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第二十三話:地蟲の攻撃と強い痛み

その日は、いつもより空気が張り詰めていた。帝都から東へ半日ほど馬車を走らせた先にある、太古から続く鍾乳洞。そこで最近発見されたという魔物の巣の掃討依頼を受けていた。今日はルークがアルヴィンについて行っているので、二人だけでのクエストだ。


「この先、瘴気が濃くなるんだって。気をつけて」 ルピーネがミスリル剣を構え、念のために口と鼻を布で覆って、洞窟の奥へと進む。薄暗い通路には不気味な魔力の淀みが満ち、彼女の狼の耳が警戒するようにピクリと動いた。 「分かってる。ミスリル剣が効かない奴が出てきたら、任せろ」 ロドルフが同じく布マスクを装備して後に続く。彼のハルバードは光り輝く白銀の雷光を放ち、洞窟の壁を照らした。


洞窟の奥深く、彼らは巨大な地蟲じむしの群れに遭遇した。きらきら光る硬い甲殻を持つが、毒性の液体を吐き出す厄介な魔物だ。 ルピーネが先陣を切り、素早い動きで地蟲の甲殻を切り裂いていく。ロドルフのハルバードが群れの真上に特大の雷を落とし、大方が駆除できた時、天井近くの壁面に潜んでいた特別に大型の一体が、不意を突いてルピーネに飛びかかった。


「ルピーネ!」 咄嗟にハルバードで受け止めるロドルフだが、防ぎきれなかった毒液が腕にかかり、皮膚を焼いた。 「くそっ……っ!」 ロドルフの腕から焦げ付くような匂いが立ち上る。ルピーネが急いでその大王地蟲を仕留めて、こぼれた魔石を回収するが、ロドルフの右腕は見る間に赤く腫れ上がり、水膨れができていた。


ギルドに戻る馬車の中で、ロドルフは呻き声を上げていた。腕は熱を持ち、みるみるうちに高熱が出てきた。 「大丈夫?しっかりして!」 ルピーネが心配そうに額に手を当てるが、そこは燃えるように熱く、ロドルフの意識は朦朧としている。


夜、「夜空の十字亭」の一室。 熱を出してうなされるロドルフを、宿屋の娘であるヴァネッサが甲斐甲斐しく看病していた。彼女は濡らした布で彼の額を冷やし、アルヴィンが持ってきた薬湯を飲ませようとしている。 「……んん、ルピ……ネ……」 ロドルフの口からこぼれたのは、ルピーネの名前だった。ヴァネッサはそれには気づかず、優しい声で話しかける。 「無理しないで、ゆっくり休んで。熱が早く下がるといいわね」


ちょうど夕食のスープを持ってロドルフの部屋を訪ねたルピーネは、その光景を扉の陰から見ていた。 (……何よ、ヴァネッサったら。ロドルフが弱っているからって、そんなに馴れ馴れしくして……)


看病をしてくれているのはありがたいことだと分かっているのに、ルピーネは胸の奥に、今まで感じたことのない、ざらりとした痛みを感じていた。それは、ロドルフへの心配とは少し異なる、形容しがたい感情だった。

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