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閑話(看板娘たち):不機嫌親父の心配

彼らが拠点にしている宿屋『夜空の十字亭』には、ヴァネッサとハンナという、元気が取り柄の十代の姉妹がいた。


「ねえねえルピーネ! 今日もアルヴィン様とお出かけ? あの人、信じられないくらいお肌がツヤツヤなんだけど、何食べてるの?」 「ロドルフ様も、あのぶっきらぼうな感じがたまんないわよねぇ。昨日の晩、階段ですれ違った時、耳がピクッてしたの。あれ、照れてたのかしら!」


朝の食堂で、年頃の娘二人に挟まれ、ルピーネは質問攻めに遭っていた。 故郷の村では、同年代の女子とこれほど気安く喋る機会は少なかった。物怖じせず距離を詰めてくる姉妹に、ルピーネは戸惑いつつも、どこか新鮮な楽しさを感じている。


「アルヴィンの肌……? 普通のパンとかシチューを食べてると思うけど。というか、あの人はエルフだから、元々ああいう造りなのよ」 「造りって! 贅沢すぎるわ。ねえ、ルピーネだってすごい美人なんだから、もっと磨をかければ、あの二人のどっちかを落とせるんじゃないの?」 「……落とす?」 ルピーネは首を傾げた。


「いや、でも私、そんなに綺麗じゃないわよ。アルヴィンにそう言われたこともあるけど、どう見たって、私よりアルヴィンの方が美人じゃない」 「「…………む、確かに」」 姉妹の声が揃った。あの万物を超越したエルフの美貌を引き合いに出されると、ぐうの音も出ない。


「おい、お前ら! さっさと皿を洗わんか! 若いイケメンが泊まってるからって、朝から浮き足立ちやがって」 カウンターの奥から、宿の主人の野太い声が飛んできた。娘たちの父親であるテオドールは、最近、客層が「目の毒」な美形揃いであることに、父親としての危機感を募らせている。


「ご主人、おはよう。今日もいいパンの匂いだね」 そこへ、噂の主であるアルヴィンが、寝癖一つない完璧な姿で二階から降りてきた。 「……はあ。あんたらみたいな『男前』の若いモンがうろついていると、うちの娘たちの婚期が遅れそうで困るな」


アルヴィンは不思議そうに瞬きをした。 「僕、こう見えて68歳なんですけど」 「…………な、なんだと!?」 主人の動きがピタリと止まる。


「俺より年上じゃねえか! 余計にタチが悪い! 娘たちどころか、俺の嫁さんにも近づいてくれるなよ!」 「言われなくても近づかないよ……。はい、今月の宿代。三人分まとめて払っておくね」


そんなやり取りを横目に、ルピーネはマントの中でモゾモゾと動くルークの頭を撫でた。 「きゅいきゅい!」 「そうね、ルーク。今日も平和ね」


「……きゃあ! ロドルフ様! 今、わざと尻尾を振ったわね! 私たちを誘惑してるでしょ!」 「……振ってない。埃を払っただけだ、触るな」 背後では、起きてきたばかりのロドルフが早速ヴァネッサに捕まっていた。


帝都での生活は、魔物との戦いと同じくらい、あるいはそれ以上に、ルピーネにとって興味深く、そして騒がしいものになりつつあった。

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