだのは今回が初めてなのだ。そなたら二人は、よほど信頼に足るということだろう。それに、地図を任せられる者がいれば心強い」 (やはりそこなのね……。でも、確かに目的地は同じ森だわ) ルピーネは、皇帝の情報網の確かさに、内心小さく舌を巻いた。


「この調査は極めて困難で、かなりの危険を伴うだろう。だが、君たちが叔父上と共に北へ向かい、異変の原因を突き止めてくれるなら、君たちの目的に必要な分を含め、旅の全費用――移動手段、装備、食費その他は全て帝国が負担しよう。もちろん、成功報酬は別にはずむ」


「……路銀、もう貯めなくていいのか?」 ロドルフの呆然とした呟きが、書斎の重厚な空気をふっと緩めた。 アルヴィンがニヤリと笑う。 「心配するのはそこかい、ロドルフ。でもまあ、よかったね二人とも。皇帝の財布は底なしだ。これで最高の防寒具と、最高級の保存食を買い込めるよ。……ああ、もちろん僕の発明のための『特別予算』も、ね?」


ラインハルトはアルヴィンの天真爛漫な図々しさに、微かな苦笑を漏らした。 「構わん。宝物庫の鍵も預けよう。必要なものがあれば、何なりと持っていくがいい。……叔父上、そして『白銀の疾風』。この世界の明日を、君たちに託す」


こうして、元々は「仲間ルークの故郷探し」だった旅は、唐突に帝国の命運を懸けた極秘任務へと姿を変えた。

閲覧ありがとうございます

多分この辺でストーリー完結まで約半分、折り返し地点かと思います

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