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第二十八話:夕暮の歌声と血の証

騒動が落ち着いた翌日の夕方。 クエストから戻ったルピーネは、まだ少し元気のないルークを優しく腕に抱き、宿のテラスで静かに歌を口ずさんでいた。その歌声は、風に乗って夕暮れの空に溶け込んでいく。アルヴィンはまだ工房から帰っておらず、ロドルフはクエスト後の自主練に出ていた。最近毎日夜遅くまでハルバードを振っているらしい。



「……歌が上手いんだね。何の曲だい?」 背後からかかった声に、ルピーネは肩を揺らした。そこには、夕日を背負ったアルヴィンが立っていた。


「びっくりした。……歌の名前は知らないんだけど、私が5歳の頃に亡くなった祖母が教えてくれたの。覚えているのは数曲だけだけど、物悲しい曲調のものが多くて。村でみんなに避けられていた時、一人で丘に登ってよく歌っていたの。そうすると、不思議と気持ちが落ち着いたから」


アルヴィンは隣に並んで、坂の下の街並みをじっと見つめた。 「実は、僕の祖父は人族でね。僕には四分の一だけ、人間の血が混じっているんだ」 ポツリと漏らした言葉に驚くルピーネに向けて、アルヴィンは苦笑して続けた。 「外見はエルフの血が勝ったみたいだけどね。もしかするとそのせいで、僕はエルフの国に腰を落ち着けていられないのかもしれない。君が故郷に居場所がないと感じる気持ちも、少しわかるよ」


「アルヴィンでも、そんなふうに思うの?」 「エルフは元々、外の世界を怖がるんだ。出生率が低くて人口も少ないし、外見のせいで攫われることも多い。国の外に一生出ない者も多いよ。でも、僕は血筋のせいか、外の世界も見たかった。ルークが自分と同じ仲間を探しに行きたい気持ちも、理解できるな」 アルヴィンはそう言った後、黙り込んだ。


誰よりも強く、万能に見えるエルフの青年が、自分と同じような「孤独」を胸に抱えている。いつもより優しい眼差しでルピーネを見つめるアルヴィンに、彼女の胸の鼓動は早くなり、ルークを抱く腕に思わず力が入った。


「私の目と髪の色は、祖母譲りなんだって」 沈黙に耐えられなくなったルピーネが呟き、ヘーゼル色の瞳を伏せた。 「そうなんだ。狼獣人は黒や茶、アンバーの瞳に同色の髪が多いからね。確かに君のダークシルバーの髪とヘーゼルの瞳は珍しい。……僕は、とても綺麗だと思うよ」


夜のとばりが下りる中、アルヴィンの慈しむような眼差しと低い声は、震えるほどにルピーネの胸を打った。

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