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第二十二話:重圧と旅の準備

【ここまでのまとめ】


・パーティー名:『白銀シルバー疾風ゲイル


・冒険者ランク:Cランク(帝都最速記録)


・ルピーネ:狼獣人♀、16歳。装備は『魔導投石器スリング』、ミスリル製『紅炎の両手剣ロングソード』、革鎧と『エルフのマント』、ルークとお揃いの銀の腕輪。魔力覚醒の兆しがある


・ロドルフ:狼獣人♂、18歳。装備は『雷光の戦斧ハルバード』、プレートアーマー(ヘルメットと胸当て)。ルピーネの幼なじみ


・アルヴィン:エルフ♂、68歳。元Aランク(資格復活済)、装備は連射式クロスボウと『白銀の竜笛』。各種魔法・魔術に精通するが、方向音痴。通り名は『疾風のアルヴィン』


・ルーク:リントヴルムの子竜。性別不明。ルピーネの従魔(登録は変種の翼竜)、装備は銀の首輪。雷魔法を使い、『幸運の竜』として有名になる


・当面の目標:竜を探すため、帝都から一ヶ月かかる北の山林地帯を目指して旅に出ること

帝都冒険者ギルドの掲示板前は、以前にも増して冒険者たちの熱気に包まれていた。Fランク時代には目もくれなかったベテラン冒険者たちが、ルピーネとロドルフの姿を見かけるたびに「よう、『白銀の疾風』の!」と声をかけてくる。Cランクに昇級してからの二週間は、まさに激動の日々だった。


「『期待の星』ってわけね。正直、疲れるわ」 ルピーネは、ギルドの喧騒を避けるように、掲示板の隅で腕を組みながら呟いた。Fランクの頃はほとんど誰も声をかけてこなかったのが、今では「あの狼娘だ」と好奇の目に晒され、常に誰かしらが話しかけてくる。ルピーネにとって、それは賞賛の形をとった、重圧でもあった。


一方、ロドルフは、いつものようにどこ吹く風といった様子で、張り出されたクエストを眺めている。 「俺はあんまり変わらねえな。むしろ、割のいい依頼が受けられるようになって嬉しいぜ。北へ行くための路銀、早く貯めねえと」 その言葉に、ルピーネの瞳が僅かに揺れた。バレンティンが教えてくれた、北の山林への旅――それは、ルークの母竜の記憶を辿って、彼の仲間の竜を探すための、唯一の手がかり。そして、今の彼らには「まだ遠すぎる目的地」だった。


パーティー『白銀の疾風』は、C級二人だけで受けるならCランクの依頼、アルヴィンも一緒であればBランクの依頼が受けられるようになった。最近では、アルヴィンが工房に入り浸って色々なものを創っているので、二人だけで受ける依頼が七割ぐらいになってきていた。


Cランク以上の依頼は、Dランク以下とは比べ物にならないほど難易度が跳ね上がる。単独では危険な中級魔物の討伐や、地図にも載らない辺境への物資輸送、遺跡の探索……。しかし、それだけに報酬も破格だった。 「このオークの群れの討伐、二人でやれば三日かしら」 「こっちの壊れた古代の魔道装置の回収も、腕試しには良さそうだ」 二人は、もはや新人という役割から完全に脱却し、経験豊富なベテラン冒険者さながらに淡々と依頼を選んで、着実にこなしていった。


その傍ら、アルヴィンは、来たるべき北の旅への備えに余念がない。 「タイミング的に僕は同行できるかわからないけど、君たちだけで準備するのじゃ心許ないからね」 と言って、一事が万事と厳しい指導が入る。 「北の地域は冬が厳しいから、丈夫な防寒具が必須だよ。それから、雪の中を進むためのアイゼン付きのブーツと、荷物を運ぶための大容量の収納袋もね」 彼の言葉は、全て具体的で、そして妥協がなかった。「それに、野営道具も最新のものにしないと。前に使ってた安物のテントじゃ、氷点下の夜は凍え死ぬよ。保存食も、栄養価が高くて日持ちするものをたくさん用意しないとね」


工房で過ごす時間の間を縫って、収納袋の容量拡大の魔法付与をしてくれたり、防寒着やテントへの温熱効果の付与をしたりしてくれている。鍛錬と実戦、そして来るべき過酷な旅への準備に追われて、日々は目まぐるしく過ぎていく。


共に依頼を受けて冒険を重ねる中で、ルピーネとロドルフは言葉は多くなくとも、互いに背中を預け、確実に絆を深めていく。二人の間には、村の仲の良い幼馴染としてのかつての繋がりとはまた違う、新たな信頼関係が芽生えつつあった。


「なあ、ルピーネ。ちょっといいか?」 「何よ、ロドルフ」 そんなある日、ギルドの掲示板の依頼票から、二人の新たな試練が始まった。

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