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第二十九話:三頭の獅子と宮殿の玉座

ルークの「事件」から数日。帝都に再び激震が走った。 『白銀の疾風』が滞在する宿「夜空の十字亭」の前に、帝国の紋章が刻まれた豪奢な魔導馬車と、白金の鎧に身を包んだ近衛騎士団が現れたのだ。


近隣の住民が、恐る恐る遠巻きに様子を伺っている。皇帝はおろか、高位貴族の馬車ですら滅多に目にする機会はないのだ。 「三頭の獅子……ありゃあ帝国の紋章だ。本物の皇帝陛下の馬車かい。近衛までいるぞ、一体どうしてこんなところに……」 異様な緊張感と、ひそひそと囁き合う声が、宿屋の周囲に広がっていく。



数人の近衛騎士たちは宿屋内の食堂に歩を進めると、一人の青年の前で足を止めた。 「……アルヴィン・フォン・エルフェンライヒ公爵とお見受けする。皇帝陛下のお召しです」 騎士団長が深々と頭を下げた相手は、いつものように飄々とした態度のアルヴィンだった。


宿の看板娘たちは、いつものかしましさはどこへやら、無言で立ち尽くして震えている。宿主のテオドールに至っては、真っ青になって今にも倒れそうだ。 (まさか皇帝陛下が迎えをよこすような高貴な身分のお方だったなんて。こりゃあまずいぞ、親子共々、散々非礼を重ねてしまった……)


「やれやれ、思ったより早かったね。でも、大袈裟になるから迎えは要らないって伝えたはずなのになあ」 アルヴィンは、他の客と同様に驚きで固まっているルピーネとロドルフを振り返った。 「まあ、いい機会だから、君たちも一緒に来てもらおう。僕の『大切な仲間』としてね。ルーちゃんはごめん、今日は留守番していてもらえるかな」 ルークは「任せろ!」と言わんばかりに、「キュキュイ!」と力強く返事をした。



「武器は一旦こちらでお預かりいたします」 皇宮の門をくぐり、守衛所で武器と防具を預けた一行は、近衛に案内されて豪華な内装の長い回廊を進んでいった。 途中、アルヴィンの姿を目にした皇宮の重鎮らしき人々が「あ、あなた様は……」と驚愕し、一斉にその場にひざまずく。 (な、何これ。アルヴィンって本当に一体何者なの?!) ルピーネとロドルフは、ただただ驚愕して目を見合わせた。


正装に着替えさせられ、髪を整えられた後、二人は皇宮の最奥、一般の貴族ですら立ち入りを禁じられた「静謐せいひつの間」へと案内された。 そこに座していたのは、現皇帝ラインハルト。 鳶色とびいろの髪をした美丈夫だ。 四十代半ばのはずだが、三十代にしか見えない若々しい姿の皇帝は、跪く三人の姿を見るなり、自ら玉座を降りて歩み寄った。


「……叔父上。お立ちください。随分と長い間、お顔を見せてくださらなかったではないですか」 「陛下、ご無沙汰しております。それから、敬語はおやめください。今の私はしがない冒険者兼、発明家ですので」 アルヴィンは立ち上がり、差し出されたラインハルトの手をしっかりと握った。


跪いたまま皇帝に挨拶をしたルピーネとロドルフは、自分たちの仲間である「変わり者のエルフの青年」が、実は現皇帝の叔父であり、かつては帝位継承権三位に名を連ねていた皇族であることを知り、今度こそ本当に、開いた口が塞がらなかった。

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